▼次の時代の「当たり前」を作る
「地方創生」が叫ばれて久しい昨今、全国各地で様々な取り組みが行われ、地域の存続を賭けた事業が展開されています。株式会社FoundingBaseは「住民総出のまちづくり」こそ、地域の未来を創る一手だと信じ、2012年から全国各地で事業作りに取り組んできました。今年で事業開始から6年目を迎える島根県津和野町においては、外部人材が高校に籍を置き「受験一辺倒」ではない公教育のあり方作りに取り組むと同時に、公営の塾を核として地域と学校教育機関との連携を図り、廃校寸前だった高校を改革し生徒数が155名から207名までV字回復させることができました。産業の分野では、地域で脈々と継がれてきた地場の産業に従事する人たちが誇りを持って仕事に取り組める環境を作ろうと、猟師の所得向上と農家の獣害被害軽減を両睨みにしたイノシシ肉の卸売事業の立ち上げたり、農家の方々と目線を同じにして東京のバイヤーと協働しながら稼げる農業の仕組みを作る流通の事業を立ち上げてきました。他にも、右肩下がりになっている旅館経営のあり方を変える空室を利用した高校生向けの下宿事業、地元出身の思想家を取り上げた学会の開催、町の農作物を使った移動販売屋台の立ち上げなど、地域資源を活用した起業家が生まれ始め、小さく積み重ねてきた活動が少しずつ具体的な変化を起こしています。
教育、観光、農業、交通インフラ、防災、林業、エネルギー政策。多面的に構成されている”まち”と真正面から向き合い、事業ドメインを限定することなく、あらゆる分野の課題を解決しようと現場で事業を立ち上げているFoundingBaseが目指すものは、一時的な成果や、一過性の取り組みではありません。
「地方創生」という言葉で問われていることは、なにか。
それは、次の時代の「当たり前」を作ることだと、私たちは考えています。
つまり、これまで「当たり前」とされていた構造や、仕組み、それらを形作る思想や、価値観、概念そのものから変化させていき、次代の「当たり前」のベースとなる「考え方」をしっかりと根付かせていくこと。その先にこそ、地域の未来の答えがあると考えています。
津和野町における高校魅力化事業を立ち上げた当時、高校の中に教員免許を持たない人間が籍を置き、総合的な学習の時間や、プロジェクトベースドラーニングの枠組みを作ることは「当たり前」ではありませんでした。そこには、「資格を持つ者だけが教育に携わるべきだ」という考え方がありました。
猟師や農家を取り巻く産業構造の中にも多くの「できない理由」「やらない理由」がありました。そうしたものを一つ一つ丁寧に紐解いて、乗り越えてきた結果、そうした産業に従事する方々の想いが報われる仕組みを作っています。
観光で成り立たせてきた旅館を教育的な側面で付加価値をつけることも、町内のあらゆるところで出店する屋台を作ることも、それまでの考え方で言えばありえないことでした。
私たちが地域で立ち上げる事業は、単に短期的な成果や、一時的な売り上げを目指して立ち上げるのではありません。一つ一つの小さな事業を作る過程を通じて、ともに作り上げる町の人たちと私たちの中に「欲しい未来があるなら自分たちでつくる」「これまでの当たり前にとらわれれるのではなく次の時代の当たり前をいまここからつくる」そういった、価値観、思想、思考のあり方を根付かせ、自分たちで自分たちらしい”まち”を手作りしていくという文化を醸成していくことを目的としています。
「地方創生」のその先を。
私たちが目指すのは、単に「地方創生」という言葉で表現されるものではなく、その先。
当事者性を強く持った自律した住民によって手作りされていくまちのあり方です。