前任者の退職後、運用が回らなくなったのは引継ぎが原因でしょうか。
前任者が退職した後、
「引継ぎが十分ではなかった。」
「あの人が辞めて後任の人が使えない。」
そんな言葉を耳にすることがあります。
業務が止まる。
問い合わせが増える。
後任者が困っている。
その結果、
「引継ぎ不足だった。」
という結論になってしまうことも少なくありません。
しかし私は、本当に原因は引継ぎだけなのだろうか、と考えることがあります。
引継ぎは、ちゃんと行われていた
実際には、
業務マニュアルを作成した。
年間スケジュールをまとめた。
取引先一覧を整理した。
ログイン情報を引き継いだ。
後任者へ説明する時間も確保した。
そこまで対応して退職・異動するケースも少なくありません。
それでも、
「運用が回りません。」
という声が上がることがあります。
もし引継ぎそのものが終わっているのであれば、問題は別のところにあるのではないでしょうか。
引継ぎが不足しているケースもあります
もちろん、
引継ぎ資料が十分に作られていなかった。
説明する時間が取れなかった。
口頭だけで終わってしまった。
こうしたケースでは、前任者側に改善できる点があることもあります。
引継ぎは、会社へ知識を残す大切な仕事です。
だからこそ、前任者にも一定の責任があります。
後任者にも、成長する時間が必要です
一方で、
どれだけ丁寧なマニュアルがあっても、
一日で前任者と同じレベルになることはできません。
業務を経験しながら覚えることもあります。
判断基準は実践の中で身につくこともあります。
つまり、
後任者の力量だけを責めることもできません。
それでも運用が回らないなら
前任者は引継ぎをした。
後任者も努力している。
それでも現場が回らない。
もしそうであれば、
見るべきなのは、
引継ぎではなく、その後の運用です。
引継ぎと運用は別です
私は、
引継ぎと運用は別のものだと考えています。
引継ぎは、
仕事を渡すこと。
運用は、
仕事を続けること。
引継ぎは数日から数週間で終わります。
しかし運用は、その後何年も続いていきます。
つまり、
引継ぎが終わった瞬間から、本当の運用が始まるのです。
運用が回らない原因は、引継ぎではないこともあります
例えば、
後任者が決まっていなかった。
管理者がフォローできていなかった。
判断基準が整理されていなかった。
相談窓口が決まっていなかった。
マニュアルを見る運用が定着していなかった。
前任者へ聞くことが当たり前になっていた。
こうした状態では、
どれだけ丁寧に引継ぎをしても、現場は混乱してしまいます。
問題は、
引継ぎ資料の量ではありません。
引継ぎ後の運用が設計されていないことです。
前任者が支え続ける仕組みは長く続きません
以前の記事でも書きましたが、
退職や異動をした前任者は、新しい仕事があります。
会社のカードやログイン情報、管理者権限も返却・移管し、会社のデータも個人端末から削除することが基本です。
それにもかかわらず、
「前任者へ聞けば分かる。」
という運用が残っていると、
前任者はいつまでも以前の仕事から離れることができません。
さらに、
前任者へ確認した内容が会社の正式な運用として扱われてしまえば、認識の違いや情報管理のリスクにもつながります。
前任者の善意で成り立つ運用は、仕組みとは言えません。
引継ぎ後に必要なのは、管理者の役割です
引継ぎが終わった後、
現場を支えるのは管理者です。
後任者が困っていないか。
マニュアルは更新されているか。
判断基準に迷いはないか。
相談窓口は機能しているか。
運用ルールは現場に合っているか。
こうした確認を行いながら、必要に応じて改善していく。
ここまでが管理者の役割です。
引継ぎは前任者の仕事。
運用は現場と管理者の仕事。
私は、その役割を分けて考えることが大切だと思っています。
運用は、育てるものです
会社は変わります。
人も変わります。
業務も変わります。
だから、一度作ったマニュアルやルールだけでは、いつか現場とのズレが生まれます。
運用とは、
完成させるものではなく、
育て続けるものです。
後任者が気付いたことを反映する。
管理者が改善する。
現場に合わせて更新する。
その積み重ねによって、組織は少しずつ強くなっていきます。
私が構造を見る理由
私は、引継ぎを軽く考えたいわけではありません。
むしろ、とても重要な仕事だと思っています。
だからこそ、
引継ぎが終わった後まで見ています。
運用が回らなくなった原因を、
前任者の引継ぎ不足だけで終わらせてしまうと、本当の課題は見えてきません。
必要なのは、
引継ぎ資料だけではなく、
引継ぎ後に誰が運用を支え、どう改善していくのかという設計です。
引継ぎは、一日で終わります。
しかし、本当の仕事は、その日から始まります。
運用とは、引き継いだ仕事を続け、改善し、育てていくことです。
私は、人ではなく構造を見ること。
そして、担当者が変わっても仕事が止まらない運用を設計すること。
それが、長く続く組織づくりにつながると考えています。