前回、「AIを導入しても、社長の手が空かない理由」という記事を書きました。
AIを使って文章を作る。
資料を作る。
システムを作る。
作業そのものは、以前よりずっと早くなりました。
それなのに、なぜか社長は忙しいまま。
その理由の一つとして、私は「判断」が社長に残っているからだと考えています。
AIに作業を任せるだけでは、社長の仕事はそれほど減りません。
本当に社長の時間を増やしたいのであれば、
AIに作業だけではなく、判断基準まで渡す。
ここまで考える必要があります。
「AIに聞く→社長が判断する」では仕事は減らない
例えば、お客様からこんな問い合わせが来たとします。
「キャンセルしたいのですが、返金してもらえますか?」
AIに返信文を作ってもらうことはできます。
しかし、
返金していいのか。
キャンセル料はいくらなのか。
いつまでなら返金できるのか。
特別対応を認めるのはどんな場合なのか。
この基準が決まっていなければ、結局、
「社長、これは返金して大丈夫ですか?」
という確認が必要になります。
文章を作る時間は短くなりました。
でも、判断する人は変わっていません。
これでは、社長の仕事はなくなりません。
AIに必要なのは、会社の判断基準です
例えば会社として、
「利用日の7日前までなら全額返金」
「3日前までなら50%返金」
「それ以降は原則返金不可」
「ただし災害などの事情は責任者へ確認」
と決めていたらどうでしょうか。
AIはその基準をもとに、問い合わせ内容を整理できます。
通常のケースであれば、そのルールに沿った返信案を作る。
例外だけ担当者や社長へ確認する。
こうすれば、社長がすべての問い合わせを見る必要はなくなります。
つまりAIに渡すべきなのは、
「問い合わせに返信して」
という指示だけではありません。
「私たちの会社は、こういう時にこう判断します」
という基準なのです。
これは、人に仕事を任せるときも同じです
実は、この考え方はAIだけの話ではありません。
新しい担当者へ仕事を任せるときも同じです。
「問い合わせ対応をお願いします。」
だけでは、担当者は迷います。
これは自分で答えていいのか。
社長へ確認した方がいいのか。
どこまで自分で判断していいのか。
分からないから、その都度確認します。
そして社長は、
「また聞かれた。」
「いつになったら自分で判断してくれるんだろう。」
と思うようになります。
でも、それは担当者の能力だけが原因とは限りません。
判断基準を渡していないから、判断できないだけかもしれません。
判断基準を言語化すると、社長の頭の中が会社の資産になる
ひとり社長や小さな会社では、判断基準が社長の頭の中だけにあることが少なくありません。
「このお客様ならこうする。」
「この金額なら自分で決めていい。」
「これは急ぎだから先に対応する。」
社長にとっては当たり前なので、わざわざ言葉にしていません。
しかし、その状態では人にもAIにも任せることができません。
だから私は、
社長が普段どのように判断しているのかを言語化することが、とても大切だと考えています。
金額の基準。
優先順位。
対応範囲。
承認が必要なケース。
例外対応。
こうした判断を一つずつ整理していく。
すると、それまで社長にしかできなかった仕事の一部を、担当者やAIへ渡せるようになります。
すべての判断をAIに任せる必要はありません
もちろん、何でもAIに判断させればいいわけではありません。
経営に関わる重要な判断。
大きなお金が動く判断。
人に関する判断。
イレギュラーなトラブル。
こうしたものは、社長や責任者が判断する必要があります。
大切なのは、
「AIが判断すること」と「人が判断すること」の境界線を決めることです。
通常対応はAIや担当者。
例外は管理者。
経営判断は社長。
このように判断する場所を整理すれば、何でも社長へ確認する必要はなくなります。
AI導入の目的は、AIを使うことではありません
AIを導入すると、
「何をAIにやらせよう。」
と考えがちです。
でも私は、その前に、
「社長は何を手放したいのか。」
を考える方が大切だと思っています。
文章を書く時間を減らしたいのか。
問い合わせ対応を減らしたいのか。
資料作成を任せたいのか。
日々の確認作業を減らしたいのか。
目的が決まったら、その仕事を分解する。
そして、
作業。
判断。
承認。
この三つを分けて考える。
作業だけAIへ渡して、判断と承認がすべて社長に残っていれば、社長はいつまでも忙しいままです。
AI時代だからこそ、構造設計が必要です
私は、AIが社長の代わりになるとは思っていません。
AIが得意な仕事。
担当者に任せられる仕事。
管理者が判断する仕事。
社長にしかできない仕事。
それぞれを整理することで、初めてAIを組織の中で活かせるようになります。
そして、その土台になるのが判断基準です。
AIに仕事を渡す。
人に仕事を渡す。
その前に、
社長の頭の中にある判断基準を、組織へ渡す。
それができれば、AIも人も迷わず動けるようになります。
AIを使って作業時間を短くするだけではなく、
社長が判断しなくていいことを増やしていく。
私は、それこそがAIによって社長の時間を増やす、本当の意味での業務効率化だと考えています。