迷いが晴れる!三つ星アンサーを読み、公務員人生を振り返る
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1. どうしてこの本を手に取ったのか?
「公務員の仕事は使命なのか。11年働いてきた私が退職後、心のどこかで答えを探していた。」
そんなことを考えていた頃、親友でもある著者から「本を出したよ」と連絡をもらい、迷わず購入しました。私は現場から政策寄りの部署(ちょっとだけ)まで経験し、若手が何に悩み、管理職がどう応えるべきかを肌で感じてきました。
最近は古巣であるS市役所でも若手の離職が増えていると耳にし、公務員の「OS」をアップデートするためのヒントを求めて読み始めてみました。
2. 本書の骨格:悩みに寄り添う七つのアンサー
タイトルのとおり、この本は若手公務員のリアルな悩みを起点にしたQ&A形式の実用書です。長浜市・小田原市・うるま市の現役職員3人が著者となり、仕事の「北極星」となる考え方を示しています。
本書で扱う悩みは大きく七つのカテゴリに整理されています
- 仕事術・仕事のコツ:報連相や電話応対、残業できないつらさなど、新人が感じる「作業」の壁。
- 成長・キャリア不安:初めての異動、専門性の獲得、昇任への意欲の低下など「将来への迷い」。
- 人間関係:同期との付き合い方や上司の精神論への戸惑いなど「人との距離感」。
- 自治体職員の仕事:災害時の急な出勤、先進自治体との差、住民から感謝されないことなど「職務の特殊性」。
- 承認欲求・評価:年功序列の昇任機会や専門職なのに事務仕事ばかりという「評価の不満」。
- 制度・組織:改革に消極的な上司や業務量の偏り、育休復帰後の両立難など「仕組みの硬直性」。
- こころとからだの健康:生理休暇の言い出しにくさといった「心身の限界」。
加えて、現役職員による覆面座談会が収録されており、先輩たちも迷いながら進んできたという等身大の言葉が胸に刺さります。
3. 読んでよかったと思ったポイント
「悩み」の言葉で語られている
階層別研修のような理論や制度説明ではなく、若手職員が実際に口にする悩みをそのまま取り上げている点が新鮮でした。「報連相がイマイチわからない」「専門職採用なのに事務仕事ばかり」など、自分の新人時代を思い出させるエピソードが並びます。だからこそ読み手が自分ごととして捉えやすく、「次の行動」に落とし込みやすいのです。
公務員以外にも通じる普遍性
副業や異動など公務員特有の事情に触れつつも、「どんな組織でも起こりうる悩み」にまで射程が伸びています。採用後のキャリア形成や上司との関係、承認欲求との向き合い方など、民間企業の若手にも刺さる内容が多いと感じました。
現場感と具体性
座談会で語られる「先輩のここだけの話」では、災害時の急な出勤や理不尽なクレーム対応など、公務員ならではの現場のリアリティが伝わってきます。単なる綺麗事ではなく、手触りのある話が満載で、「あるある」と頷きながら読みました。
4. もう少し踏み込んでほしかったところ
非公式な力学への言及の不足
本書は公式な制度や業務プロセスに基づいた解決策が中心ですが、実際の自治体では非公式な根回しや人脈が仕事の通りやすさを左右することも少なくありません。誰と先に相談するか、どこで意見をまとめるかといった裏側の力学にもう少し触れてほしかったと感じます。私自身、公務員人生でこうした「OSのアップデート」の重要性を痛感してきました。
生存者バイアス
著者や座談会の参加者は現役職員です。辞めずに残った人たちの視点は貴重ですが、退職を選んだ人の声も少し加われば、より多面的な処方箋になったかもしれません。私が退職した経験からすると、「もう少し頑張れば解決できる」という前提(あくまで私の受け取り方です)には危うさもあります。
5. 管理職・人事・元同僚へおすすめしたい理由
若手向けの本でありながら、実は組織側の鏡にもなる一冊です。例えば、「仕事の仕方を変えない上司への対応」「係長からの指示が得られない」といったテーマは、管理職が自らを振り返るきっかけになります。S市役所でも離職が増えていると聞きますが、若手の悩みを個人の力量不足と片付けず、組織がどう支援できるか考える材料として読みたいです。職場指導員や人事担当者が新人時代の自分を思い出しながら読むと、より実践的な指導に活かせるでしょう。
6. 著者へのエールと公務員への感謝
著者の一人とは6〜7年(記憶があいまいです)の付き合いがありますが、常に新しい道を切り拓き、周りを巻き込みながら行動する姿勢に刺激を受けています。人材育成のノウハウを公にすることは批判も伴います。それでも勇気を持って書き上げたことに敬意を表します。
公務員の仕事は華やかに見えない部分が多く、残業やクレーム対応に追われる日常もあります。しかし、その地道な努力が地域社会を支えていることを忘れてはいけません。もし今、公務員として迷いや疲れを感じている人がいたら、この本を通じて視界が晴れるかもしれません。
私自身もこの本を読みながら、現役時代の葛藤や喜びを思い出しました。公務員という「組織のOS」を見直し、更新し続けることの大切さを再確認しています。公務員を目指す人や現在迷いの中にいる人にはもちろん、若手を支える立場にある人たちにも、ぜひ手に取ってほしいと思っています。