【本田教之】焚き火のゆらぎが教えてくれる組織の設計図
Photo by Luke Porter on Unsplash
キャンプ場で静かに燃える焚き火を眺めているとき、私はふと、これが理想の組織のあり方ではないかと感じることがあります。私は二十年間、精密な機械のように動くシステムを構築してきましたが、実は本当に強いチームや事業というものは、もっと原始的で、予測不可能なゆらぎの中にこそ本質があるのではないかと考えるようになりました。
焚き火を美しく燃やし続けるためには、ただ薪を詰め込めばいいわけではありません。適度な隙間を作り、空気が通る道を用意しなければ、火はすぐに消えてしまいます。これは組織作りにおいても全く同じことが言えます。役割分担をガチガチに固め、一人ひとりの行動を分刻みで管理しようとするのは、薪を隙間なく積み上げて窒息させているようなものです。大切なのは、メンバーが自由に動ける余白、つまり酸素が流れ込むための隙間を設計することなのです。
また、薪の種類によって燃え方が違うのも面白い点です。すぐに火がつく細い枝もあれば、じっくりと熱を持ち続ける太い丸太もあります。プロジェクトにおいても、瞬発力のある若手と、経験に裏打ちされた安定感を持つベテランが混ざり合うことで、火は安定し、長く燃え続けることができます。誰一人として同じ燃え方をする必要はありません。それぞれの特性を理解し、どのタイミングでどの薪を投入するかを見極めるのが、リーダーの役割ではないでしょうか。
さらに、火は常に形を変えます。風が吹けば揺れ、薪が崩れれば火の粉が舞う。この不規則な動きをエラーとして排除するのではなく、その変化に合わせて薪を組み直していく柔軟性こそが、今の時代のビジネスには求められています。完璧なマニュアル通りに動くことよりも、現場で起きている熱量を敏感に感じ取り、その都度ベストな形に自分たちをアップデートしていく。そんな生き物のような強さを持つチームが、結果として最も大きな成果を上げると確信しています。
私が理想とするのは、システムのように正確でありながら、焚き火のように温かく、人々を自然と引き寄せるような場所です。冷たい論理だけで人を動かすのではなく、共有する目的という名の熱源を囲み、全員が自分の色で燃え上がる。そんな組織であれば、どんなに厳しい冬の時代が来ても、決して凍えることはありません。技術はあくまで火を絶やさないための道具であり、一番大切なのは、そこに集う人たちの情熱という名の温度なのです。
今、あなたのチームの火加減はどうですか。詰め込みすぎて息苦しくなっていませんか。あるいは、熱源を忘れて冷え切っていませんか。時々立ち止まって、自分たちの焚き火がどんな音を立てて燃えているか、耳を澄ませてみる時間を持ってほしいと思います。