生成AIを使って絵本を制作しています。挿絵の試作を重ねるなかで、気になることがありました。草や水面が写真のようにぼけたり、画面全体に細かな塗り跡が均一に並んだりすることです。
目指していたのは、鉛筆の線や水彩の筆跡が残る絵でした。ところが、「もっと水彩らしく」と伝えても、細部が増えるばかりで、思うような描き方にならないことがあります。そこで同じ場面を繰り返し生成し、どの指示で何が変わったのかを画像とともに記録しました。
図1 現行原画と試作09。同じ範囲を拡大し、草や水面の描写を比較。
指示を具体的にして、変化を見比べる
まず、「水彩らしさ」と呼んでいたものを、具体的な描き方に分けました。鉛筆の輪郭を残す。ひと筆で塗る面を広げる。紙の白い部分を残す。線の長さや密度に差をつける。一方で、水滴の輝きは維持する。変えたい部分と残したい部分を、それぞれ言葉にしました。
比較したのは、現行原画1点と試作14点の計15点です。各画像について、主な指示と実際に見られた変化を3組ずつ、計45項目にまとめました。
鉛筆の線は増えたものの、色を塗った部分には細かな跡が残る。背景はすっきりしたものの、小道具のひものつながり方が変わる。狙いどおりに変わった箇所だけでなく、変わらなかった箇所や、意図せず変わった箇所も並べて見返しています。
図2 代表的な4試作。指示の要約と出力で観察した変化・残った課題。
挿絵から、物語と表紙にも目を向ける
挿絵の描き方を試す一方で、絵本全体の見直しも進めました。その判断材料として参照したのが、内容と表紙についての二種類の500冊調査です。
内容の調査では、紹介文をもとに主なテーマを整理しました。「感覚・色・形」は42冊、「友情・助け合い」は36冊。表紙の調査では、題字を見た目の特徴で分類し、丸みのあるゴシック様の題字が217冊、太めの題字が298冊ありました。図3に、それぞれの分布を示しています。
これらの資料と自作を照らし合わせながら、反復や助け合いを結末でどう生かすか、表紙の題名をどうまとめるかを見直しました。
二つの調査で重複するISBNは286冊あり、1,000冊の異なる作品を調べたわけではありません。また、公開ランキングを入口に選んだ本の調査で、全国の売上上位を網羅したものではありません。題字も見た目による分類であり、正式なフォント名や売れ行きとの関係を示すものではありません。
図3 各500冊の保存データを再集計。上位8分類、文字の外観は全6分類を掲載。
線を重ねるところ、描き残すところ
試作を見比べるうちに、細かな筆跡を増やすだけでは、求めていた絵に近づかないと考えるようになりました。気になる場所には何度も線を重ね、別の場所は大きな色の面のまま残す。輪郭が少しずれたり、色がはみ出したりする。そうした、描く人によって生まれる違いを残したいと思いました。
画面全体を均等に描き込むのでも、どこにでも同じような揺らぎを加えるのでもなく、どこを描き、どこを描き残すかを考える。その視点から、現行版の色の深さと、試作で見られた線や形の揺らぎを組み合わせたのが試作12Bです。
図4 現行版の色の深さと試作の揺らぎを組み合わせた [試作12B]
試作12Bにも、細かな塗り跡は残っています。採用を決めた完成形ではありませんが、残したいところと、次に直したいところを見比べられる一枚になりました。
まとめ
絵本は現在、制作・出版準備の段階です。今回まとめたのは、指示を変えながら画像を比較した制作の記録です。特定の指示の効果だけを切り分けた実験ではなく、読者の反応や販売効果も、これから確かめる課題として残っています。
AIの活用について他の記事でも共有していきます。