私が見つけられるのは、私が引っかかるからだった
私は、やることが多くて動けなくなる人のためのアプリを作っています。
先月の記事で、私は「AIに任せたのに、見つけたのは私だった」と書きました。開発の多くをAIに任せられるようになったのに、最後に問題を見つけたのは私だった、という話です。
書いたあとで、自分に問いが残りました。では、私は何を見ているのでしょうか。
8月のあいだに、その答えらしきものが2回 出ました。どちらも、自分で作ったアプリに自分がつまずいた話です。
1つ目。エラーの赤に、自分がびくっとしました
通信が一瞬 切れたときに出る画面を、自分で開いたときのことです。
赤い文字が出ていました。使う人は何も間違えていません。電波が途切れただけです。それなのに、画面はいちばん強い色で知らせていました。
私はそのアプリを「責めない道具にする」と決めて作っていました。文章はそのとおりに書いてありました。色のほうが、責めていました。
2つ目。案内を増やしたら、自分が割り込む側にいました
初めて使う人に教えておきたいことを数えたら、6つありました。
順に画面を切り替えて案内していく形を作りかけて、手が止まりました。書きかけのものが画面にあるときに、アプリが勝手に画面を移したら、それは消えます。
私はずっと「割り込まれると戻れない」と書いてきました。その私が、割り込む側に回っていました。
2つに共通していたこと
どちらも、仕様書には違反していません。 テストも通ります。書かれたとおりに動いていて、レビューでも指摘されません。
AIには引っかからないのに、私には引っかかりました。
理由ははっきりしています。私が、そこで実際に困る人だからです。
赤いエラー文は、一見よさそうに見えます。目立ちますし、見落としません。けれど実際に出されると、自分が悪いことをしたように感じます。
順に画面を切り替えていく案内も、親切な形に見えます。けれど書きかけがある人には、それを失う仕掛けになります。
どちらも、使う側に立って初めて出てくることでした。 だから、仕様の中に隠れていても気づけました。
気づいたあとは、作り直しました
2つとも、気づいた週のうちに作り直しています。
赤はやめて、落ち着いた色に変えました。案内は、画面を動かす形をやめて、その場に出せるぶんだけ出すようにしました。そして全部の案内に「やめる」を置きました。やめても何も失われないと分かっていれば、人は入っていけます。私の場合は、やめられないものには最初から入っていけません。
直すこと自体は難しくありませんでした。難しいのは、気づくことのほうでした。
なぜ、掲げたことと作ったものがズレるのか
2回とも同じ形でした。掲げていることと、作っているものが食い違っていた。
しばらく考えて、こう思いました。掲げるのは言葉で、作るのは形だからです。
「責めない」は言葉です。自分で書けます。書いた瞬間に、そのとおりにしたつもりになれます。 けれど実際に人が受け取るのは、色であり、動きであり、出てくる順番です。言葉と形のあいだには、誰も見ていない隙間があります。
私はその隙間を、自分で使ってみることで見つけていました。読み直しでは見つかりませんでした。読むときの私は、書いたときの私と同じことを考えているからです。
これは「検査の一種」として、仕事の中に置けます
私の開発は、いまも4体の AI との分業で回っています。設計・実装・見た目・検証を分けて任せていて、そこは私より速く、正確です。誤解のないように書いておくと、AI が劣っているという話ではありません。
見ている場所が違うだけです。
AI が見ているのは「仕様どおりか」。私が見ているのは「使ったときに、自分がどう感じるか」。前者は文章で確かめられますが、後者は使ってみないと出てきません。
だから私は、自分の引っかかりを性能の一部として数えることにしました。気合いでも、根性でもありません。測れないものを拾う工程として、開発の中に置いてあります。
とはいえ、万能ではありません
この検査には、はっきりした限界があります。私が引っかからないところは、私にも見えません。
私が困らない困りごとは、私を素通りします。色の見分けにくさは、私には出てきませんでした。だから、そこは機械で測っています。文字と背景の明るさの差を数値で出す道具を作って、目で決めないようにしました。
自分が検査になるということは、自分の外側が丸ごと死角になるということでもあります。 そこは、道具と、人に聞くことで埋めるしかありません。
働き方の話として
当事者を「配慮される側」に置く考え方は、よく見かけます。私はそれを、少し窮屈に感じてきました。
配慮される側ではなく、検査の役として置く。 そういう置き方もあるのだと、この2か月で分かりました。少なくとも私の場合は、それがいちばん役に立っています。
エラーの色は、すでに配信されています。案内のほうは、次の更新から入ります。
つぎいちは、App Store で配信しています。 https://apps.apple.com/jp/app/id6788242620