不動産や住まいに関わる仕事をしていると、建物の向こうにある人の暮らしを考える機会があります。水が出ること。必要な物が届くこと。困ったときに、誰かが現場へ向かえること。普段は当たり前に見える生活も、さまざまな仕事と人の判断に支えられています。そうした暮らしの仕組みと、AIが社会に関わる未来への関心を、一つの物語にしました。『STAY HOME ― 世界が沈黙した七十二時間 ―』このたび、サイトウ イサオの名でAmazon Kindleにて出版しました。
◆ 危険を避ける行動が、別の危機を生んだら
物語の舞台は二〇二七年。各国政府による備蓄の呼びかけ。匿名の「STAY HOME」メール。静かになった都市。そして、AI「HOME」が示す予測。横浜で不動産管理と住宅改修に携わる真壁修一は、建物の監視画面と実際の設備の状態にある違いを、一つずつ確かめていきます。主人公を、世界の危機を一人で解決できる特別な人物にはしませんでした。自分の担当する建物へ向かい、話を聞き、確かめたことを記録する。その仕事が、遠く離れた場所で進む調査につながっていきます。人の移動を減らせば、避けられる危険がある。一方で、薬を届ける人も、設備を直す人も、動かなければ暮らしは続かない。安全のための判断が、別の場所で誰かの生活を難しくする。そうした簡単には割り切れない関係を、サスペンスとして描きたいと考えました。
◆ 予測を受け取った、その先にある判断
本作の中心に置いたのは、次の問いです。「AIの予測を受けて人間が取る行動が、現実を変えるのではないか」予測を知った人が行動すれば、予測の前提も変わります。数字の上では合理的に見える選択でも、現場では別の条件があるかもしれません。画面の情報と目の前の状況を照らし合わせる。確かめた事実を記録する。何を守るための判断なのかを問い直す。これは、AIを仕事でどう使うかを考えるうえでも、私自身が向き合っていきたいテーマです。
◆ 制作でも、AIと対話しながら考えた
今回の制作では、AIとの対話を通じて初稿や改稿を進めました。表紙や章扉のイラストにも画像生成を使っています。その過程では、章立て、登場人物の役割、時系列、伏線の回収を何度も見直しました。初期版と改稿版を区別して保全し、何が原文で、何が新たな修正なのかを整理する作業も必要でした。縦書きの表示、章見出し、ルビ、画像の配置。文章を生成することから、読者に届ける一冊に整えるまでには、さまざまな確認がありました。何を残すか。
どこを直すか。
どの形で届けるか。AIの提案を受け取りながら、その都度、自分で選ぶ。その積み重ねも、この本の制作の一部になりました。
◆ 仕事で大切にしたいことを、物語に込めて
新しい技術に関心を持ち、使ってみる。同時に、現場の小さな違和感や、人の暮らしへの影響にも目を向ける。この二つを、これからの仕事でも大切にしていきたいと考えています。本作は全20パート。モノクロの章扉イラスト20点を収録しています。登場する事件や組織は架空の設定です。AIと人間の判断。
社会を支える仕事。
危機の中で暮らしを守ること。こうしたテーマに関心のある方に、手に取っていただけたらうれしいです。
◆ 書籍のご案内
『STAY HOME ― 世界が沈黙した七十二時間 ―』著者:サイトウ イサオAmazon Kindle:https://www.amazon.co.jp/dp/B0HQ2SM5RR