転職活動で「高還元SES」を調べたことのある方なら、気づいたことがあるかもしれません。単価連動、案件選択制、還元率○%——どの会社のサイトを開いても、ほとんど同じ言葉が並んでいます。
これは偶然ではありません。今回は、その理由と、似ている会社の中から自分に合う一社を見分ける方法を、SES企業を経営する私個人の視点で率直に書きます。
「同じ設計図」から生まれた会社たち
数年前、SES業界のある企業が、自社の事業スキーム——単価と給与を連動させる制度の設計、案件をエンジニアが選べる仕組み、そして採用や経営の手法——を、無料のセミナーや記事で広く公開しました。
内容は具体的で、再現性の高いものでした。その結果、同じ設計を取り入れた会社が短期間に数多く生まれ、「高還元SES」というカテゴリーが一気に広がりました。
誤解のないように書くと、この公開自体は業界にとって良いことだったと私は考えています。単価を隠して低い給与を払う旧来のSESに比べれば、単価と給与の関係を開示する会社が増えたことは、エンジニアにとって明確な前進です。私自身も、透明性を重視する先行企業から多くを学んで、自社の制度を作りました。
ただ、候補者の立場では一つの問題が生まれました。制度は複製できるので、制度の名前や謳い文句だけでは、もう会社を選べなくなったのです。
見分けるための3つの質問
同じ言葉を掲げる会社の中身を見分けるには、次の3点を確認することをおすすめします。
1. 還元率の「分母と分子」を確認する
同じ「還元率」という言葉でも、計算方法は会社によって全く違います。社会保険料の会社負担分・交通費・各種手当を「還元」に含めて計算する方式の場合、給与として実際に受け取る割合は、表示された率より10ポイント前後小さくなります。
実際、業界で長く給与ベースの還元率公開を続けてきたリツアンSTC社の野中社長も、「80〜90%」を掲げる会社を給与・賞与ベースで計算し直すと概ね65%前後になることが多い、という検証を公開しています。同じ計算を「70%」表示の会社に当てはめれば、給与ベースでは50%台後半という結果になります。
確認すべきは数字の大きさではなく計算式です。「単価×○%=月給」と一行で書けるのか、それとも注釈が何行も付くのか。計算式そのものを公開していない会社には、面談で質問してみてください。答え方でその会社の透明性がわかります。
2. 公開の「粒度」を見る
「透明性」を掲げること自体は誰にでもできます。見るべきは粒度です。単価から月給までの計算過程、会社の取り分、案件情報を、入社前のあなたに対してどこまで具体的な数字で見せてくれるか。制度の存在の説明と、数字の開示は別物です。
3. 面談に「誰が」出てくるかを見る
面談の相手が採用専任の担当者なのか、現場を知る現役エンジニアなのかで、得られる情報の質は変わります。そしてもう一つ。良いことしか言わない会社には注意してください。 どんな会社にも、合う人と合わない人がいます。「こういう方には向いていません」を先に言えるかどうかは、その会社が候補者の入社後まで考えているかどうかの、わかりやすいサインです。
最後に、私の会社のこと
私はディリテックという、社員数名の小さなSES会社を経営しています。いまも自分自身がセキュリティエンジニアとして客先常駐を続けている、現役の技術者でもあります。
当社は、単価×70%=月給という計算式(社会保険の会社負担・交通費を含まない、給与ベースの純粋な還元率です)を、創業以来9年間変えずに運用してきました。計算式と給与シミュレーターはサイトで公開しています。面談に出るのは人事ではなく、現役エンジニアの社員と私です。そして面談では、当社に合う方の条件と同じ分量で、合わない方の条件もお伝えしています。
制度の言葉が同じなら、あとは中身を確かめるだけです。この記事で挙げた3つの質問を、私にもどうぞ遠慮なくぶつけてください。