書籍【人生の経営戦略~自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20】読了
人生の最終目的が「幸せになること」であれば、それを達成するために、一体何の要素が必要で、どういう手順で攻略していけばよいのか。
まさに「人生というマラソンを、戦略的に考えて行動する」ということであるが、混沌とした時代だからこそ、必要な考え方だと思う。
しかしながら、本当に自分の人生を、自分自身の手でコントロールできるものなのか?
人生とはハプニングの連続で、思い通りに行かないことはよく理解している。
一方で、自分の人生が理想通りに行くことも、心の奥底で強く願っている。
もし自分の人生が思い通りになって、幸せな生活を送れるならば、何て素敵なことだろう。
果たして、そんなことが実現可能なのか?
我々は、「幸せの総量」とは決まっているもので、それはトレードオフの関係だと思い込んでしまっているのではないか。
要は大きな犠牲を払わないと、幸せは手に入らないものと思っている。
もしくは他人の持っている物を収奪しないと、自分の人生は豊かにならないと思い込んでいる。
ある面ではそういうこともあるかもしれないが、本質的に「犠牲や収奪」と「幸福」に因果関係はないはずだ。
我々はやはり「人生」という攻略すべき課題に対して、理解度と解像度が低すぎる、ということではないだろうか。
人生という名のマラソンで勝利するための「本質」が見えていないということだ。
どうすれば我々は「幸福」という名のゴールテープを切ることができるのか。
非常に興味深い問いを考えるきっかけとなったが、裏側の本音としては「もっと早く知っておけばよかった」ということを感じてしまった。
私はすでに50代後半で、本書によれば人生の「秋」である。
春を生きる若者たちは、早めにこの「人生の経営戦略」を理解した方がいい。
それだけこの方法は、汎用性が高くて、実践的だ。
幸福とは、決してトレードオフの関係ではない。
参加者全員が、参加者なりの幸福を手に入れる方法があるはずなのだ。
本書では、経営学の代表的なコンセプトが20個紹介されている。
「ポジショニング」「ブルー・オーシャン戦略」「オプション・バリュー」など、ビジネスパーソンなら一度は耳にしたことがある言葉ばかりのはずだ。
これらを、個々の人生を豊かにするための「思考の武器」として活用せよという話だ。
その中でも核心として、人生を幸福にするための「構成する3要素」を定義したことが、本当に素晴らしい。
この理論は非常に説得力がある。
今からでは遅いかもしれないが、この3要素をどうやって高めていくかを考えることは、今後の私自身の人生でも重要な気がした。
3要素とは以下のことだという。
①人的資本(自己効力感)自分の能力が誰かの役に立っているという実感
②社会資本(社会的繋がり)家族、友人、地域、あるいは教え子のネットワークなど、良好な人間関係
③金融資本(経済的安定性)将来への不安がなく、生活を維持できる基盤としての金融資産
確かにこれら3点が揃っていれば、幸福な人生を送れそうだ。
問題は「どうやってこれら3点を揃えのるか」ということだ。
ここでも著者は、非常に面白い視点を与えてくれる。
3点とも「資本」という言葉を使用しているが、この「資本」という考え方そのものが重要なのだという。
資本とは、投下して増やすことに意味がある。
人的資本を使って、社会資本を増やし、さらに金融資本を増やすのだという。
確かにこの3点は連動していて、順番も①→②→③と決まっている。
③を最初から持っていても、①②を後から取得することは、実は難しい。
そして、③を持っているだけでは、今後増えることはなく、むしろ資産は減る一方となってしまう。
③を増やしていくためにも、①②の要素は必要不可欠となる。
こう考えると、最初の資本である①人的資本を、どうやって得るかが非常に重要になってくる。
それも若いうちに。
人生の春と言われる30歳までの時期に、①人的資本を得られるかどうかが、運命の分かれ道と言っても過言ではない。
ここで著者は非常に重要な指摘をする。
20代の時期は①②③のどれも持っていないないとしても、「ほぼ全員が共通して持っている、唯一の基本的な資本がある」という。
それが「時間」なのだという。
うーん、深い!!
そして正しい。
私自身が50代後半だからこそ、この正しさが身に沁みて理解できる。
20代の頃、スキルも人脈も金も持ってなかったが、時間だけは確かにあった。
その時間をどうやって使うかで、その後の人生が大きく変わってしまう。
これほど恐ろしい話はない。
本当に「もっと早く知っておけば」と思ってしまう。
人生において、誰でも持っている唯一の元手は「時間資本」だったのだ。
我々は毎日平等に配分される24時間という資本を元にして、それを他の資本へと変換していくゲームの中にいる。
まずはこのゲームの変換ルールを、戦略的に理解しなければ、話にならない。
20代でやるべきことは、それこそ本当に単純だ。
圧倒的に持っている「時間」という資本を使って、次の資本である「人的資本」を得るための「スキル、知識、仕事経験」を高めることだ。
そうすれば、自身の市場価値は上がっていき、人的資本が成長していく。
20代の内にガムシャラに働き、一人前に仕事ができるようになるのは、実は人生の成功のためには理に適っているということなのだ。
若い人でも勘違いして、人的資本(実力)を磨かないまま、社会資本(人脈)を求めて異業種交流会などに通うことがあるが、これは無意味だと著者はバッサリと切り捨てている。
社会資本とは「あいつに任せれば大丈夫だ」という人的資本の裏打ちがあって、初めて成立するもの。
実力もないのに人脈を広げようとする行為は、投資効率が著しく低い「死に金ならぬ死に時間」となるという。
非常に恐ろしい指摘である。
時間だけは、後からでは絶対に手に入れることができない。
ゲーテの「ファウスト」や、エンデの「モモ」でも語られているが、我々は時間ほど大事なものはないと、もっと自覚すべきだ。
人生の限られた時間の中で、どうやって幸福を手に入れるのか。
特に私自身、会社員としてはまさに終わりに差し掛かっている訳で、これからの会社での時間をどう過ごすかの選択も、非常に重要になってくる。
本書では、50代は「秋」に該当し、そのキーワードは「広げる」だそうだ。
これまでに培った能力や人脈を自分一人のために使うのではなく、新しいプロジェクトの立ち上げや、後輩の育成を通じて社会に還元していく時期。
状況(コンテキスト)に合わせ、仕事のギアを変える「コンテキスト・リーダーシップ」こそが、50代で学ぶべき姿勢と説く。
今の居心地の良い場所に安住せずに、広げる方向へ、あえて場所を変えて勝負する勇気が必要なのだという。
耳の痛い話であるが、停滞して勝負を避けるよりは、人生を懸けてできる仕事に挑戦することは、なんだか面白そうだ。
そういうマインドセットを持つことも、重要なのだろうと思っている。
言われたことだけをやる道具的な生き方はつまらない。
目先のお金を得るためだけに、嫌々働くのも、本当にもったいない。
仕事を活き活きと楽しんで働けることが一番である。
フロー状態(没入)にあるときは、人は最も幸福を感じるそうだ。
自分の人生を、経営戦略的に考えてみる。
「あなたの人生の勝利条件は何か?」
この問いに対する自分なりの解を持つこと。
自分の人生を他人に委ねるよりも、自分自身で主体的に人生を謳歌したいものである。
(2025/11/6木)