●マーケティングでは、顧客に合わせて「商品」を変える
マーケティングでは、顧客理解をもとに広告や営業方法を考えます。しかし変えるのは「伝え方」だけではありません。
顧客が求めていなければ、商品の機能を変える。価格を変える。提供方法を変える。場合によっては商品そのものをつくり直す。
顧客を理解する→顧客に提供する価値を考える→商品・サービスを変える。これがマーケティングでは当たり前に行われています。
では、採用ではどうでしょうか。
前回の記事「採用に『顧客理解』が必要なのはなぜか」では、求職者をなぜ仕事を探しているのか・何と比較しているのか・何を失いたくないのかまで理解する必要があると書きました。
参考:https://www.katawara.co.jp/blog/message0052
では、求職者を理解した、その次に何をするのか。今回はそこからもう一歩進めて考えてみたいと思います。
●求職者を理解しても会社は何も変わっていない
「子育て中の人を採用したい」「シニア層にも対象を広げたい」「未経験者も採用したい」といった採用ターゲットを設定し、求人原稿を変える。「子育てと両立できます」「シニア活躍中」「未経験歓迎」。一見すると求職者目線の採用に見えます。
しかしもう一段踏み込んで見てみると、違和感を感じることがあります。
子育て中の人を採りたい。でも勤務時間は9時から18時まで固定。シニアを採りたい。でも仕事内容や身体的負担は若手と同じ。未経験者を採りたい。でも教育する人も仕組みもない。求人の言葉はターゲットに合わせて変わった。でも、会社や仕事の側は何も変わっていない。
これでは、本当に求職者を理解したことになるのでしょうか。
●「売れない商品」の広告だけを変え続けていないか
ある商品が売れない。顧客に話を聞いてみると「サイズが大きすぎる」「必要な機能がない」という声が出てきた。それでも商品は一切変えず、広告のキャッチコピーだけを変え続ける。そんな時、マーケティングなら「広告ではなく、商品そのものを見直した方がいい」という話になるはずです。
採用でも同じことが起きているのではないでしょうか。
応募が来ない→求人原稿を変える→それでも来ない→媒体を変える→広告費を増やす。もしかすると問題は求人広告ではなく、求職者から見た「商品」である仕事や働き方そのものが、今の採用市場と合わなくなっているのかもしれません。
●「採用できない」は市場からのフィードバックかもしれない
応募が来ないと「人がいない」「地方だから仕方ない」「大手には給与で勝てない」と採用市場側に原因を求めたくなることがあります。もちろん人口減少や賃金上昇、採用競争の激化は現実です。しかし別の見方もできます。
採用できないという結果そのものが、「今の働き方では選ばれにくくなっています」という市場からのフィードバックなのではないか。求職者の価値観が変わった。働き方の選択肢が増えた。競合企業の条件が変わった。それなのに自社だけが10年前と同じ働き方を提供しているのであれば、採用手法を変えるだけでは解決しないことがあります。
●求職者ニーズに合わせることは「条件緩和」とは違う
「求職者に合わせて会社を変える」と言うと、「条件をどんどん緩和するということか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
週5日働ける人が採用できないから「週1日でもOKにしよう」とする。応募者は増えるかもしれませんが、本来必要だった仕事が回らなくなれば採用課題は解決していません。
必要なのは求職者に仕事を無条件に合わせることではなく、会社が必要としている仕事と、求職者が提供できる働き方の接点を再設計することです。
●「8時間働ける人」を探す前に「8時間分の仕事」を疑う
1日8時間の仕事があります。これまでは「この仕事を8時間できる人」を採用していました。しかし、その人が採れなくなった。そこで仕事を分解してみる。午前中に集中する仕事、経験が必要な仕事、誰でもできる仕事、時間をずらしても問題ない仕事。
そうすると「8時間働ける一人」を探さなくても、「午前中に4時間働ける人」と「午後に別の仕事を担う人」で成立する可能性があります。あるいは仕事の一部を自動化したり外部へ出したりすることで、そもそも8時間分の採用が必要なくなるかもしれません。
変えたのは求職者の条件ではありません。会社側の仕事の設計です。「人を仕事に合わせる」だけではなく、「仕事も人に合わせて設計し直す」。採用難が続くこれからの時代には、この発想がますます重要になります。
●採用における「プロダクトアウト」から「マーケットイン」へ
マーケティングには「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という考え方があります。
プロダクトアウトは「自社がつくれるもの・売りたいもの」を起点に考えること。マーケットインは「市場や顧客が求めているもの」を起点に考えることです。
この考え方を採用に当てはめると、従来の採用はかなりプロダクトアウト型でした。
「この仕事があります」「勤務時間はこれです」「この条件で働ける人を募集します」。会社が先に仕事を決め、それに合う人を市場から探す。働き手が多い時代にはそれでも採用できましたが、人が減り働き方の選択肢が増えた現在は、それだけでは採用できない仕事が増えています。
企業が実現したいことと、働く人が実現したいことの重なる部分を探し、仕事そのものを再設計すること。これが採用におけるマーケットインの一つの形だと思っています。
●採用ターゲットを変えるなら受け入れる会社も変える
採用できない時、多くの企業が採用ターゲットを広げます。20代から30代へ、経験者から未経験者へ、フルタイムからパートへ。しかしターゲットだけ変えても、受け入れる会社が変わらなければうまくいきません。
未経験者を採るなら、教えられる仕組みが必要です。シニアを採るなら、身体負荷や勤務時間を見直す必要があるかもしれません。子育て中の人を採るなら、急な休みが発生した時に誰か一人へ負担が集中しない体制が必要です。採用ターゲットを変えることは、求人原稿のターゲット欄を変えることではありません。「その人が活躍できる会社になっているか」まで考える必要があります。
●だから、採用は経営の仕事になる
勤務時間を変える、仕事を分解する、教育体制をつくる、マネジメントを変える。こうしたことは求人広告会社に任せても決められません。採用担当者だけでも決められないことがあります。経営判断が必要です。
以前「なぜ経営者は『採用』だけ外注してしまうのか?」という記事で、採用を外部へ丸投げすることへの違和感を書きました。
参考:https://www.katawara.co.jp/blog/message0015
採用できない原因が仕事・組織・制度・マネジメントにあるのであれば、それを変えられるのは会社自身だからです。だから採用は、求人を出す仕事ではなく経営の仕事になります。
●最後に
「人が採れない」と聞くと、どの求人媒体を使うか、どんな求人原稿を書くかを考えます。もちろん、それらも必要ですが、その前に一度問いかけてみてもいいと思います。
「今の会社・今の仕事のままで、本当に採用したい人から選ばれるのだろうか」
もし答えが「難しい」であれば、採用手法だけを変え続けても限界があります。採用したい人を理解し、その人が何を求めているかを知り、自社が提供できる価値との接点を探す。
そして必要なら、仕事や働き方、教育や組織まで変える。マーケティングで顧客に合わせて商品を磨くように、採用でも求職者との接点から会社そのものを磨いていく。
採用したい人に「あなたに来てほしい」と伝えるのであれば、同時に会社側にも問う必要があります。
「その人に来てもらえる会社になるために、私たちは何を変えられるだろうか」
採用をきっかけに、この問いを経営者が持つこと。それこそが、Katawaraが掲げている「採用で、経営を変える」ということなのかもしれません。
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株式会社Katawaraは、「採用で、経営を変える」をテーマに採用支援を行っています。
求人広告や採用媒体を変えるだけではなく、採用ターゲット・求職者ニーズを整理し、その人が活躍できる仕事や働き方になっているかまで考える。「採用できる会社になるために、会社側の何を変えるのか」というところから、経営者の皆さまと一緒に採用戦略を考えることも、私たちの支援の一つです。お気軽にご相談ください。