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日本の飲食企業はなぜ海外を目指すのか?!

日本の飲食企業の海外進出、その「今と昔」

中小・ベンチャー飲食企業でも海外進出ができる時代に

飲食業界においても、10年以上前からアジアを中心に海外進出する企業は多く存在しました。ただ、それは日本国内に何十店舗、何百店舗とある大手チェーン店が、次のマーケットを求めて海外に活路を見出し、さらなる成長、規模拡大を目指して進出するケースがほとんどだったと思います。

そんな中、10年ぐらい前からは中小・ベンチャー飲食企業が海外進出するケースが増えてきました。国内で3〜10店舗しか展開していないような飲食企業でもタイやフィリピン、シンガポールなどに出店して成功しているお店がいくつもあります。

一昔前には、進出候補となる国の、現地法人の設立に関する法律や飲食店出店固有の法律、現地スタッフの採用の仕方など、現地の生の情報が一部の人たちの間でしか共有されておらず、その輪に入れない人たちにとっては海外進出はとてもリスクの高いものだったのですが、近年はインターネットやSNSの普及、JETROなど国ぐるみでの後押しなどもあり、情報格差がなくなり、国内である程度の実績と経験を積んだ飲食企業であれば比較的チャレンジしやすい状況にあると思います。

資金面においても、政府系金融機関の制度融資などを利用すれば、低い金利で開業資金を調達することができ、アジアであれば出店費用も国内での出店とさほど変わらないか物価によっては日本よりも安く出店できるケースもあると思います。

なぜ海外にお店を出すのか?

前述の通り、一昔前であれば国内大手飲食企業が、さらなる店舗数と売上高の拡大のために、経済成長率も高く、出店余地の多い東南アジアに進出する、というのが典型的な海外進出のパターンだったと思いますが、最近は少し違ってきたように思います。

実際に、ここ何年かで海外出店をした飲食店の人に「なぜ、海外にお店を出したのか?」と聞いたら、

「海外にお店を出したかったから!」

と答えが返ってくると思います。

それは、何も考えもなしに海外進出をした、とかではもちろんなく、経済合理性や企業の成長戦略的な判断ではなく、「日本の飲食店を世界に広めたい!」「日本の飲食文化をもっと世界の人に知ってもらいたい!」「自分のお店が世界に通用するかチャレンジしてみたい!」といった想いが原動力になっているのだと思います。

日本の飲食企業の海外進出は必然?!

もはや日本は物価の安い国に?!

バブルの時代は、日本の地価は世界でもトップクラスの高さで、衣食住全てにおいて世界的にみても物価の高い国でした。

それが今や長引く不景気、デフレの影響で、東南アジアの国と比べても決して高くはなく、特に衣食住の食に関しては、世界でもっとも安価で美味しいものが食べられる国といっても過言ではない状況です。

かたや世界では日本食の需要は高まり、その価値は年々増していっています。

以前は寿司、天ぷら、すき焼き、鉄板焼きといった日本の伝統的な料理がメインでしたが、海外でのラーメン人気が高まっていったのに合わせて、近年は焼き鳥や居酒屋、餃子や串カツなどの専門店もどんどん海外にお店を出し始めています。

そしてそれらのお店は日本での販売価格よりも高い販売価格で営業をしています。日本よりも物価が低いとされる東南アジアの国々においてもです。

それはもちろん、原材料の輸入/輸送費や関税といった、日本と同じ品質のものを提供しようと思えば余計な費用がかかってきてしまうものもあり、必然的に日本よりも高くなってしまうというのはありますが、それらの内部的な要因以上に、「世界で日本食が求められている」「日本食、さらには日本の食文化/サービスのニーズが年々高まっている」というのが一番の理由だと思います。

日本国内の競争が激しいから世界に?!

今の日本の飲食業界は多くの課題を抱えています。

慢性的な人手不足、原材料費の高騰、施工費の高騰による出店費用/リスクの増大などなど、数え切れないほど課題はたくさんあるのですが、競争が激しく簡単に値上げをすることもできません。

一方、海外では前述の通り日本食、日本発の飲食店の付加価値は高く、比較的高めの価格設定のお店が多いです。実際、日本国内では大手チェーン店としてコスパの高さを売りにしているような定食屋、カレー屋、丼もの屋などが、現地ではカジュアルなデートスポットぐらいな感じでちょっとしたハレの日に行くお店として人気を博しています。

だからと言って、

「競争の激しい日本を抜け出して競合の少ない海外に逃げ出そう!」

といったような考えで安易に海外進出をして上手くいくほど甘くないのは万国共通です。

これは飲食店に限らず、小売店、製造業、サービス業など、全ての業界に言えることだと思います。日本国内で上手くいっていないものを、国を変え、場所を変えただけでうまくいくはずがありません。ましてや海外でビジネスをするとなると、異なる文化や商習慣、日本ではありえないようなリスクがたくさんあるので、日本人が日本でビジネスをする以上にしっかりと足元を固めてチャレンジしなければなりません。

あらためて「なぜ海外にお店を出すのか?」をとことん考える

海外進出の前提が「日本国内で上手くいっている」ことが前提だとすると、より「なぜ海外にお店を出すのか?」を明確にしておく必要があります。

それは、海外展開の事業計画書を作成し、「何年後にこれだけの成長が見込めるから出店する!」といったことではなく、海外で成功するためには、実際に海外進出した後に襲いかかってくる数々の苦難に押しつぶされることなく、どんなに高い壁にぶつかってもそれを乗り越えられるだけの「覚悟」が必要であり、その覚悟を決めることのできる想い、信念をちゃんと仲間と共有できているかどうかが、まずは何よりも大切なのではないかと思います。

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