こんにちは。髙野です。
会社を紹介するとき、「透明性を大切にしています」と書くのは簡単です。
一行で済みますし、なんとなくいい会社にも見えます。
aciassも、これまで会社の情報や判断の背景を伝えることについて、何度か書いてきました。
ただ、情報を公開していれば、それだけで透明性のある会社になるのかというと、少し違う気がしています。
資料は見られる。でも、何を根拠に決まったのかは分からない。
質問はできる。でも、違う意見を言うと途端に空気が変わる。
選んでいいと言われる。でも、会社が望む方を選ぶまで話が終わらない。
これだと、情報が見えていても、自分で判断できる状態とは言いにくいと思っています。
aciassが透明性を大切にする理由は、会社の中を明るく見せたいからではありません。
相手の判断する権利を、情報を持っている側の都合で奪いたくないからです。
今回は、その話を少し掘り下げてみようと思います。
その情報を知っていたら、違う選択をしたかもしれない
転職先を選ぶときも、仕事を依頼するときも、新しいことに挑戦するときも、人は手元にある情報で判断するしかありません。
だから、情報を持っている側が何を伝えるかによって、相手の選択は変わってしまいます。
たとえば、求人に「リモートワーク可能」と書いてある。
それを読んだ人が、これからもずっと自宅で働けると思うかもしれません。でも、実際には担当する仕事や案件によって変わるのであれば、その前提も一緒に伝える必要があります。
「可能」と書いたこと自体は間違っていなくても、相手が受け取った意味とは違うことがあります。
aciassでは、リモートで働くメンバーがいることと、入社後のフルリモートを保証できるかどうかを分けて伝えています。
会社の体制や働き方については、先日公開した『15人くらいのIT会社、aciassの中身を全部書いてみる。』にもまとめました。
ここで考えたいのは、説明の細かさだけではありません。
その前提を知っていたら、相手は違う選択をしたかもしれない。
ということです。
それでも応募するかもしれないし、別の会社を選ぶかもしれない。
条件を調整して仕事を依頼するかもしれないし、今回は見送るかもしれない。
その判断をするのは、相手です。
「言ったら断られるかもしれない」という理由で必要な情報を伏せると、相手が選べたはずの別の道まで、こちらで消してしまうことになります。
会社にとって都合のいい結論になったとしても、それを相手が納得して選んだと言えるのか。
aciassは、そこを曖昧にしたくありません。
「あなたのために」で、本人の判断を先回りしない
情報を伝えない理由は、いつも悪意とは限りません。
「まだ知らせない方が安心して働けるだろう」
「難しい話をしても、かえって迷うだろう」
「こっちを選んだ方が、本人のためになるだろう」
そう考えることもあると思います。
会社にも上司にも、経験があるからこそ見えることはあります。助言することも、選択肢を整理することも必要です。
ただ、本人のために考えることと、本人の代わりに結論まで決めてしまうことは、分けておきたい。
何を優先するかは、人によって違うと思います。
給与を上げたい人もいれば、今は家族との時間を優先したい人もいる。新しい技術に挑戦したい人もいれば、得意な領域で落ち着いて働きたい人もいます。
会社から見ると魅力的な仕事でも、本人にとって今選びたい仕事とは限らないと思っています。
aciassは、自社サービス・受託開発・SESという複数の選択肢を持っています。その中の一つを、全員にとっての正解にするつもりはありません。
『SESの話を、ちゃんとしようと思う』でも、キャリアや生活の状況によって、合う働き方は変わるという考えを書きました。
会社としてできること、難しいことは伝える。そのうえで、本人が何を大切にしたいのかを聞く。
希望を全部叶えられるわけではありませんが、叶えられないことを理由に、希望を聞く工程まで省いていいとは考えていません。
採用活動では、「入社しない」という判断も尊重する
この考え方が分かりやすく出るのが、採用です。
会社は、実際の仕事内容も、制度の運用も、今困っていることも知っています。
一方で候補者は、求人やブログ、面接で聞いた話をもとに、自分のこれからを判断します。
持っている情報の量に、最初から差があります。
だからaciassは、魅力を伝えるのと同じように、できないことや、まだ整っていないことも伝える必要があると考えています。
『面接の合否を決めるのは誰か』でも書きましたが、面接は会社が候補者を選ぶだけの時間ではありません。候補者にも、会社を選んでもらう時間です。
そして、選んでもらうということは、「入社しない」という結論も含みます。
話を聞いた結果、今のaciassでは自分の希望に近づけないと思うかもしれない。
価値観は分かるけれど、自分には別の環境が合うと思うかもしれない。
会社として残念ではあります。でも、必要なことを知ったうえでの判断なら、それを引き出せたことにも意味があると思っています。
私が以前、営業をしていたときには、入社後にエンジニアの希望を聞き、会社が提供できる仕事との隔たりを感じることがありました。
その経験は、『その採用した人、半年後もいますか。』に書いています。
入社後の努力で埋められる差もあります。でも、入社前に話せたはずのことまで、本人の適応力に任せるのは違うと思います。
aciassは、採用したいからといって、まだ可能性でしかない話を約束に変えたくありません。
「今できていること」
「これから取り組みたいこと」
「現時点では難しいこと」
その違いも含めて伝えたうえで、一緒に働くかどうかを考えてもらいたいと思っています。
事実を伝わりやすくする。事実そのものは変えない
相手の判断を尊重するという話は、社内や採用だけで終わりません。
クライアントにも、パートナーにも、サービスを利用する人にも、判断に必要な情報は正確に渡す必要があります。
たとえば受託開発で、希望する機能をすべて入れると納期が厳しくなるのであれば、その懸念をしっかり伝える。
優先順位を変えるのか、段階的に公開するのか、スケジュールを見直すのか。事情が分かれば、お客様にも選択肢ができます。
自社サービスでも、今使える機能と、これからつくりたい機能が混ざって伝われば、利用する人は判断を誤ってしまいます。
必要なのは、情報をそのまま大量に渡すことではなく、相手が知りたいことに合わせて整理し、分からない部分は分からないと伝える。その方が、次の判断をしやすくなると思っています。
『「働く=傍を楽にする」って、こういうことかもしれない』で触れた、次の人の負担を少し減らす仕事の仕方にもつながる話です。
ただし、分かりやすくするために、都合の悪い前提まで消してしまっては意味がありません。
伝わり方を整えることと、事実を変えることの間には、越えてはいけない線があります。
知っていたら、入社しなかったかもしれない
その線がはっきり表れる例の一つが、SESのスキルシートです。
aciassは、経歴詐称を、営業上の工夫や表現の問題ではなく、極めて悪質な行為だと捉えています。
経験していない仕事を経験したことにする。経験年数を実際より長くする。
「スキルシートを盛る」と言うと少し軽く聞こえますが、やっていることは、事実と違う経歴を相手に信じさせることです。
本人の経験を聞き、担当した範囲や強みを分かりやすく整理することはあります。
半年の経験であれば、その半年で何を担当し、何ができるようになったのかを具体的にする。
半年を三年に変える必要はありません。
そして、この問題は、スキルシートを書き換える場面だけでは終わりません。
たとえば、入社するつもりで前の会社を辞め、手続きを進めたあとで、案件が決まるまでは雇用契約を結べないと言われる。
その状態で、案件を決めるために、事実と異なる経歴で提案することを受け入れるよう求められる。
本人からすれば、断ったあとの仕事や収入が見えない中での判断になります。
そこで了承したからといって、最初から納得してその会社を選んだことにはならないと思います。
経歴詐称を求められる会社だと事前に知っていたら、そもそも入社しないという選択もあったはずです。
会社を選ぶ段階では伝えず、引き返す負担が大きくなってから受け入れてもらう。
それでは、本人から会社を判断するための大切な材料を奪っています。
aciassは、案件が決まるまで雇用契約を結ばずに待ってもらう採用も、事実と違う経歴で提案することもしていません。
そして、もう一人、判断する人がいます。
そのスキルシートを受け取るクライアントです。
本人と会社の間で話がついていても、相手はその経歴を事実として、仕事を任せられるか判断します。
支援が必要な人だと分かっていれば、体制を変えたり、依頼する範囲を調整したりできたかもしれない。
事実と違う情報を渡すと、その選択肢まで失わせてしまいます。
本人には、会社を選ぶための正確な情報を伝える。
クライアントには、仕事を任せるか判断するための正確な経歴を伝える。
自社の利益だけを見て、その両方を騙していいとは、aciassは考えていません。
経歴は透明に。機密情報はしっかり不透明に。
一方で、情報を出せば出すほどいいわけでもありません。
Xで経歴詐称や情報漏洩が話題になると、改めて、何を伝えて何を守るのかを考えます。
判断に必要な経歴は見えにくいのに、外に出してはいけない情報が見えてしまう。
そんな状態だったら、
「そこは透明にするんだ」
「逆に、そこは透明にしないんだ」
と、透明にする場所を確認したくなります。
経歴は透明に。機密情報はしっかり不透明に。
ガラス張りにする場所は、選びたいところです。
大切なのは、誰にでも何でも見せることではなく、誰が何を判断するために、どの情報を必要としているのかを考えることです。
そして、情報を出せないことと、説明をしなくていいことも同じではありません。
詳細を伝えられなくても、その理由や、伝えられる範囲の事実は説明できることがあります。
「機密なので」の一言を、会社にとって都合の悪い話を閉じるための言葉にはしたくありません。
伝えたあと、違う答えが返ってきても
ここまで書いてきましたが、必要な情報を伝えたからといって、相手がこちらの望む判断をするとは限りません。
応募を見送るかもしれない。
別の仕事を希望するかもしれない。
会社の方針に疑問を持つかもしれない。
むしろ、情報を出したことで、違う意見が出てくることもあります。
でも、会社の説明に同意することだけが「自分で判断すること」なら、最初から答えは一つに決まっています。
aciassは、会社の考えを伝えると同時に、相手にも考えがあることを忘れたくありません。
これは、会社が希望をすべて受け入れるという意味ではありません。
話し合っても一致しないことはありますし、会社として引き受けられないこともあります。そのときには、何が難しいのか、なぜそう判断したのかを伝える。
少なくとも、違う結論になったことだけを理由に、相手の理解や意欲が足りなかったことにはしたくないと思っています。
『ワクワクの裏側で、僕たちがやらないと決めていること』でも、見栄えを整えることより、信頼を積み上げることを大切にしたいと書きました。
都合のいい情報で期待を膨らませれば、目の前の話は進むかもしれません。
でも、その期待と現実の差を、あとから誰かが背負うことになります。
aciassが大切にしたいワクワクを、誰かが事情を知らないことの上につくりたくはありません。
正直まだ言い足りない
aciassも、説明が足りないことや、うまく伝えられていないことはあると思います。
情報を出したつもりでも、相手が判断できる形になっていなければ、伝え方を考え直す必要があります。
だから、この記事を読んで「透明性のある会社だと分かってください」と言うつもりはありません。
実際に話したとき、質問にどう答えるのか。
できることと難しいことを分けて話すのか。
違う意見が出たときに、どう向き合うのか。
そういうところも含めて、見てもらいたいと思っています。
aciassは、自分の希望や疑問を言葉にしながら、周りと相談して仕事を進めたい人と、一緒に働きたいと考えています。
最初から何でも判断できる必要はありません。「ここが分からない」と伝えることも、判断するための大事な一歩です。
aciassに興味を持ってくださった方は、ぜひ一度お話ししてみませんか?
やってみたいことだけでなく、避けたいことや、入社を決める前に確かめたいことも聞かせてください。
そのうえで、aciassを選ぶかどうかは、ご自身で決めてほしいと思っています。
「透明性を大切にしています」と書くだけなら、一行で済みます。
その一行の先で、相手が自分で選べる状態をつくる。
そして、その人が選んだ答えを尊重する。
aciassは、そこまでを日々の仕事にしていきたいと考えています。