※この記事は、アクトビ代表の藤原がnoteにて公開しているものと同じ記事です。
はじめに
こんにちは。アクトビ代表の藤原です。
2025年10月23日、アクトビは東京証券取引所 TOKYO PRO Marketに上場しました。
これまでnoteでは、「エンジニア・デザイナーがビジネスをつくる立場になるべきだ」という問題意識や、「人が成長し続けられる限り、会社も成長し続けられる」という組織思想について語ってきました。
今回の上場は、そうした僕たちの思想を次のステージに引き上げる、大きな節目でもありました。
このnoteでは、アクトビという会社が何を信じてきたのか、なぜいま上場したのか、これから何を目指していくのか。
この場で丁寧に言葉にして残しておきたいと思います。
創業時に感じた「違和感」と「問題意識」
わたしがアクトビを立ち上げたのは、2018年。
今から8年弱前です。
当時から強く感じていたのは、「エンジニアやデザイナーが作業者として扱われている構造」への違和感でした。
前職では社内ベンチャーの立ち上げに携わり、エンドユーザーの声を聞き、課題を抽出し、自分の手でソフトウェアをつくるという、プロダクト開発の本質に向き合う経験ができました。
その後、フリーランスのエンジニアとして様々な案件に関わる中で、「目的が語られない現場」に直面し続けます。
要件定義書、設計書だけを渡され、納期とタスクだけが示される。
クライアントの本当の課題も、ユーザーの本音もわからない。
「なんで、こんなにも目的から遠いんだろう?」
一方で、海外のスタートアップを見ると、エンジニア出身のCEOたちが事業を牽引している。
なぜ、日本のエンジニアやデザイナーは、ビジネスに深く関与しないのか。
「つくる力」と「考える力」の両方を持てば、もっと良いプロダクトが生まれるし、失敗する開発だって減らせるはず。
そんな思いから、「ビジネスとクリエイティブを融合させる会社をつくろう」と決めました。
1-2期目 失敗から学んだ組織の強さ
創業して間もない1-3期目は、正直、うまくいかないことの連続でした。
炎上案件も数多く経験し、クライアントとの認識ズレやスケジュール破綻に何度も直面しました。
創業時から、わたしたちは「エンジニア・デザイナーがビジネス知識を持ち、真の価値を提供するためには、下請けの"つくるだけ"の仕事を受けていてはいけない」と考えていました。
プライム契約で、コンサルティング会社のように課題解決から関われる立場を目指していたのです。
ただ、そのためにはまず つくれること を証明しなければならなかった。
他の開発会社やコンサルティング会社との違い、優位性を示す必要があったのです。
そのため、3期目までは「実績づくりに徹する」と決め、どんな下請け案件でも必ずやり切ることで、信頼を積み上げる方針を取りました。
社員は最小限に抑え、優秀なフリーランスの仲間たちと協業し、高品質な開発を提供することに全力を注ぎました。
優秀なフリーランスが自然と集まるように、オフィスの隣でコワーキングスペースも運営し、志のあるクリエイターたちが交流できる場をつくったのも創業時です。
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しかし、品質を最優先するあまり、組織をつくる という観点が欠けていました。
経営者としての自分も未熟で、「なんでわからない?」「こんなもので納得すると思う?」と理想を押し付けることでしか品質を担保できなかった。
その結果、メンバーの離脱が相次ぎ、組織としての脆さに直面します。この苦い経験が、後のアクトビの 人を育てる という思想の土台になっていきました。
3期目 大手DX案件への挑戦という事業の転換期
下請け案件も定期的に獲得できるようになった3期目、コロナ禍が訪れ、案件ストップが相次ぎました。
幸い、この時期には黒字転換も果たし、社員も複数名抱えられる体制が整っていたため、経営的なダメージは少なかったものの、時代の大きな変化を肌で感じました。
もともと「3年間で実績を積み、提供の形をプライム契約中心に変えていく」構想を描いていました。
すなわち、エンタープライズ企業を主要顧客とし、すべての契約を準委任契約へと移行していくという戦略です。
そもそも飲食店経営からお商売をはじめていた私は、人がお金を払う動機として、必要になってからお金を払う先を選ぶというものよりも、なくてなはらないものにお金を払うことの強さを痛感していました。
クライアント企業にとってアクトビがなくてなはらない価値を提供し、年間通しての予算を確保してもらう(PL計画にアクトビ予算がある状態)ことこそが、正しい価値提供であり、エンジニア・デザイナーが本来発揮しうる価値を追求し続けられる形だと確信していました。
コロナをきっかけに企業の広告予算がDX投資に流れ始めるのを目の当たりにし、「いまこそ創業当初に掲げた戦略を実現するチャンスだ」と確信しました。
この決断に合わせて、石村を取締役CTOとし、経営体制を再構築しました。
藤原は全案件から外れ、時代の変化に対応した事業設計へと集中。
一方で石村は現場の品質と組織の安定を担うという明確な役割分担を敷き、「現在を支える石村」と「未来を描く藤原」という体制がここで確立しました。
この時期の決断こそが、アクトビにとっての大きな転換点であり、後のPurpose Drivenな組織づくりの礎となりました。
未来に集中することで生まれた新規事業
わたし自身も、3期目以降は「組織の未来に集中する」ことを自分の役割として徹底しました。
その結果、技術顧問事業、Salesforce事業、その他の新規事業の立ち上げといった次の一手を打ち出す意思決定に集中できるようになりました。
マネジメントを信頼できる役員やマネージャーに任せることで、未来を描き、新しい領域に挑戦する余力が生まれたのです。
これは、個人の力量ではなく、組織が「未来を考える人を支える文化」を持っていたからこそ実現できたことだと感じています。
実はアクトビはこれまでにいくつもの新規事業や新しい領域の挑戦を繰り返してきました。
もちろん失敗に終わり撤退した事業もたくさんあります。
その中でも残っているのが、Salesforce領域、ブランディング領域、技術顧問領域、投資領域、海外事業です。
その他にもいくつかの事業を常に並行して立ち上げ続けています。
ただ、あくまでもプロダクトドリブンではなく、エンジニア・デザイナーの職域の再定義のために行っているピープルドリブンな挑戦です。
今後はさらに新たな領域へ参入していくことになると思いますが、この挑戦し続ける文化は変えずに残していきたいと考えています。
5期目 技術会社から人を育てる会社へ
そんな中で迎えた5期目。ここで、アクトビは大きな意思決定をしました。
「わたしたちは、技術会社ではなく、人を育てる会社である」
炎上案件を経て組織が強くなり、技術力の再現性も高まりつつあった。
しかし、このままでは「ただの技術提供会社」にとどまってしまう危機感がありました。
この時期、事業としては安定し、成立していたからこそ、わたしたちは「成長の再現性」に最も注力しました。
これは単なるスキルアップではなく、“人も会社も、成長を続けられる仕組みを持っているか”という問いに向き合うフェーズです。
アクトビは100年先も成長し続ける会社としての組織経営を行っています。
そのために必要なのは、個人の熱量や偶然に頼らず、仕組みとして成長を再現できる組織構造です。
だからこそ、“人が育つ仕組み”を中心に据えると決めたのです。
この意思決定を境に、ACTBE OSの設計に動き出しました。
評価・育成・文化づくりをすべて「人の成長」に紐づけ、事業成長と一体で考える方針にシフトしました。
この思想転換が、その後の事業展開を大きく変えていきます。
転換期 思想の再定義とPurpose Drivenの確立
3期目の事業転換を経て、アクトビは単なる開発会社から思想を持った組織へと進化する必要があると感じていました。
これまでのアクトビは「クライアントの期待を超えるものをつくる」ことに全力を注いできました。
ですが、5期目を迎える頃から、わたしたちは問いの方向を変え始めます。
「誰のために、なぜこのプロダクトをつくるのか?」
「つくることの目的は、何を成し遂げるためにあるのか?」
この目的の再定義こそが、アクトビが掲げるPurpose Driven(目的ドリブン)思想の出発点でした。
Purpose Drivenとは、感情や情熱だけに依存せず、論理と意味を軸に組織や事業を設計していく考え方です。
熱量を燃料にするだけでは持続できないし、成果だけを追い求めても人は疲弊してしまう。
だからこそ、わたしたちは「意味から考える」ことを文化の中心に据えました。
具体的には、プロジェクトごとに「目的起点」で意思決定する仕組みをつくりました。
たとえば、プロジェクトのキックオフ時にはこのプロダクトが誰にどんな価値を生み出すのかをチーム全員で言語化し、途中で迷ったときにはそれは目的に沿っているか?という問いに立ち戻る。
これは、ACTBE OSの基本構造としても機能しています。
さらに、Purpose Drivenの思想はクライアントとの関係にも反映されています。単なる開発請負ではなく、クライアントのビジネスパートナーとして、共に「なぜそれをやるのか」を考える存在へと変化していったのです。
この思想が根付いたことで、アクトビのメンバーは自らの仕事に意味を見出せるようになり、個々の成長と組織の成長が同じ方向に向かうようになりました。
Purpose Drivenは、もはや一つのスローガンではありません。
アクトビの判断、行動、育成、評価のすべてに浸透している経営思想です。
TOKYO PRO Market上場に込めた意味
多くの方に「なぜ上場?」と聞かれます。
正直、アクトビのビジネスモデルは、エクイティファイナンスを行うようなIPO前提のスケールとは少し距離があります。
わたしたちは、華やかに急成長する会社ではなく、年輪のようにじっくりと成長を積み重ねる会社を目指しています。
だから、かつては「上場は手段として合わないかもしれない」とすら思っていました。
でもあるとき、問いの立て方を変えてみたんです。
「100年続く会社になるために、今なにが必要か?」
そう考えたときに、透明性の高い経営、適切なガバナンス、社会的な信頼性
これらは未来に向けた重要な土台だと再認識しました。
そして、「アクトビに関わるすべての人が、胸を張って語れる会社であるために」上場は必然だと確信しました。
資金調達の手段ではなく、思想をかたちにするステップとしての上場。
それが、TOKYO PRO Marketを選んだ理由です。
そして、この日が明確な次の成長へのステップとして定義づけしています。
ACTBE OSと、次の10年へ
わたしたちの組織設計の軸となっているのが「ACTBE OS」です。
これは、評価制度でもあり、育成指針でもあり、判断基準を言語化した共有の土台でもあります。
このOSを育てる過程で、次第に「会社の思想と言語が、個人のキャリアと繋がる」状態がつくられてきました。
今では、マネージャーやCTO、CHROを中心に、日々の仕組み改善が自発的に行われています。
Slackでは「目的から逆算する設計」に関する投稿が自然と流れてきて、それに他のメンバーがコメントを返す。そんな“思考と言語の訓練の場”が、組織の中に生まれていることに、確かな手応えを感じています。
そして、今回の上場準備のプロセスでは、中期ビジョンと組織設計をより具体化することができました。
「100年先も成長を続ける会社」として、ビジョンの全体像を全社に共有し、それぞれが自分のポジションと成長解像度を持てるようになったのです。
最後に このストーリーを読んでほしい人へ
今回のnoteで一番伝えたいのは、「アクトビは、まだまだ通過点にいる」ということです。
わたしたちはこれまで、たくさんの人に支えられてきました。
一緒に働いてくれた仲間、仕事を任せてくれたクライアント、日々のチャレンジを応援してくれたパートナーの皆さん。
この場を借りて、心から感謝を伝えたいです。
そして、10年後の自分がこのnoteを読み返したとき、「まだまだだったな」と思えるように、これからも一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。
アクトビは、これからも“意味から考える組織”であり続けます。
そして、100年後も「なんか、あの会社熱いよね」と言ってもらえるように、 Purpose Driven 経営を追求し続けていきます。
YoutubeやPodcastでアクトビの経営や考え方についてはなしていますので、そちらもぜひご視聴ください!