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イノベーション組織研究4:Accor Hotel Disruption & Growth

自ら破壊&創造するための組織「Disruption & Growth」

今回は、世界中にホテルを展開する多国籍ホテルグループAccor Hotelグループのイノベーション創出組織、「Disruption & Growth」について紹介します。 Disruption&Growthは起業家エコシステムとAccor Hotelグループの架け橋となり、双方の関係性を強めることを目的として設立されました。

「日常生活においてカスタマーエクスペリエンスを向上すること」をミッションとしており、社員へのデザイン思考教育や、社内のアイディア創出、意見交換がよりオープンになる仕組みの構築など、イノベーションが生まれやすい企業文化を育む努力をしています。

また、フードサービス企業Sodexo, オフィス用家具メーカーSteelcase, 金融機関Crédit Agricole, フランス国有鉄道SNCFと共同出資で巨大なイノベーションラボ「TheCamp」を運営しています。 TheCampは7ヘクタールの土地に、250の部屋を持つ巨大な施設であり、都市の未来を再発明することを目的として、入居者がコラボレーションしながらアイディアを実装しています。入居企業同士のイベント開催や意見交換などのコラボレーションが活発に行われており、入居団体もスタートアップ、非営利団体、大企業と多様なプレイヤーから構成されます。

アイディア創出プラットフォーム「OPEN-IDEAS」

Accor Hotelでは社内アイディア創出プラットフォーム「OPEN-IDEAS」を運営しており、全世界の社員が部門にかかわらず、アイディア創出、評価、議論をすることができるようになっています。

OPEN-IDEASは大きくDig, Develop, Doのフェーズで構成されており、以下の通り定義されています。 ・Dig:あらゆる課題の可能性を検討し、課題の本質を探求するフェーズ ・Develop:課題へのソリューションアイディアを質にこだわらず数多く創出するフェーズ ・Do:有望なソリューションアイディアを実装するフェーズ

Doのフェーズではこれまでに、Google Glass for AccorHotels.と呼ばれる、AccorHotel専用のグーグルグラスアプリケーションのプロトタイプが開発されました。

その後、Hotel Labsと呼ばれる実際のホテルを想定した実験場で、従業員がソリューションを試用することでフィードバックを得る仕組みが構築されています。

スタートアップ人材の登用

Accor HotelはDisruption & Growthの責任者として、シリアルアントレプレナーであるThibault Viort氏を登用し、Chief Disruption and Growth Officerという役職に任命しています。

最近では国内でも同様の事例が見られ始めていますが、いわゆるエスタブリッシュな企業が、スタートアップエコシステムとの協業や、デジタル化前提での新規事業創出を実現する場合、Accor Hotelのように、専門性を持ったスタートアップ人材を採用し、CXOレベルの権限を与えるということは重要であると言えます。

これまでの事例

Disruption & Growthでは、ホテル業界の抱える最大の課題として、Airbnbをはじめとする、宿泊シェアリングサービスによるホテル業界の破壊をあげています。 このようなデジタルディスラプターへの対抗策としては、規制強化を訴え、ホテルならではの付加価値提供を行うなど守備的な対策も多くみられますが、彼らの対抗策は自らディスラプターとなることでした。 その一例として、Disruption & Growthはonefinestay, Squarebreakという企業を買収し、AccorHotelグループに取り込んでいます。

Onefinestay, Squarebreakは宿泊シェアリングサービスにホテルレベルのアメニティや、清掃などを付加したサービスを提供しており、いわば高級版Airbnbと言える企業です。 また、ホテル事業での新規サービスとして、アプリ経由でレストランやショーの予約ができるデジタルコンシェルジュサービスなど、従来のホテル運営に捉われない領域へ事業領域を広げています。

今後、デジタル化が進み従来型のホテル業はディスラプトされる未来が避けられないならば、他社に攻められる前に、自らディスラプターとなる姿勢は参考になるのではないでしょうか。

イノベーション組織マッピング

Disruption & Growthは「日常生活においてカスタマーエクスペリエンスを向上すること」をミッションとしており、本業であるホテル業界と近い領域を対象にしていると言えます。

また、OPEN-IDEASにより全社員からアイディアを募集するだけでなく、TheCampではスタートアップ、非営利団体、大企業と幅広い入居者とのコラボレーションが活発に行われており、オープンな組織です。また、Onefinestay,Squarebreakのようなスタートアップとの提携、買収も積極的に行われています。

まとめ

いかがでしたか、今回はAccor Hotelグループのイノベーション組織「Disruption&Growth」について紹介しました。

今後デジタル化の波が押し寄せるエスタブリッシュな業界において、自己変革のためにスタートアップ人材をCXOレベルに登用し、自らディスラプションを起こすためにスタートアップも社内に取り込んでいくという取り組みは、日本でも増えていくのではないでしょうか。

これは、パーソナルコンピューターの概念を提唱したアラン・ケイの有名な言葉 「未来を予測する最良の方法は、それを発明することだ」 (The best way to predict the future is to invent it.) とも通じる部分があるように思います。


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