「人間の心理や行動特性を探求することで、真に役に立つ製品、サービス、またそれらを支える仕組みを創出し、豊かな社会の実現に貢献する」を理念に掲げるビービット。
UX &ビジネスストラテジーに所属するコンサルタントは、beBitが強みとするUXケイパビリティに基づくソリューションとお客様の事業課題との橋渡しを行い、統合的な解を提供する事で、UX起点でのビジネス変革を実現しています。
今回は、UX &ビジネスストラテジーにてマネージャとして活躍する小林 大輔さんをご紹介します。実際の業務内容やそのやりがいについて聞きました。
小林 大輔(こばやし だいすけ)/ UX&ビジネスストラテジー / マネージャ
慶應義塾大学総合政策学部卒業(2006年)。日本IBM戦略コンサルティング部門にて、競争戦略立案支援、新興国参入戦略立案支援など、さまざまな戦略プロジェクトに従事し、ソーシャルセクターでの活動を経てビービットに入社。ビービットでは、UX起点での戦略検討プロジェクトを担当。経営層や戦略検討メンバーに対する、ワークショップを通じた組織横断での顧客戦略検討の支援や、具現化に向けたプロジェクト設計・実装支援の実績を持つ。UX/CX組織強化ラボにて主要メンバーとして活動する。
── まず、現在はどのような仕事を担当していますか?
入社以来、UX&ビジネスストラテジー(UBS)でマネージャをしています。ビービットでは、現代の事業は「UX」と「ビジネス」と「テクノロジー」の3つの要素が重なり合って成り立っていると考えています。コンサルティング企業をはじめ多くの企業は、ビジネスを起点としてUXとテクノロジーをどう活用するかという順番で考えますが、ビービット、特に私の所属するUBSでは、クライアントの事業全体をUX起点で捉え直したときに、どのようにビジネスの価値や事業の方向性を再定義するかといった順番で考えています。UXが検討の起点になる点がユニークですね。
そして、そこで定義された体験価値を実装する手段として、テクノロジーの活用方法を考える。そのようなアプローチで、事業やサービスとそれを支える組織の再定義を行うといったプロジェクトを主に行っています。デザインやUXは一般的にビジネスから遠いものと思われがちですが、UBSはそのUXの観点を事業やビジネス戦略に結び付けるようなプロジェクトが多いですね。
── ビービットに入社するまでのキャリアを教えてもらえますか?
今年で社会人歴18年になるのですが、私のキャリアは大きく3つに分かれるなと思っています。少し長くなりますが、ビービットにたどり着くまで順を追ってお話させて下さい。
新卒では外資系企業である日本IBMに入社しました。いわゆる、アメリカ系資本主義を体現したような会社で、最初の4年はエンタープライズ企業の法人営業を担当していましたが、途中で色々とご縁があり、当時の戦略コンサルティング部門に異動しました。「そんな異動あるんだ」と思われるかもしれませんが、当時は実際にあったのです。コンサルティング部門では、市場調査を踏まえた競争戦略立案などのオーソドックスな案件や、新興国マーケットのエントリー戦略、大規模システム開発のPMOなど、大変だけど面白い案件を多く担当させてもらいました。
転機になったのは社会人8年目でした。そのころ、学生時代にインターンでお世話になった先の社長が中心となり、トビタテ!留学JAPANという文科省のプロジェクトを立ち上げていました。これは官民協働の取り組みで、民間企業からの寄付を財源にした給付型留学奨学金制度なのですが、非常に面白いことをしているなと思いました。
かつ、世の中に対して、とてもいいことをしているなと。
最初は会社に「出向」させて欲しいと願い出たのですが駄目だと言われ(当たり前ですね)、最終的に2年間「休職」し、フルタイムでこのプロジェクトに参画しましたが、今の自分の価値観を形作る貴重な2年間でした。ビジネスのロジックが成り立たない中で、多くの人、特に経営者や起業家といったトップに協力していただくためには何が必要なのか、人間はどういった時に立場を超えて・組織の事情を超えて動いてくれるのか、社会を変えるアイディアとはどのように生まれるのか、そこで生まれる歪みはなにかなど、業務は七転八倒の毎日でしたが、手触り感のある・意義のある仕事とはこういうものだと、強く自分の中に刻まれました。後で話しますが、結果的にフルタイムでまた戻って来ることになります。
こうした日々を過ごす中では、もうコンサルの世界には戻れないなと思うようになり、その後IBMを退職し、所謂ソーシャルセクターに活動の場を移しました。これがキャリアの転機2つ目ですね。
最初の転職先は大学で、ビジネススクールの立ち上げに携わりました。人生、起業することはあっても学校を作ることはなさそうだなと思い、社会的な意義を感じたのもありますし、純粋に面白そうだと感じたからです。ここでは大学院の新設から1期生を迎え入れて卒業するまでの3年間を過ごしました。
作っているのは学校ですが、小さいスタートアップを立ち上げるようなものですので、自分が一番役に立つことを、立場に関係なく全力でやる毎日でした。
その後またご縁があり、2020年にトビタテ!留学JAPANプロジェクトに今度はフルタイム職員として戻りました。時代の変化に併せて仕組みをスクラップアンドビルドして、もう1回作り上げることがミッションでした。
トビタテ!留学JAPANプロジェクトには大学生と高校生向けのプログラムがあり、私は大学生向けプログラムの再設計と、全体的なプログラム統合・コンセプト設計を担いました。ただ、それ以上に大事なのはこの時期は「コロナ」の最中であったということです。国境は閉じられ、世の中は留学どころではありません。ただ、そこで立ち止まればもうプロジェクトは終わります。採用もお金集めも既に動いていて、新しいプログラムを期待してくれる学生・生徒や学校の先生が沢山いらっしゃいました。八方塞がりの中で、さあどうするかを仲間と考え、色々な関係者と交渉する毎日で、キャリアの中で一番のハードシングスでした。
また、どんなに構想を練ったとしても、すべてが理想通り進む事はありません。このプログラムの本質は何か、次の世代に残すべきコアとなる価値は何かについて、議論し、色々な人に助けと教えを求め、関係者と交渉し、最後は何とか形にする所までこぎつけ、トビタテを後にしました。
── ビービットに入社した理由を教えていただけますか?
トビタテの中で常に感じていたのは、これは奇跡の産物だという事でした。時代環境と政治、そして創業者のビジョンが噛み合い、良い人たちとの出会いが大きな社会的インパクトに繋がったのですが、継続的なエコシステムを構築しづらいとも思っていました。清貧の思想も強く、長く働ける環境でもなかなかありません。
そこに関わった人たちの意思や貢献は真に尊敬すべきですし、自分の30代を費やして良かったと思っています。ただ、後輩に引き継ぐべき仕組みかと言われれば「うーん、どうだろう」という疑問が常にあり、持続性と拡張性をもった仕組みを考えないといけない、そのためのスキルを磨かなければならないと考えていました。結果、もう一度ビジネスの世界、資本主義(ビジネスロジック)の世界に戻ろうと思ったのです。
ビービットとの出会いはたまたまです。もうコンサルティングの世界に戻ることはないと思っていました。10年近く離れていましたし、スキルとしても求めるものと違うだろうと思っていましたが、結果的にそれは間違いでした。
ビービットは人文的な”匂い”が強いというか、アカデミックな思想の裏付けがある会社なんですね。例えばUXの方法論は、先日亡くなられたクリステンセン教授の『ジョブ理論』が下敷きになっています。パートナーや副社長との面談を繰り返す中で、コンサルティングカンパニーという形態はとっていますが、私はビービットを「UXを広げる社会運動体の集団」であると捉えました。コアとなる価値があって共感する人が集まって、理解と共感の輪が広がり、UXという方法論を社会に還元していく、ここはそういう会社だなと。
ビジネスとしての駆動原理を持ちながらも、社会に対して良い影響を与える集団である、そのようにビービットを捉えた時に、もう一度自分を鍛え直す「精神と時の部屋」に入る気持ちで、入社を決めました。
── 入社して感じているやりがいや、印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
去年やった顧客戦略ワークショップです。UBSでは様々なプロジェクトを行なっているので、これがすべてではないのですが、一例としてお話ししますね。
クライアントはいわゆる大手の小売店グループで様々な事業体を持っている企業でした。短期的には売上好調ですが外的要因に左右されやすく、中長期な目線で事業のビジネスの捉え直しが求められていました。
それぞれの事業部には固有のKPIがあり、各事業部で自分たちのお客様に対して売上をどうすればいいかは考えられるが、事業間・グループ間のシナジーを求められてもどうすればいいのかわからない、という状況でもありました。
関連する役員を全員集めて終日ワークショップを行い、ターゲットとなるお客様に対して、どのような体験価値を提供するのか、そのために自社のアセットや能力をどのように活用するのか、足りない能力があればどのように能力拡張していくのか、といった様々な観点から議論を行い、最終的にいくつかの方向性を出すことができました。
一般的なワークショップの弱点として、その瞬間は盛り上がるし、面白いアイディアが出るのだが、自社の戦略・ビジネスへの繋ぎこみが弱くて「面白い体験」に留まるとか、次に繋がらないとよく言われます。また、企業によっては様々なコンサル企業とワークショップを実施した結果、「ワークショップ疲れ」を起こしてしまうこともあるようです。
ビービットのアプローチの特徴は、「徹底的に顧客視点で考える」ことを起点に、フレームワークと場を提供するところにあります。普段はどうしても自分たちの事業部を主語として考えてしまうところを、”お客様を主語にして”提供価値(顧客体験)を考えることで、検討の目線を合わせ、アイディアの種を創出しようという試みですね。
「お客様の目線に立って考える」という話をすると、多くの企業様では自社でも当然やっているとお答えになります。ただ、このワークショップは「本当に顧客視点で考えられていますか?」という問いかけから始まり、ビービット独自の切り口から考えてもらう所にポイントがあります。結果的に、このお客様のケースでは、顧客視点で考えることの重要性とその難しさについてご理解をいただいたと同時に、「次は自分たちで、違うターゲットを対象に考えてみたい」といった前向きなご意見をいただくことができました。
コンサルティング会社が課題をヒアリングし、調査・分析し提言にまとめるといったアプローチに比べると、時間も掛かりますし、答えを出すまでがやや回り道にも見えてしまいます。一方で、多くの企業のマネジメントの方々は、(外部の力は借りることはあるけれど)自分たちの力で考えたい、自分事として捉え、チームのメンバーが主体性を持ってアイディアや変革の実現を推進してほしいという想いを持っています。
そうしたマネジメント層の想いを汲み取り、具体的なサービスや変革のアイディアの具現化と、それを実現するチーム力の向上を顧客視点(UX)をハブにしてまとめ上げる、そういったプロジェクトはビービットならではだと思っています。
このワークショップを経てクライアントとは強い信頼関係が生まれ、その後も多くの経営課題についてのご相談を頂けるようになりましたし、今も定期的なディスカッションの場を設けさせていただいています。
── コンサルティング業界に戻ってきて、気付いたことはありますか?
先程、もうコンサルワークはできないと思ったと言いましたが、今は、昔とは違う強みがあるなと思うようになりました。クライアントの悩みをこれまでよりも深く理解できるようになったと感じています。特に経営層やマネジメント層など、上のレイヤーの人たちの悩みですね。
ビービットに入る前の約10年間では、大学教授や官僚、起業家や、寄付をしてくれる企業の皆様など、本当にさまざまなステイクホルダーの間でもまれ続けていました。個人としての野心や思いはあるが、立場による制約がさまざまあるなかで、企業のトップやマネジメントは孤独を抱えていると思います。アイデアはあるけど共感されず反対されて推進できず、孤独を深めている方々の悩みを深く理解し、共感できるようになりました。
また、「組織の中で自分が果たすべき役割は何なのか、どうしたら、会社の、チームの、そしてクライアントのお役に立てるのか」について、以前よりも深く考えるようになったと思います。
例えばユーザ行動観察調査や分析などは、ビービットで長くやっている人のほうが強いわけです。「体験の設計」と言うときの、世界への眼差しの深さもそうですね。そうした強い専門性がある人と、自分の持つ専門性をどう組み合わせると、クライアントの課題をより深く解決できるか、既存のプロジェクトスキームではなく、組織の中の仲間と一緒に新しいスキームをどのように作り上げるのかについて、日々考え、プロジェクトで実践しています。一人で万能になるというよりは、どうやってこの個性の強い集団で、新しい価値を作ることができるのかを、以前よりもずっと考えられるようになったと思いますし、そこが期待されているとも思います。
── 今後の展望は?
コンサルティングという言葉が普遍化していく中で、ビービットやUBSの立ち位置や提供価値をより明確にし、変革をしていきたいです。
伝統という言葉がありますよね。「昔からの”伝統”を守る、伝統を紡ぐ」といった使い方をされますが、老舗の旅館の方などは、「”伝灯”を紡ぐ」と書かれることが多いそうです。
今は「統」、糸を紡ぐという漢字を書きますが、もともとは「比叡山の不滅の法灯」からいわれがあります。開祖である最澄が、788年に比叡山延暦寺の根本中堂の本尊に灯明を掲げて以来、織田信長の焼き討ちで一度危ない時期があったものの、1200年以上も一度も切れることなく、灯りが輝き続けているそうです。消えずの法灯とも言われますね。
その灯明、1000年以上も同じ灯りなのですが、実は油の配合等を改良し続け、少しでも長く灯明の光が続くように工夫を重ねていたそうです。遠くから見ると変わらない灯明ですが、中では革新が絶え間なく起きているわけですね。
何もしないで守るだけでは、時代に取り残されて消えてしまう。外から見える形(= ブランド)を守るために、中身を常にアップデートし続ける必要がある。つまり、「 伝統= 伝灯とは革新であり、革新とは伝灯である」と、以前ある方に教えていただきました。
ビービットという会社は創業して25年以上経っており、老舗の領域に入りつつあると感じています。外側から見ると同じように見えても、中ではコンサルティングの技術や提供価値について革新を続けてきて、今があります。遠くから見たときには変わらないコアの価値を提供しているように見えることは非常に大事です。安心して依頼することができますからね。
一方で社会の変化や技術革新の波をとらえて、進化していく必要があります。ビービットという企業が灯をともし続けるために何をアップデートし続けるべきか、何をコアにしてそれを守るか、あるいは何を脱ぎ去るべき衣として捨て去るのか。そういうことを考えることが大事だと思いますし、今後取り組んでいきたいと考えています。