学生さんや転職活動中の方から、「結局UXの仕事ってどういう感じなんですか?」という質問をよくいただきます。
確かに、UXという目にする機会の少ない言葉からは 、どういう業務やキャリアが待ち受けているのかを想像するのは難しいかもしれません。
こうした疑問にお答えするため、この記事ではビービットがUXの仕事において強みとしている「ユーザ憑依」のスキルをまず説明し、そのスキルがビービットのメンバーのキャリアでどう活かされているかをお伝えします。
ビービットにおけるUXの仕事とは何か、その先に何があるのか、イメージの助けになれば幸いです。
目次
ビービットの強み:ユーザ憑依のスキル
ユーザ憑依でビジネスを動かす、COO藤井のキャリア
ユーザ憑依でマネジメントを極める、CHRO室伏のキャリア
「ユーザ憑依」は才能ではなくスキル
ビービットの強み:ユーザ憑依のスキル
ビービットのUXコンサルティングが持つ強みのひとつとして、行動を丁寧に観察しエンドユーザ(≒消費者)の意思決定の過程を推測する、ユーザ憑依のスキルをコンサルタント一人ひとりが有していることが挙げられます。
一般的にUXの仕事においては、「良いUX(体験)をつくるためにはユーザの理解を深めることが不可欠であり、そのためにはユーザの心理に対する共感が必要である」とされます。
しかし、ユーザ=人の心を理解することは、結局のところどこまでいっても難しいものです。加えて、外から見えない心理だけに着目し過ぎると、 「同じユーザを見ていたはずがチームの中で解釈が食い違う」ということが頻繁に起こりえます。
その結果、「せっかくアンケートをとってユーザの理解を深めようとしたが、その実態をうまく把握できない」「アンケート結果は、チームの中で声が大きい人のアイデアの補強材料に使われるだけ」という事態につながりがちです。
では、どうすれば深くユーザを理解し、良い体験を作ることができるのでしょうか。ビービットの方法論では、ユーザの行動という事実の観察から始めることにしています。
行動という事実を手がかりに、「なぜそういう行動をとったのだろう?」という意思決定の過程を推測していく。「これも結局、ユーザの心に対する理解と同様、チームの中で解釈が食い違ってしまうのでは」と感じるかもしれませんが、それは違います。
心はユーザの中にあって見えませんが、行動は外から観察できます。実際にユーザに対面してプロダクトを実際に操作してもらいながら行動を観察する手法もあれば、デジタル上の行動履歴データをもとに観察する手法もあります。
「ユーザはこう思ってるんじゃない?」とただ言い合うだけでは折り合いがつきませんが、「ユーザはこういう行動をしているよね、じゃあこう思っているんじゃない?」というふうに、客観的な行動の観察結果を議論の土台にできていると解釈をまとめやすくなるのです。
ビービットは、行動観察の結果をもとに意思決定の過程を推測しては、次の観察でさらに検証を深めるという流れを通して、ユーザ理解の精度を精度を高めていきます。その先に、「ユーザ憑依」と呼べるレベルの理解があると考えています。
では、「憑依できている状態」とはどのレベルなんでしょうか。ビービットでは「思い浮かんでいるのが、ユーザの顔ではなくユーザの視界であるレベル」という言い方を一つの目安としています。
「相手の立場に立って物事を考えよう!」といっても、実際に思い浮かべているのはその「相手の顔、姿」であることが多いかと思います。
しかし、それはあくまで「あなたから見た相手」ではないでしょうか。本当に相手の立場に立って、つまり相手に憑依できていれば、見えるのは「あなた自身の顔や姿を含む、相手の目に映っている視界」となるはずです。
※ゲームをする人にとっては、プレイヤーキャラクターを俯瞰しているTPS(三人称)視点ではなく、プレイヤーキャラクター自身の視界が見えているFPS(一人称)視点の状態という表現がわかりやすいかもしれません。
この、ユーザの視界が見えている「憑依」と呼べるレベルに立てると、体験設計の品質は向上します。
なぜなら、ユーザの意思決定の過程を十分に推測できていれば、「いまの体験のどこに違和感があるのか?」「何があれば自然と動きたくなるだろうか?」といった、体験の品質を左右するカギを特定し、行動を後押しすることができるからです。
これは、みなさんも身の回りの人に対してであれば、似たようなことをしているのではないでしょうか。「あいつ、こう言ったら喜ぶだろうな」「ここまでするとちょっとやりすぎかな……」といったように、相手の考えや行動を想像して、こちらの行動や言動に気を配るという流れは日常的でしょう。
しかし、これを何万人もの顔の見えない「ユーザ」に対して行おうとすると、考えや行動が想像しきれなくなり何をして良いかわからなくなり、途端に難しくなります。ユーザ憑依は、その状況でも多くのユーザに共通する意思決定の過程を想定し、体験の品質に気を配るためのスキルなのです。
もちろん一人の行動しか見ていないと、その一人にしか憑依できず、その一人にとってだけ良い体験になるおそれもあります。ビービットはそれを防ぐため、可能な限り多くのユーザへの憑依を繰り返し行動や意思決定の共通点を探ることで、提案する体験の品質を確保しています。
ビービットのUXコンサルティングは、このような「ユーザ憑依を通した体験の把握、分析、具体化」が強みとなっています。
ユーザ憑依でビジネスを動かす、COO藤井のキャリア
では、そのユーザ憑依のスキルは、UXコンサルティングという一つの仕事でのみ使える限定的なスキルなのでしょうか。そのようなことはなく、ユーザ憑依の対象をたとえば「クライアント」や「市場」に置き換えるだけで、まったく違う業務での可能性が広がるのです。
取締役COO(事業運営の統括者)である藤井保文(ふじい・やすふみ)のキャリアを見てみましょう。
藤井保文(ビービット 取締役 COO)
東京大学大学院修了。上海・台北・東京を拠点に活動。国内外のUX思想を探究し、実践者として企業・政府へのアドバイザリーに取り組む。AIやスマートシティ、メディアや文化の専門家とも意見を交わし、人と社会の新しい在り方を模索し続けている。
著作『アフターデジタル』シリーズ(日経BP)は累計22万部。最新作『ジャーニーシフト』では、東南アジアのOMO、地方創生、Web3など最新事例を紐解き、アフターデジタル以降の「提供価値」の変質について解説している。
ニュースレター「After Digital Inspiration Letter」では、UXやビジネス、マーケティング、カルチャーの最新情報を発信中。https://www.bebit.co.jp/blog/all/newsletter/
藤井はビービットに新卒で入社し、UXコンサルタントとしてキャリアをスタートしました。彼が「憑依」の力を実感した例として、葬儀系企業のプロジェクトが挙げられます。
インタビュー中、あるユーザが「花でいっぱいの、明るい葬儀にしたい」と話し始めました。そのとき藤井は、葬儀に明るさを求める心理がはじめのうち理解できなかったそうです。
しかし、その人が置かれた状況を想像しながら徹底的に話を聞くうちに、「もし自分に花が好きな大切な人がいたならば、自分も同じことを願うかもしれない」と、ふと「視点が重なった」「憑依できた」という感触を得たというのです。
その後、彼は憑依の対象を「目の前のユーザ」から、「クライアント企業」や「社会全体」へと広げていきました。「使う人から見て、このサイトは役に立っているのか?」という問いが、「クライアントにとって、この支援は役に立っているのか?」というマネージャとしての問い、そして「社会にとって、この事業は役に立っているのか?」という経営者としての問いに進化していったのです。
対象が「消費者」から「クライアント」や「社会」に変わっても、根底にある「相手の視点に憑依し、自分たちが役に立てる価値を特定する」という課題の解き方は変わっていません。
現在、COOとして経営の大きな舵取りができているのは、このコンサルタント時代に培った憑依のスキルがあったからだと藤井は語ります。つまりCOO、事業運営もまたUXのスキルが活かせる仕事だと言えるのです。
ユーザ憑依でマネジメントを極める、CHRO室伏のキャリア
ユーザ憑依の対象として置き換えられるのは、「クライアント」「社会全体」だけではありません。たとえば「同僚」も対象となります。
取締役CHRO(人事戦略の統括者)である室伏知将(むろふし・ともゆき)のキャリアは、「社内のメンバーに対するUXコンサルティング」の積み重ねと言えます。
室伏知将(ビービット 取締役 CHRO)
東京大学経済学部卒業後、ビービットに入社。
国内大手クライアントに対しUX/CXの設計や改善プロジェクトを実行。2012年から5年間、台北・上海に駐在し同社初の海外事業展開、両オフィス立ち上げに従事。その後海外事業におけるジェネラルマネージャとして、営業、プロジェクトマネジメント、組織運営、人事採用まで幅広く担当。2017年に帰国し、ソフトウェア事業におけるフィールドセールス、インサイドセールスの責任者、タレントマネジメント責任者等を経て、現職。
彼も藤井同様、ビービットに新卒で入社し、UXコンサルタントとしてキャリアをスタートしました。そんな室伏は「UXもマネジメントも”人を動かす”点では変わらない」と言います。
かつて、ある交通系のクライアントの案件に携わったとき、数百万人のユーザが訪れるWebサイトのUX改善が求められました。この案件の成否はクライアントのビジネス全体を左右するものだったので、一般的には売上の観点に立って「より利益が出るサイトにするには」といった問いを考えたくなるものでした。
しかし、そこで「ユーザの視点に立った時、取りたくなる行動とは」という問いからアプローチしたことが、この案件の成功の決め手となりました。その結果、彼の作ったユーザ体験は、年月を重ねた今でもクライアントに貢献しているそうです。
こうしたコンサルティングの場で培った「ユーザの視点に立った時、取りたくなる行動とは」を考えるスキルが、その後のマネージャ、管理職、そしてCHROとしての仕事に活き続けていると言います。
つまり、「サイトのユーザ」が「仕事を共にするメンバー」に変わっただけであって、マネジメントとは「仕事を共にするメンバーの視点に立って、その行動をうまく後押しすること」という点でUXコンサルティングと本質的に同じプロセスである、というのが室伏の認識なのです。
UXコンサルティングのスキルは、Webサイトを中心とした一般消費者向けのものと思われがちです。ですが、Webサイトのユーザであれ同僚であれ、「人を動かす」点では何ら変わりがないはず、応用が効かせられるはず、というのが室伏の視点です。この視点からすれば、管理職、人事、CHROといった分野もまたUXのスキルが活かせる仕事と言えるでしょう。
「ユーザ憑依」は才能ではなくスキル
と、ここまでざっと読むだけだと「単純に、この二人が特別なんだろう」というように見えてしまうかもしれません。しかし、二人の土台となっているユーザ憑依のスキルは、地道な訓練で習得できるスキルであることを強調させてください。
「憑依」と呼べるレベルで、ユーザの行動を観察し意思決定の推測を突き詰めること。そのうえで、自然と人が動く根本的に使いやすい体験を設計すること。これは、どれだけ才能があるように見える人でも一朝一夕で身に着けられるものではありません。数百人分の行動を観察していくことでようやく形になるものです。
しかし、逆に言えばそういった地道な訓練によって身に着けられるものでもありますし、ビービット社内には習得を後押しする方法論の蓄積もあります。
改めて、この記事の内容をまとめてみましょう。
ビービットの強みとなっているのは、行動観察によってユーザの意思決定プロセスを推測する、ユーザ憑依のスキルです。
憑依する先をエンドユーザ=一般消費者から「クライアント」「社会全体」に変えると、ビジネスを大きく動かすキャリアにつながります。一方、「同僚」に変えると、マネジメントを極めるキャリアにつながります。
そして、このユーザ憑依のスキルはセンスや才能ではなく、地道な訓練を経て身につくひとつのスキルです。
UXの仕事がどんなものか、どんなキャリアに繋がるのかについて、疑問は解消できたでしょうか。もしUXの仕事やユーザ憑依のスキル、そしてその先のキャリアに興味があれば、お気軽にご連絡ください。