2026年1月、私は株式会社キャラットの代表取締役社長になりました。
それまで社長だった前佐野社長は会長に就任し、私がそのバトンを受け取ることになりました。
「社長になった」という事実だけを切り取れば、大きな転機です。でも、自分の中では、何かが突然変わったという感覚はあまりありません。
なぜなら、私は22年間、この会社で佐野会長の背中を見ながら仕事をしてきたからです。
思えば、入社した頃の私は、当然ですが経営のことなど何も分かりませんでした。目の前の仕事を覚え、店長になり、マネージャーになり、出店を任せてもらい、事業を任せてもらう。その一つひとつの経験の中に、いつも佐野会長がいました。
もちろん、すべてが順風満帆だったわけではありません。
その象徴的な出来事が、スタジオコフレを任せてもらったことです。
当時のコフレは、今のようなブランドではありませんでした。売上も、人も、資金も、まだ十分に揃っていない。これからどうなるか分からない、まさに「吹けば飛ぶような小さな事業規模」でした。
佐野会長は、そこに私を投入しました。
当時は「なぜ自分がコフレに?」というより、「どうやってこのブランドを大きくしようか」と考えていました。
任命されてからは、まずはコフレを10億円規模の事業に育てるためのストーリーを、ノートにまとめる日々が始まりました。
今振り返ると、あの時に佐野会長から与えられたのは「仕事」ではなかったのだと思います。
「お前ならできる」という信頼でした。
人は、期待されることで成長する。
そして、自分を信じて任せてくれる人がいるからこそ、簡単には逃げられなくなる。
私はコフレを通じて、そのことを身をもって経験しました。
だから今、社長になって改めて思うことがあります。
それは、佐野会長からもらったものを、今度は自分が次の世代に渡していかなければならない、ということです。
社長という肩書きを引き継ぐことが「バトンタッチ」なのだとしたら、会社の歴史や想いを引き継ぐだけでは十分ではありません。
佐野会長が30年以上かけて築いてきたキャラットを、ただ守るだけなら、私が社長になる意味はないと思っています。
守るべきものは守る。
でも、変えるべきものは変える。
そして、これまで以上に多くの人にキャラットのサービスを届け、キャラットで働く人たちが、この会社で働くことに誇りを持ち、豊かになれる会社をつくっていきたい。
それが、これから私がやるべきことだと思っています。
最近、社長になってから佐野会長と話していると、以前とは少し違う感覚があります。
数年前は「社長と社員」「経営者と現場」という関係でした。
今は同じ経営という景色を見ながら話をしている。すると、以前は分からなかったことが少しずつ分かるようになってきました。
「あの時、佐野会長が言っていたのは、こういうことだったのか」
そう思う瞬間があります。まだまだ、分からないことの方が圧倒的に多いですが。
だからこそ、これからも佐野会長には、会長として、そして一人の先輩経営者として、たくさんのことを教えてもらいたいと思っています。
そしていつか、「キャラットを奥野に任せてよかった」
そう思ってもらえるような未来を、みんなと一緒につくっていきます。
奥野貴之