📌インタビュー📌
今村不動産株式会社代表 今村則永
1年は本当にはやいもので、また6月がやってきました。会社経営節目の10年目を超えて、気持ち新たに挑んだ11時期。オフィス移転や人員の大幅増加など、振り返ってみても動きの大きな1年だったなと思います。
6月に入り12期がスタートしましたが、前期を振り返りながら新たな1年について考えていきます。
目次
期首目標通り順調に純利益を積み増せた
投資用から事業用へ、改めて見えてきた市場の変化
これまでと同じやり方では通用しない局面に入ってきた
会社の形がいままででいちばん大きく変わった年だった
守りながら攻める、次の1年
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期首目標通り順調に純利益を積み増せた
まず数字面でいうと、11期の期首目標として掲げていたのが売上80億円、粗利益15億円、純利益4.5億円。こまかな最終数値はまだですが、現時点で確定している部分だけで
売上高:目標80億 → 73億
粗利益:目標15億 → 16.5億
当期純利益:目標4.5億 → 5.1億
程度の着地を見込んでいます。売上だけを見ると目標に少し届いていませんが、粗利益と純利益については、会社としてかなり効率よく事業を進めることができた一年だったのではないかと思います。
僕が最重視しているのは「純利益」。売上を伸ばすことももちろん大事ですが、毎期毎期、会社に利益を残して純資産を積み上げていくことが、金融機関からの融資を原資に拡大成長をする不動産開発業には不可欠です。
僕は会社の創業当初から、いつか市況は変わるという前提で経営してきました。その時に会社を守ってくれるのは、会社としての信用力であり純資産です。そういう意味でも、今期も目標通りの純資産を積むことができたのは、会社として非常に大きいことだと思っています。
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投資用から事業用へ、改めて見えてきた市場の変化
営業面で良かったことを挙げると、開発プロジェクトの件数自体が年々増えてきていること。11期は21件の新規プロジェクトを進めることができました。件数が増えているということは、それだけ有益な情報をいただける量も増えているということですし、これまで積み上げてきた与信によって資金調達も順調にまわり、取捨選択しながら事業を組み立てられるようになってきた結果でもあります。
事業の中身を見ると、昨年から続いている変化が今期はより色濃く出ています。以前は投資用不動産の比率が高かったのですが、前期あたりから事業用不動産の比率が上がってきました。11期の比率をみても、事業用と投資用がちょうど半々の構成になっています。この背景には、やはり金利の影響が大きいと思っています。
マイナス金利が解除され、昨年末には政策金利が30年ぶりの水準となる0.75%まで引き上がったことで、投資用不動産の市況は明らかに変わってきました。投資用不動産は基本的には利回りの世界です。金利が上がれば、当然その分だけ利ざやは小さくなります。今までは低金利の環境だったからこそ投資する意味が大きかった物件も、今後は同じようには見られなくなっていくでしょう。住宅ローンの金利が上がれば個人が住宅購入を躊躇するのと同じように、投資用不動産でも金利上昇の影響は避けられません。実際、投資家のマインドは少しずつ冷え込んできている感覚がありましたが、11期はその傾向がより加速したように感じます。
その一方で、事業用不動産の需要は堅調でした。自社ビル用地、自社倉庫用地、工場など、一般法人が自社の設備として不動産を持ちたいというニーズは高まっています。実際に決済の場で経営者の方とお話ししていても、いままで設備投資をしたくてもできなかった、あるいは様子を見ていた会社が、ここにきて動き出している印象があります。
日本は長くデフレの時代が続いていましたし、現金を持っていることが比較的合理的だったと思います。ただ、急速にインフレに向かい現金の価値が下がっていく中で、本業でしっかり利益を出している会社ほど、自社の成長のために設備投資をしていこうと判断しはじめているように感じます。そういった外部環境の変化が、事業用不動産の需要につながっているのではないかと思います。
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これまでと同じやり方では通用しない局面に入ってきた
決算の結果は堅調でしたが、僕自身はいまの市況を楽観的に見ているわけではありません。むしろ、不動産業界全体で見ると、これからはかなり難しい局面に入っていくと思っています。
ひとつは、先ほども書いた金利の上昇です。今後も金利は上がっていく可能性が高いでしょうし、そうなると不動産業にとっては基本的に逆風です。投資と実需の比率以前の話で、僕たちのような不動産開発会社は金融機関から資金を調達して物件を仕入れ、事業化して販売していくモデル。つまり、金利や金融機関の融資姿勢が変われば、事業の前提そのものが変わります。
もうひとつは、建築コストや資材の問題です。近年は人件費も資材価格も上がっていますし、中東情勢の影響で原油や物流、住宅設備の供給なども含めて、これからどうなるかは本当に読みづらい。ニュースでも取り上げられましたが、実際に現場でもナフサの供給不足や価格高騰を背景に、塗料や防水剤、断熱材などの建築資材でメーカーの新規受注ストップが起きはじめました。建築が絡む物件の場合、材料が入らない、工期がずれる、価格が上がるということが起これば、売却時期も資金計画も全部変わってきます。これは企業努力だけでどうにかできる範囲を超えている部分もあります。
だからこそ!これからは足元の情報をかなり慎重に見ていく必要があると思っています。金融機関、建築会社、協力業者、販売先、それぞれの現場から情報を集めて、いまどのジャンルの物件を仕入れるべきなのか、逆にどのジャンルは一旦抑えるべきなのかを、いままで以上に冷静に判断する場面が増えるでしょう。たとえば、投資用物件の比率をいままで以上に抑える、建築リスクの高いものを避ける、土地の再販や既存建物付きの物件にフォーカスするなど、やり方はいろいろあります。
今村不動産の場合、マンションだけ、住宅だけ、事業用だけという特定ジャンルに強い、あるいは特化した開発会社ではありません。今後はそのスタイルを強みに、市況に合わせて、営業方法や商品開発の方向を柔軟に変えていける余地があると思っています。
今後大事になるのは、売上を過度に追いかけすぎないこと。一般的に会社経営では、前期よりも来期、来期よりも再来期と、売上を伸ばしていくことが成長だと捉えられます。もちろんそれ自体は間違っていませんが、不動産のように在庫を持つビジネスでは、売上を伸ばそうとすれば、その分だけ期首の段階で多くの在庫を持っておく必要があります。市況が読みづらい時に在庫を持ちすぎることは、かなり大きなリスクになります。
だから、今期以降は売上を無理に伸ばすというより、しっかり利益を出せる案件に集中していく必要がある。売上を抑制してでも、利益率をしっかり確保する。会社としてのバランスシートを軽くして、純資産を積み上げていく。その方が、現在の局面では健全だと思っています。いずれにせよ、これまで通りの営業スタイルではなく、市況に合わせてより柔軟な売買を行うための戦略を立て、社内に共有していきたいと考えています。
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会社の形がいままででいちばん大きく変わった年だった
少しネガティブな話題になってしまったので、営業面以外の11期の会社ハイライトを。
一番大きかった出来事を挙げるなら、やはり事務所の移転です。昨年の7月に新しい事務所へ移転しましたが、振り返ってみると、11期のはじまりのタイミングで移転したことになります。もういまの事務所にいることが自然になっていますが、改めて考えると、会社としてはかなり大きな決断と変化でした。
移転と同時に、社員数もぐんと増えました。1年間での増員数は6名、会社全体では22名の規模になりました。少し前までは(これは嬉しいことではありますが)社歴の長いメンバーが多く平均年齢も40代手前で、どことなく落ち着いた雰囲気でしたが、若いメンバーも増え、女性スタッフも増え、平均年齢も下がったので、社内の空気が以前よりパワフルで華やかになったように感じています。笑。
社内イベントや食事会などの回数も自然と増えました。月1回の食事会や社内企画など、以前はそこまで仕組みとして動いていなかったものが、現在は自発的に回り始めています。僕自身があれこれ指示を出すのではなく、現場のメンバーが考えて、会社の中でコミュニケーション機会を作ってくれている。これは会社にとってとても良い変化だと思っています。
一方で、人が増えることで課題も見えてきました。人数が少ない時は、なんとなくの空気感や距離の近さで成立していたことも、人数が増えるとそうはいかなくなります。細かなルール、判断基準、責任の所在などを改めて整えていく必要があると感じています。
とはいえ、僕は何でもかんでもルールで縛る会社にしたいわけではありません。何か問題が起きた時に、それを個人だけの問題として終わらせるのではなく、会社としてどう受け止めるか。そこから制度や仕組みをどう改善していくか。その目線が大事だと思っています。
創業時から一貫していますが、今村不動産はとことんボトムアップの会社でありたい。人が増えたことで、現在のようないろいろな声が上がること自体は、むしろ健全なことだと思います。その声をどう個人として会社の成長につなげていくかが、今期の組織づくりのテーマです。
採用については、当初は今期さらに10名ほど増やしていくようなイメージもありました。ただ、現在の市況を考えると、そこも少し慎重に考える必要があります。経営や事業の計画とリンクしないまま人だけを増やしていくと、会社としてのリスクも大きくなります。市況が良い時の前提で採用計画を組むのではなく、現在の環境に合わせて、必要な人材を必要なタイミングで採用していく。採用計画については再度、見直していこうと考えています。
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守りながら攻める、次の1年
今期(12期)の方針を一言でいうなら「守りながら攻める」という感じだと思います。こう書くと少し守りに入っているように見えるかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。市況が変わっている以上、今までと同じようにただ仕入れて、ただ売上を伸ばしていくやり方では通用しない。だからこそ、会社としての強みをより明確にして、利益を出せる領域に集中していく必要があるということです。
数字目標は
売上高:109億
粗利益:19億
当期純利益:5億
この達成を目指して、より組織化と営業力強化を行います。
今村不動産の強みは、なんといっても商品の企画開発力。土地の情報をいただいた時に、そこに何を作れば一番価値が出るのかを、これまでのノウハウや情報をもとに企画できる。投資用、事業用、住宅、土地再販など、いろいろな選択肢の中から、その土地にとって一番価値が出る組み立てを考えることができます。その結果、前期も開発プロジェクトの利益率は高い水準を維持することができました。今期は金利や市況の変化をより詳細に読み取りながら、社内で情報共有を行い、そのタイミングで最適な開発ができるような状況を目指したい。
それともうひとつ。今期以降は販売力もさらに強化していきたいと考えています。在庫を持ちすぎないためには、作った商品をできるだけ早く販売していく必要があります。仕入れは仕入れ、販売は販売でより専門性を高めながら、両輪でまわす。会社として組織化を進めていくうえでも、ここは大きなテーマになります。
他にも、長期的には安定的なインカムを作っていくことも大事だと考えています。プロジェクト型の売買だけでは、どうしても市況の影響を受けます。毎月安定して入ってくる収益があれば、会社の固定費を一定程度カバーできますし、新しいチャレンジもしやすくなります。すぐに形になるものではありませんが、管理や保有、関連する収益源も含めて、少しずつ仕組み化していきたいと考えています。
第11期は、移転をして人も増え、組織化もさらに進みました。これまでの10年で積み上げてきた純資産も、金融機関との関係も、商品開発のノウハウも、組織の土台も、着実に成長を感じられる年でした。一方で、金利、インフレ、建築コストなど、外部環境が大きく変化した1年でもありました。
先の見えない市況の変化は怖さもありますが、同時にチャンスでもあると思っています。市況だけに頼らず、会社としての力で利益を出していく。第12期は、そこをより強く意識する一年にしたいなと思います。