クラウド技術の進化、そして生成AIやAIエージェントの普及によって、クラウドエンジニアに求められる役割は大きく変わり始めています。「これから市場価値を高めるには何を学び、どんな経験を積めばいいのか」という問いを抱えているエンジニアも多いのではないでしょうか。
大手SIerとAWS(Amazon Web Services)を経て、現在はランスタッドでクラウド領域を含むインフラエンジニアのマネージャーを務める山下剛さんは、「AI時代だからこそエンジニア自身の経験や判断がますます求められる」と語ります。
クラウド領域の最前線を走り続ける山下さんが考える、AI時代のエンジニア像とは。そしてランスタッドだからこそ実現できるキャリアとは。クラウドエンジニアの成長戦略を聞きました。
インタビュイー
ランスタッド株式会社 デジタルタレントソリューション事業本部
タレント&ソリューション事業部 インフラストラクチャーサービスマネージャー
山下 剛
大学卒業後、三菱電機株式会社にて32年間にわたり中央省庁や公営競技などの大規模システム開発に従事。要件定義やマネジメント、最大100名規模のプロジェクトリードを経験。2022年よりAWSにて、中央省庁担当のソリューションアーキテクトとして、レジリエンス、データ管理、生成AI領域を専門に年間約60件のクラウドアーキテクチャ設計を支援。現在はランスタッドのタレント&ソリューション事業部でエンジニア採用およびデリバリー管理を統括。
SIerとAWSを経て「現場」にこだわり続ける
—山下さんは三菱電機、AWSを経て、現在はランスタッドでクラウド領域のマネージャーを務めています。まずは、ご自身のキャリアを振り返っていただけますか?
私にとって大きな転機になったのは、2022年に三菱電機からAWSへ転職したことですね。
三菱電機では長年にわたり、中央省庁や公営競技向けなど大規模システムの開発に携わってきました。要件定義から設計・構築、保守・運用まで、一貫してプロジェクトを担当し、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーとして現場を経験してきたんです。そうした中、システムの基盤を支えるクラウド技術の可能性に惹かれていたところ、AWSからお声がけをいただいたこともあって転職を決意しました。
—その後、AWSからランスタッドへ転職した理由を教えてください。
AWSではソリューションアーキテクトとして、お客様へクラウド活用をご提案する立場でした。これはもちろん、とてもやりがいのある仕事です。ただ、たとえるなら車のディーラーに似ていて、「この車にはこんな機能があって、キャンプにも行けますよ」と提案はできても、お客様が実際にどう使っているかまではわからないんです。私自身は「実際にシステムが動き、お客様のDXが実現するところまで携わりたい」という思いを強く持っていました。
そんな中で出会ったのがランスタッドでした。クラウド領域を含むインフラ領域の受託事業をこれから大きく成長させようとしているフェーズにあり、さまざまなお客様のDXを現場で支援できる。さらに、エンジニア1人ひとりの成長を支えながら、組織そのものをつくっていける。そんな魅力を感じて入社を決めました。
AI時代に問われる「経験と判断」の価値
—生成AIやAIエージェントの進化によって、クラウドエンジニアを取り巻く環境も大きく変わり始めています。山下さんは現在の市場をどのように見ていますか?
これまではクラウド上にシステムを構築し、自動化しながら運用していくことが大きなテーマでした。しかし今は生成AIやAIエージェントの進化によって、「AIをどう使いこなすか」がエンジニアの価値となりつつあります。
たとえばシステム障害が発生した際、以前であれば運用担当者がログを確認し、原因を分析しながら対応方法を考えていました。しかしAIエージェントを活用すれば、ログの収集や分析、対応策の提示まで自動化できるようになっています。その結果、エンジニアには「手を動かすこと」以上に、AIが導き出した結果を正しく判断し、より品質の高いシステムへ改善する役割が求められるようになってきました。
—AIが進化すると、「人の仕事が減るのでは」と不安を感じる人もいると思います。
そうした懸念の声はありますが、私は完全に人の仕事がなくなることはないと考えています。
最近開催された「AWS Summit Japan 2026」でも、日本を代表する大規模システムを運用する企業の方が、「高い安定性や障害への強さが求められるシステムでは人の判断が欠かせない」と話していました。
私自身もまったく同じ考えです。AIが非常に強力なパートナーだからこそ、それを使いこなし、お客様にとって最適な形へ落とし込むための「経験」と「判断」の価値は、むしろ高まっていくのではないでしょうか。
資格という「地図」を手に入れ、現場経験を積む
—AI時代を見据え、これからクラウドエンジニアとして成長していくためには、どのようなことを意識すべきでしょうか?
若手のうちは、まず技術を体系的に学ぶことが重要だと思っています。
クラウド領域で活躍するための資格取得を目指している人も多いでしょう。私はよく資格取得について、「地図を手に入れることと同じ」だと話しています。地図があれば、目的地までどんなルートで進めば良いのかがわかりますよね。資格も同じで、クラウドサービスの全体像や技術体系を理解するための道しるべになるんです。
そのためランスタッドでは、所定の資格を取得した際の全額キャッシュバックや、お祝い金支給制度を設けて支援しています。ただ、資格だけで十分というわけではありません。その知識を実際の現場でどう使うのかを経験することが、クラウドエンジニアの市場価値を高めるうえでは欠かせないと思います。
—ランスタッドへ入社したクラウドエンジニアは、どのような経験を積むことができますか?
要件定義やプリセールスといった上流工程から、設計・構築、保守・運用まで、幅広い案件があります。
実は、クラウドだけで完結しているお客様はそれほど多くありません。自社のデータセンターとクラウドをつないだハイブリッド構成で運用しているケースが圧倒的に多く、クラウドとオンプレミスを別々に運用していて効率が上がらない、と悩んでいるお客様もいらっしゃいます。こうした案件では、単に保守・運用を引き受けるだけではなく、AIを活用した自動化や効率化まで提案できることが、これからの大きな価値になるはずです。
成長フェーズの今なら、組織づくりや事業づくりにも参加できる
—そうした高度な案件に携わるエンジニアを、会社としてどのように支援しているのでしょうか?
ランスタッドでは、1人で現場へ入る従来のスタイルだけではなく、チームでプロジェクトへ参画する体制づくりを積極的に進めています。
経験豊富なエンジニアと一緒に働きながら、設計の考え方や実装方法を間近で学ぶことで、知識を実践へと結び付けられる機会にしていきたいと考えているんです。さまざまな案件を経験しながら、自分のキャリアを大きく伸ばしてほしいですね。
また、単に現場に送り出すのではなく、難易度の高い案件であれば、AWS時代に年間60件以上の設計支援を行ってきた私自身がプロジェクトに一緒に入り、アーキテクチャのレビューや伴走支援を行います。プロの思考プロセスを隣で体感できるのは、今のフェーズならではの成長機会だと思います。
—エンジニアの技術面での成長を支える仕組みづくりにも力を入れているそうですね。
はい。AWSやAzureの検証環境を用意し、実際に手を動かしながら学べるようにしています。最近では初心者向けに、AWSを実際に操作しながら学べるハンズオン研修もスタートしました。
この研修の講師を務めているのは私ではなく、「やってみたい」と手を挙げてくれたエンジニアなんです。今後も定期的に開催し、学び続けられる場を増やしていきたいと考えています。また、月に1度、赤坂のオフィスにエンジニアが集まる交流の場も設けています。こうした場もゆくゆくはエンジニア自身に企画してもらいたいと考えています。
—実際の現場で、クラウドエンジニアがつまずきやすいのはどんなところでしょうか?
クラウドだけで閉じたシステムは、実はほとんどありません。オンプレミスとの接続や、セキュリティ領域との連携が求められる場面が非常に多く、そこで戸惑う人は少なくないと思います。ただ、当社にはセキュリティやネットワークを専門とするエンジニアも数多く在籍しており、自分の領域だけではわからないことを社内で気軽に聞ける体制があります。
また、ナレッジを蓄積する仕組みづくりにも取り組んでいます。ドキュメントだけでなく、社内チャットでのやり取りから自動的に知見を吸い上げ、生成AIで検索・活用できるようにするといった、いわゆるRAGの仕組みを検証中です。現在は、実運用に向けてセキュリティの専門家と一緒に構築を進めています。
—経験者やベテランエンジニアには、どのような役割を期待していますか?
経験豊富なエンジニアには、ぜひ組織づくりや事業づくりにも力を貸してもらいたいですね。
たとえば現在は、複雑になりがちなクラウド運用やセキュリティ診断などを、誰にでもわかりやすい状態で提供できるようなサービスの開発も構想しています。こうしたアイデアを実現していくには、セキュリティやネットワークなど各分野の専門知識を持つエンジニアの力が欠かせません。
技術を磨くだけでなく、自分の知見を組織や事業の価値へ変えていく。そうした経験を積めることも、成長フェーズにある今のランスタッドだからこその魅力だと思います。
マネージャーとして「ネガティブな意見」を歓迎する理由
—エンジニアとのコミュニケーションで、山下さんが特に大切にしていることは何でしょうか?
良いことだけではなく、困っていることや改善してほしいことなども率直に話してもらいたいと思っています。四半期ごとの定期面談に加え、配属先や担当業務が変わったタイミングでも面談を実施しますが、ネガティブな意見はなかなか出てこないものです。でも私としては、ネガティブな意見ほど言ってほしいと思っています。
なぜなら、そうした意見こそが、組織や業務の改善につながる貴重な声となるからです。出してもらった意見や提案をすべて実現できるとは限りませんが、現場のエンジニアの声がなければ気づけないことがたくさんあるのも事実です。
—実際に、エンジニアの声をきっかけに改善につながった例もあるのでしょうか?
たとえば以前、「評価基準がわかりにくい」という意見が出ました。「今、自分はどのレベルにいて、何ができれば昇給や昇格につながるのかが見えない」と悩むエンジニアがいたんです。
その声を受けて、従来のジョブグレードの定義を整理し、それぞれの役割や期待値を明確にする取り組みを進めているところです。今後は、その基準に沿って目標設定や評価を行い、誰もが納得感を持ってキャリアを築ける仕組みにしていきたいと考えています。
エンジニアの声を聞き、組織づくりへと反映していく。そんなサイクルをこれからも回していきたいですね。
—最後に、これからランスタッドで活躍したいと考えているエンジニアへのメッセージをお願いします。
ランスタッドには、エンジニア1人ひとりのキャリアアップを支える環境があります。私たちマネージャーや社内の有識者、ナレッジ、学びの場など、使えるものはどんどん使って、自分自身の成長につなげてほしいですね。
その挑戦を後押しできるよう、私たちも学習環境や評価制度をさらに充実させ、1人ひとりが安心してチャレンジできる組織をつくっていきたいと思っています。