テクニカルアーティスト(TA)という職種をご存知でしょうか。デザイナーでもなく、プログラマでもなく、その両方の言葉を知っているからこそ担える仕事があります。
デザイナー出身で「龍が如く」シリーズに携わり続けたC.A氏と、インディーゲーム会社、外資系ゲーム会社でのTAとしての経歴を経てセガに辿り着いたA.L氏。異なるキャリアを持つ2人のTAに、この仕事の面白さと、セガというフィールドについて聞きました。
ゲームを作る仕事から、ゲームを作る人を支える仕事へ
――まずはお二人の経歴を聞かせてください。
C.A:私は新卒でセガに入社し、キャラクターデザイナーとしてキャリアをスタートしました。「龍が如く」シリーズには初期から携わっており、当初は敵やモブキャラなどのNPC、建物や看板といった背景オブジェクトのデザインを担当していましたが、次第にメインキャラクターも手がけるようになりました。「澤村遥」というキャラクターは、シリーズを通じて長く担当したキャラクターの一人です。
デザイナーとして約15年を過ごした後、産休・育休を経て復帰するタイミングでTAにジョブチェンジしました。
A.L:私は香港の出身で、台湾の大学でデジタルメディアデザインを専攻しました。学生時代からゲームのプログラミングとデザインの両方を学んでいたのですが、台湾の政府が実施していたインターンシッププログラムに応募したことで、日本のゲームスタジオで働く機会を得ました。
その後は京都のインディーゲーム会社で2年、大阪の外資系ゲーム会社で1年、TAとして経験を積み、昨年セガに入社しました。今は第2事業部のエンジンチームに所属し、自社ゲームエンジンの開発に携わっています。
――C.Aさんは長年デザイナーとして活躍されていましたが、TAへの配置転換をどう受け止めましたか。
C.A:実は、デザイナーとして働きながらも、プログラミングへの関心はずっと持ち続けていました。学生の頃にはプログラマという仕事にも興味があったくらいです。デザイナー時代は、業務の合間や退勤後の時間を使ってMaya(マヤ)やSoftimage(ソフトイマージ)のスクリプトを独学で書いていました。反復作業の自動化など、チームの効率を上げるためのツールをいくつか作り、実際に他のデザイナーたちにも使ってもらっていたんです。
そういった経緯もあって、上司から「TAはどうか」と提案された時は迷わずやりますと答えました。仕事と育児の両立をしなければいけない状況だったので「TAになればデザイナー時代より融通がきく働き方ができるだろう」という上司の読みは外れてしまいましたが(笑)、仕事の面白さは確かにあると感じています。
――A.LさんはTAを最初のキャリアとして選んだとのことですが、なぜこの職種に惹かれたのでしょうか。
A.L:大学でゲームを制作する中で、デザインとプログラミングの両方を担当していました。デザインとプログラミングのどちらにも強い興味を持っていたのですが、両方の学習や挑戦をどのように両立し、キャリアに活かしていけばいいのか分からずに悩んでいました。
そんな時に、知人からTAという職種を教えてもらったんです。デザイナーとプログラマの橋渡しをする仕事だと聞いて、これだと思いました。どちらか一方だけを選ばなければいけないわけではなく、両方の興味をバランスよく活かせる道があるのだと気づきました。TAはまさに自分が目指したいキャリアだと感じ、最初からこの職種での就職を目指しました。
効率化と探求。同じTAでも、まるで違う仕事
――現在の業務内容を聞かせてください。
C.A:私の主な仕事は、デザイナーが行う作業の効率化と自動化です。ゲーム開発の現場では、デザイナーは毎日膨大な数のデータを扱います。その中には、データの命名規則の確認やファイル形式の整合性チェックなど、本来クリエイティブな仕事に使うべき時間を奪ってしまうような反復作業が少なくありません。そうした作業をツールで自動化し、デザイナーがデザインに集中できる環境を作るのが私の役割です。
具体的には、MayaでPythonのスクリプトを書いてワークフローを改善したり、写真から3Dモデルの形を生成するツールを使用したり、デザイナーが求める光や色、質感といったビジュアル表現をシェーダーとして実装したりしています。また、プログラマとデザイナーの間に立って、双方の要求を調整する役割も担っています。
A.L:私が所属するのは自社ゲームエンジンの開発チームでは、仕事の性質がC.Aさんとは異なります。研究開発(R&D)の要素が強く、最新のレンダリング技術やライティング技術を調査・検証し、自社エンジンへの組み込みを提案するのが主な業務です。
たとえば、国内外の学術発表や技術的な公開プラットフォームを通じて、業界の最新トレンドや最先端のレンダリング技術を調査します。そこで発表されている新しい手法を自社エンジンに取り入れるとしたらどんな課題があるのか。そういった調査・検証を行い、ゲームエンジン開発チームに提案するというのが業務の流れです。また、その提案をチーム内で使用する際には、デザイナーが実際に使えるよう、マニュアルの作成や説明会の実施なども担っています。
――デザイナーとプログラマの間に立つ場面も多いのでしょうか。
C.A:かなり多いです。たとえば、プログラマ側から「デザイナーにこういう対応をしてほしい」という要望が来ることがあります。ただ、その要望をそのままデザイナーに伝えると、対応するのに膨大な工数がかかってしまうことも珍しくありません。
そういった時に、私はまずその要望をツールで自動化できないか考えます。デザイナーが手作業でやっていた部分をスクリプトで自動処理できるようにすれば、プログラマの要求も満たせて、デザイナーの負担も増えない。デザイナーとプログラマの両方の仕事を理解しているからこそ、そういう解決策を提案できるのだと思っています。
あとは橋渡しが必要になることもあります。例えば、デザイナーが「こういうシェーダーが欲しい」と言っても、その表現をそのままプログラマに伝えても伝わらない場合があります。デザイナーの意図を技術的な仕様に落とし込んでプログラマに伝える、そういう翻訳のような役割もTAの仕事の一つです。
A.L:私のチームでも同様の役割があります。たとえば、新しいシステムを導入する際、デザイナーは「最終的にこういう表現がしたい」というイメージは持っていますが、そのために何の機能が必要で、どういう仕組みにすべきか言語化できないことも少なくありません。一方でプログラマは、技術的な要件としてどんな情報が必要かはわかっていても、デザイナーが何を求めているのかは見えにくい。
TAはその中間に立って、両者の言葉を行き来します。デザイナーの要望を技術要件に変換してプログラマに伝え、できあがったものをデザイナーが使いやすいUIにしたり、マニュアルを作成する。たとえば、キャラやステージへのライティング設定でも、デザイナーが感覚的に扱える単位(ルーメンなど)でエンジンを操作できるよう、プログラマに機能の追加を提案することもあります。デザイナーにもプログラマにも、それぞれ伝わる言葉で話せることがTAに求められる能力だと感じています。
「みんなが早く帰れる」ことが、自分のやりがい
――どんな瞬間に、この仕事の面白さを感じますか。
C.A:私が頑張ることで、何十人ものデザイナーの作業効率が上がる。それがこの仕事の面白さだと思っています。自分が作ったツールのおかげでみんなが早く帰れている、そう感じられる瞬間がたまらなく嬉しいんです。地味に聞こえるかもしれませんが、1人の努力がこれだけ広い範囲に影響を与えられる仕事は、そう多くないと思っています。
デザイナーから「ここがうまく動かないんですけど、どうしたらいいですか」と相談が来て、解決策を伝えると「ありがとうございます」と言ってもらえる。そういう小さなやり取りの積み重ねが、日々のモチベーションになっています。
A.L:私には2つのやりがいがあります。1つは、デザイナーが求めていた表現をプログラミングで実現できた瞬間です。たとえばシェーダーを作る時は、デザイナーからコンセプトアートや、キャラや背景のモデルを受け取って、それをゲームの画面の中でどう再現するかを研究します。試行錯誤を重ねた末に完成したものをデザイナーに見せた時、「これだ」という反応をもらえる瞬間が、何よりも嬉しいです。
もう1つは、研究開発(R&D)のプロセス自体の面白さです。たとえば、現実世界の光の振る舞いには物理的な法則があります。その法則がゲームエンジンの中でどう計算され、どういう条件を設定すれば意図した映像表現に近づくのか。そういった関係性を自分で発見していく過程に、知的好奇心を満たす楽しさを感じています。
――C.Aさんはデザイナーとして働いていた頃と、やりがいはどのように変わりましたか。
C.A:デザイナーの頃は、自分が手がけたキャラクターがゲームの中で動いて、ユーザーに遊んでもらえることが達成感であり、直接ユーザーに届く喜びがありました。
TAになってからは、届く相手が変わりました。今は、一緒に働くデザイナーたちが楽になる、クオリティの高いものが作れるようになる、それが達成感につながっています。しかも、自分が工夫すればするほど、その影響がチーム全体に広がっていく。ゲームのクオリティを私の頑張り次第で上げられる。その手応えはデザイナー時代とはまた違う、TAならではの充実感だと感じています。
ホスピタリティと探求心こそがTAの素養
――TAになるには、どんな素質が必要だと思いますか。
C.A:適性がある人は、すでに日常の業務の中でちょっとしたツールを作っていると思います。Mayaのスクリプトエディタに数行書けば動くような小さなものでも、「これを自動化したら楽になるな」と気づいて実際に試してみる。そういう行動を自然にとれる人は、TAに向いているんじゃないかと思います。
デザイナー出身でもプログラマ出身でも、そういう経験が少しでもある人はスムーズに仕事に入れると思います。逆に言えば、プログラミングの経験がなくても、好奇心と「もっと楽にできるはず」という感覚を持っている人であれば、TAとして成長できると感じています。
A.L:デザインとプログラミング、どちらかに特化するのではなく、両方に興味を持ち続けられる人が向いていると思います。TAはその両方の言葉を理解している必要があるので、どちらかが苦手だと難しい部分も出てきます。ただ、どちらも「得意」である必要はなくて、どちらも「好き」であることの方が大事だと感じています。
あとは、調べることが苦にならない人。研究開発(R&D)の仕事では、正解がない問いに自分で向き合い続けることが求められます。資料を読んで、試して、また調べて、という繰り返しを楽しめる人は、この仕事に向いていると思います。
――セガのTAチームには、どんな人が多いですか。
C.A:一言で言うと、困っている人を放っておけない人が多いです。誰かが問題を抱えているのを見たら、自分から声をかけて一緒に解決しようとする。そういうホスピタリティがある人がTAには多いと感じています。
また、第1事業部のTAチームには、エフェクト・モーション・背景・キャラクターと、さまざまなパートを経験してきたデザイナー出身者が集まっています。自分が受けた依頼が専門外の内容であれば、その領域に詳しいチームメンバーに担当してもらうこともできる。専門性の異なる人たちが集まっているからこそ、どんな課題が来てもチームとして解決できる強さがあります。
A.L:私のチームは、最新技術への情熱がある人が多いです。新しい技術情報が出ると、すぐにチャットで共有して、みんなで一緒に調べ始める。GDC( Game Developers Conference)のセッションレポートを共有して議論することも日常的にあって、大学の研究室に近い雰囲気だと感じています。あまり経験したことのない文化で、セガに入って驚いたことの一つです。
自社エンジンがあるから、提案がゲームに届く。セガのTAならではのやりがい
――A.Lさんは、前の職場と比べてセガのTA環境で感じる違いはありますか。
A.L:最も大きな違いは、最先端技術に触れる機会の豊富さです。GDCをはじめとする国際的なカンファレンスへの参加や、他社との技術情報の交換など、外の世界と積極的につながりながら仕事ができる環境があります。以前はなかなか得られなかった情報や刺激が、ここには日常的にあります。
もう一つは、経験豊富な先輩から学べる環境です。セガには深い知見を持つ先輩が身近にたくさんいて、日常のコミュニケーションの中で日々多くのことを吸収できます。技術者として成長するためのサポート体制がこれほど充実しているのは、本当に恵まれている環境だと実感しています。
C.A:最新技術の話だと、ツール環境の面では、AIの活用が進んでいることを感じています。コードの生成にAIを使えるようになったことで、作業のスピードが上がりました。TAはゲーム本体に組み込むコードではなく、社内ツール用のコードを書くことがほとんどです。そのため、プログラマが生成AIの活用で抱えるような権利面での制約が少なく、AIとの親和性が高いと感じています。
――セガという会社の雰囲気はいかがですか。
C.A:良い意味で、一癖ある人が多いと思います。自分が面白いと思ったことをとことん突き詰めていった結果、気づいたら独自の専門性を持っている。そういう探求心の塊みたいな人が集まっている会社だと感じています。
働く環境という点では、子育てをしながら働きやすい仕組みが整っています。子どもの体調不良などで急に対応が必要になった時も、在宅勤務や早退への理解が職場にある。制度として整っているだけでなく、周囲がちゃんと理解してくれる文化があることが、長く働き続けられる理由の一つだと思っています。
A.L:私は、外国人にフレンドリーな環境が非常に嬉しかったです。正直なところ、最初は不安もありました。でも、実際に働いてみると、みんな親切で、日本語と英語のどちらでもコミュニケーションが取れる雰囲気があって、すぐに馴染むことができました。
業務の自由度が高いことも気に入っています。研究テーマを自分で提案できたり、興味のある技術を業務の中で探求できたりと、自律的に動ける環境が整っています。
スペックより、気質。困っている人を放っておけない人
――TAに興味を持っている方に、メッセージをお願いします。
C.A:デザイナーとして働いている方の中に、実は「TAの素養がある人」がたくさんいると思っています。業務の合間に小さなスクリプトを書いたことがある、同僚のために何かツールを作ってみたことがある。そういう経験が少しでもある方は、ぜひ一度話を聞きに来てほしいです。
TA仲間を増やしたいという気持ちが強くあります。TAという仕事の面白さをもっと多くの人に知ってもらいたいですし、チームとしてできることの幅を広げていきたい。TAの仕事に少しでも興味のある方は、ぜひ応募してください。
A.L:技術の最前線に触れながら、それをアーティストやチームに届けることに喜びを感じられる人には、とても合っている環境だと思います。学ぶことを苦にしない人、新しいことに出会うたびに「なぜそうなるのか」を調べずにいられない人にとって、セガのR&D環境は本当に恵まれた場所です。
デザインとプログラミング、その両方に情熱や興味を持っている方にこそ伝えたいです。その「どちらも知りたい」というその探求心が、TAという仕事では最大の武器になります。