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ジュガードという思想と、食の未来
「未来から逆算して今日を生きる」
そんな考え方が、“合理的な生き方”として定着している。
目標を立て、プランを描き、効率よく時間を配分し、無駄を省く。
企業も、教育も、人生設計すらも
「未来を実現するためのプロジェクト」
として捉えられる時代。
その考え方は確かに正しく、僕自身も多分にその価値観に支えられてきたひとりです。
でも最近、そんな「合理と戦略」の世界とは真逆とも言える、ある思想に深く惹かれています。
それが、「ジュガード(Jugaad)」という考え方でした。
ジュガードとは何か?
ジュガードとは、インドの庶民文化に根ざした、即興的・創造的な問題解決の哲学です。
簡単にいえば「今、手元にあるもので、どうにかする」知恵と工夫の精神です。
たとえば、
- 壊れた自転車の車輪を再利用して農業用機械を作る
- エンジンなしで動く乗り物を組み立ててしまう
- インフラがない中でも、日々の生活を回すために生まれた創造
といった即興的な工夫。
つまり、「ないものを嘆くのではなく、“あるもの”で何とかする」力なのです。
これは、フランス人類学者レヴィ=ストロースが提唱した「ブリコラージュ(=寄せ集めで創造する)」にも近い概念とも言うそうです。
ジュガードの出発点は「未来」ではなく「今」
この前、尊敬する友人モリソンからご紹介いただき、文化人類学者の小西広大先生と食事させていただく機会があり、ジュガードという概念の片鱗に触れる機会がありました。
理解の悪い僕のために多面的に説明いただきました。
その上で、ふと気づいたことがあります。
ジュガードは、僕たちが慣れ親しんでいる未来の理想像を描いてから逆算し「そのために今日とはどうあるべきか?」と考えるような思考ではなく、むしろ真逆。
「今日、この一日をどう豊かにできるか?」
という“今この瞬間こそ!”から始まる思考なのでは。
未来の成果のために今を犠牲にするのではなく、
今を愛し、今あるもので、今日を最高にすることにこそ価値を置く。
そこに、ジュガード的思考の出発点があるのであれば、これこそが現代に生きる私たちが身につけるべき重要な思考なのでは、という考えでした。
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↑小西先生の著書。帯がやばかった
”目的を追い求めてばかりいると、今という時間が手段になってしまう。
出会い損ねを繰り返してしまう。
やってきた出会いに驚き、その偶然を必然に変えていく。
世界との生成的な歩みを描いた快著。”
↑小西先生が話される回、とってもわかりやすく面白いです
食という営みと、ジュガード的創造の関係性
私は食の世界います。
そんな僕が強く感じたのは、
この考え方は「食の世界」においても、同じく本質的だということです。
たとえば、みんなが大好き日本酒。
日本酒は文化として洗練されていますが、
もともとの出発点は、「米が余ったからどうしよう」という、ただそれだけのことだったはずです。
「保存が効かないこの米を、何とか別の形で活かせないか?」
そう考えた末に、発酵という偶然と必然の交差点で生まれたのが、日本酒という発明。
この時点では、「日本酒を未来に残そう」とか、「グローバルに展開しよう」なんていう思考は一切ない。
“今日この一日”を豊かにするための創造的な工夫だった。
そしてそれが、結果として文化になり、産業になり、国のアイデンティティにまで昇華されたのです。
韓国のキムチも、イタリアのリゾットも、すべてジュガード的な“偶然と工夫”から生まれた食文化です。
完璧に未来から逆算された「ロスゼロ・無駄のない計画生産」では、こうした尊い偶然は起こり得ないのかもしれません。
むしろ「不完全さ」や「揺らぎ」を許容したからこそ生まれ得た
危うくも、美しい結果だと感じます。
「余白と揺らぎ」が創造を生む
もうひとつ注目すべきは、こうした創造は「余白と揺らぎ」から生まれているという点です。
「余った米」「使い切れない食材」「今日の天気」「今ある素材」
そういった“計画外”の事象に対して、
「今をより良くするために何ができるか?」
と考えるからこそ、創造が生まれる。
しかし現代の食産業はどうでしょうか?
- 余らないように設計し
- 無駄が出ないように生産し
- 毎回同じ品質を出すように標準化する
それはそれで短期的な視点で見る安定したサプライチェーンにおいては非常に重要です。
ですが、100年の単位で見た時の安定と、数年単位で見た時の安定が全く異なる事実を真っ直ぐ捉え、あえて余白と揺らぎを孕んだチェーンの確立が重要なんじゃないでしょうか。
そうした視点こそが、生産性、効率性以上に、「遊び」や「偶然」、「創造」が重んじられる空気を纏うように思います。
未来のために、今を失わない
当然、未来を意識しないわけではありません。the kindestはむしろ、子どもたちの感性や健康、そしてその先に続く社会に、文化を手渡していきたいと考えます。
でも、そのための「今日」ではなくあえて、「今が最高」そして「未来も美しい」
そんなバランスを実現する考えた方が、ずっと豊かで、優しく、創造的なんじゃないでしょうか。
僕たちの仕事は、戦略的であるべきです。
未来の構造を読み解き、仕組みを設計し、論理を持って進める。
でも同時に、“ジュガード的であること”を忘れてはいけないとも思います。
- 計画にない無駄、余白、偶然を受け入れること
- 「今を豊かにするために」目の前のものに向き合うこと
- 偶然や無駄の中にこそ創造のヒントがあると信じること
そうした態度が、私たちが理想とぼんやり想像する
「食」「文化」「人が豊かに自分らしく生きる未来」
につながっていく。
僕はそう信じています。
未来のために今ではなく、今という一日を、全力で愛し、創り、楽しむ。
その一日が、未来の文化になる。
そんな循環を、食を通じて生み出していけたら。
これこそが、今私がthe kindestで実現したい「思想」です。
- “共に悩む”という体験価値のデザインに挑戦する
- 商品開発とブランド体験をあえてごちゃっと混ぜる
- AI時代における“人にしかできない価値”を問う
- お客様と真っ直ぐ向き合える組織文化とチーム
the kindest というブランドは、子育てをしている親御さんの隣に立ち、
「あなたの選択は、きっと正しい」と伝えられるブランドでありたい。
もし、そんな未来を一緒につくってみたいと思ってくださった方がいたら、
ぜひ一度、MiLの採用ページをのぞいてみてください。
“何を選ぶか”ではなく、“悩み選ぶプロセスを共にする”。
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