解約ゼロ・シェア10%弱へ成長する「Jtas」。新機能開発で証明した、自ら現場に飛び込み仕様を削り出す「プロダクトリード」のリアル。
単なる客室清掃を効率化するシステムじゃない。
目指すのは、宿泊業のインフラとなるホテル OS の構築だ。
EDEYANS は「世界中の宿泊を支え、感動を生む。」をミッションに、ホテル客室清掃 DX プラットフォーム(AI SaaS)「Jtas」と客室清掃オペレーションという「テクノロジーとリアルの両輪」で挑むスタートアップです。
紙や電話のバックヤード業務をデジタルで一元化し「ホテルの OS」を目指す「Jtas」は、チャーン(解約)ゼロで国内シェア10%弱を達成。
4月、新機能「ルームカルテ」の爆速開発を主導したプロダクトリードの八坂さんら3名に、「現場の過酷なリアル」に自ら飛び込んで答えを見つけ出していく、独自の開発思想の舞台裏を聞きました。
目次
ハウスキーピング領域は最強のエントリープロダクト。客室データベースから仕掛ける「客室清掃 DX プラットフォーム」の全貌
プロダクトリードが現場で気づいた「ホスピタリティの裏にあるアナログで過酷な業務」を削る設計思想
「誰に聞いてもわからない」暗闇と、毎週の朝令暮改。3ヶ月の超高速開発で見えたリアル
仕様通りには使われない。現場で初めて知った「紙の名残」と、プロダクトリードに必要な適性
自分の名前で、代表作を創れ。連続的なプロダクトリードの打席に立つ仲間へ
ハウスキーピング領域は最強のエントリープロダクト。客室データベースから仕掛ける「客室清掃 DX プラットフォーム」の全貌
ーー ホテル客室清掃 DX プラットフォーム「Jtas」は、今どれくらい導入が進んでいるのでしょうか?
執行役員 兼「Jtas」PdM 舞原:
現在、導入数は約200ホテル、実際にシステムが稼働している客室数は7万室強、契約済みの導入控えも含めると8万室弱というところまで来ています。2022年のローンチ以来、ありがたいことにチャーンはゼロです。
国内の総客室数は約100万室なので、シェアとしては10%弱。
「もう10%もシェアがある」という手応えと「まだ90%も市場が残されている」という大きなポテンシャルの両方を実感できる、非常に面白い立ち位置にいます。
ーー そんな順調な「Jtas」の新機能として、4月に「ルームカルテ」がリリースされました。これはどういった機能なのですか?
CTO 北橋:
一言で言えば、部屋の備品や家具、過去の故障履歴といった「部屋の状態を一元管理するデータベース機能」です。
膨大な客室の情報をホテルのスタッフが覚えたり、最新の情報を管理するのは難しく、聞き取りを進めるとどのホテルでも課題に感じているといった状況でした。
舞原:
それが現場のヒアリングを重ねるうちに設備不良による「ゲストのクレームを減らしたい」というニーズや、設備管理の最適化といった本格的なバックヤード改革の構造へと話が発展していったんですよね。
ーー これまではどのように管理されていたのですか?
北橋:
実態はハウスキーパーの頭の中や、個人の Excel に記録されているだけで、ホテル全体にはリアルタイムで全く共有されていませんでした。
Excel だと誰がいつ更新したかもわからず、情報が完全に閉じていた点に大きな課題がありました。
そもそも、客室情報が管理できているホテルの方が少なかった。
ーー 外部から見ると、 EDEYANS は「客室清掃をやっている会社」あるいは「客室清掃システムを作っている会社」というイメージが強いと思います。そこからなぜ、ルームカルテまで手を広げる必要があったのでしょうか?
舞原:
僕らは「Jtas」を単なる SaaS ツールだとは思っていなくて、リアルな清掃オペレーションの強みとテクノロジーを融合させた、ホテルインフラとなる「ホテル客室清掃 DX プラットフォーム」だと定義しているんです。
ミッションである「世界中の宿泊を支え、感動を生む。」を果たすには、ホテルで働く方々が自分たちの顧客であるゲストのことと商品である客室のことを理解することがとても重要だと思っています。客室清掃領域の次なるステップとして、客室という商品のデータベース化を担うのが今回のルームカルテです。
北橋:
最終的には、ホテルのバックヤードがうまく回っていくことで業界全体の労働集約的な人手不足の課題を解決していけると考えています。バックヤードではスタッフが走っている現状を目の当たりにした時に、ここを問題解決すればゲスト体験も現場の人の負担も両方解決できると感じました。
なぜハウスキーピング領域が「最強のエントリープロダクト」なのかというと、客室清掃はホテルで毎日必ず発生し、顧客や客室に関するトランザクションデータが大量に動くバックヤード業務だからです。
客室清掃に関しては圧倒的 No.1 の解像度でプロダクトを出せているからこそ、ホテル全体のバックヤードを動かすプラットフォームへと拡張していける。今回のルームカルテは、客室・設備を管理するバックヤード業務の1つを解決する重要なステップなんです。
プロダクトリードが現場で気づいた「ホスピタリティの裏にあるアナログで過酷な業務」を削る設計思想
ーー ここからは、わずか3ヶ月でこのルームカルテを形にした、プロダクトリードの八坂さんにも話を伺いたいです。具体的には、客室のどのような情報を可視化しているのですか?
ルームカルテプロダクトリード 八坂:
メインとなるのは、部屋ごとにどんな家具、家電、備品が置いてあるか、過去にどんな故障や修繕の履歴があったのかという情報と、それに紐づくタスク管理機能です。
開発にあたって僕ら開発チームは「10本ノック」と称して10箇所のホテルにヒアリングをして回ったのですが、そこで分かったのは、現場ではホスピタリティの裏側でこれほどまでにアナログで過酷な業務が発生していたのか、という衝撃的なリアルでした。
ーー 実際に、現場ではどのような過酷な業務が起きていたのでしょうか?
八坂:
たとえば、あるホテルでゲストから「予約サイト(楽天トラベルやじゃらん、Booking.comなど)に載っている、あのオレンジのクッションがある部屋に泊まりたい」と要望があった時、どの部屋にそれがあるのかデータで管理されていなかったんです。
結果、スタッフの方が廊下を走って客室のドアを一個一個開けて確認して回る、という途方もないアナログなロスが生まれていました。
他にも「バスタブが気に入ったから、そのメーカーを教えてほしい」と聞かれても現場では誰も分からず答えに詰まってしまう、といった情報遮断の課題があらゆるホテルで頻発していたんです。
北橋:
「眺望」もその典型例ですね。
駐車場しか見えない部屋、綺麗な景色が見える部屋など、同じ「ツインルーム」でも窓からの景色はバラバラです。新人のフロントスタッフだとその部屋ごとのコンディションの差が分からず、アサイン(部屋割り)ミスが起きてしまう。
舞原:
そう。これまではフロントスタッフがその微細な部屋ごとの違いを把握できず、誰にどの部屋を割り当てるべきかの適切な判断に大きな負荷がかかっていました。
八坂さんがルームカルテで部屋の特性や状態を可視化してくれたことで、経験の浅いスタッフであっても、迷わず最適な部屋をアサインできる。ホスピタリティを支える裏側の「無駄な移動や負荷」をデータの力で削ぎ落とす設計思想に着地させてくれました。
八坂:
現場に足を運び、リアルなエピソードを拾い上げて解決策に昇華させる。これこそが EDEYANS のプロダクトリードに必要な動き方だと、この開発を通じて体感しましたね。
「誰に聞いてもわからない」暗闇と、毎週の朝令暮改。3ヶ月の超高速開発で見えたリアル
ーー プロダクトリードの八坂さんは、1月から福岡からのフルリモートで参画していますね。現場の複雑なドメイン知識をキャッチアップするのは大変ではなかったですか?
八坂:
正直、オンラインの画面越しだけで現場を理解するのは簡単ではありませんでした。
だからこそ遠慮は捨てて、社内メンバーや実際のお客様のスケジュールを捕まえては、ひたすら「いつ空いてますか!」と泥臭く聞き込みを続けました。知らない世界にグイグイ飛び込む行動量しかないなと、割り切ってやり続けましたね。
ーー 遠隔のハンデを圧倒的な行動量でカバーしたわけですね。ただ、1月ジョインで4月リリースということは、わずか3ヶ月の超高速開発です。何が一番の壁でしたか?
八坂:
いざ新しい機能を自分で考えようとしたとき、自分の中で現場の解像度が足りていなくて、答えがわからない瞬間が一番苦しかったです。
しかも EDEYANS としても手探りのプロダクトだったので、先週決めた仕様が、翌週には「やっぱり違う」と仕様が変わる。過去のスタートアップ経験でもここまでの激動はなかったです。自分自身がドメインを深く理解して主導権を握らないと、波に流されてしまうという危機感は常にありました。
ーー 昨日の正解が今日覆るような環境で、開発部長の北橋さんは手を差し伸べてくれたのですか?
北橋:
手取り足取り教えるような過保護なサポートはあえてしませんでしたね(笑)
舞原:
基本的には、任せると決めた以上は本人の裁量を尊重して、まずは自力で動いてもらうスタイルです。
もちろん本当に困った時はチーム全体で全力で手助けをします。ただ、最初から僕たちが正解を出し続けてしまうと、自立したプロダクトリードにはなれない。どんどん新しいプロダクトを立ち上げていきたいフェーズだからこそ、プロとして信頼して任せるという絶妙な距離感を意識しています。
八坂:
でも、その信頼があるからこそやりやすかったです。「指示を待ってから動く」のではなく、自分から主体的に情報をキャッチしにいけるエンジニアにとっては、これ以上なく動きやすくて成長できる環境だと思います。
仕様通りには使われない。現場で初めて知った「紙の名残」と、プロダクトリードに必要な適性
ーー 自立を促すための環境なのですね。先ほど「現場を知ることがすべて」というお話がありましたが、八坂さん自身も実際に客室清掃の現場に入られたそうですね。そこでの気づきを教えてください。
八坂:
自分が作った機能が、本来の設計とは全然違う意図で使われているのを目撃したときは衝撃を受けました。
たとえば、忘れ物管理のページに一括操作用のアクションボタンとしてチェックボックスを並べていたのですが、現場のスタッフの方は、登録されたデータと手元にある現物の忘れ物が合致しているかを確認するための「単なるマーカー代わり」として、一個一個にチェックを入れていたんです。
これって紙の台帳で運用していた時代にペンでマーカーを引いていた運用の名残なんですよね。実際に現場で使われている姿をこの目で見るまで、そんな使い方は想像もできませんでした。
現場のカルチャーや運用の流れを知らないと、なぜその使い方が発生しているのかすら理解できないなと痛感しました。
ーー だからこそ、エンジニア自らが現場に足を運ぶ必要があるわけですね。そうなると、EDEYANS が推進する「1人のエンジニアが仕様からデリバリーまでを丸ごと主導する体制」には、かなり独自の適性が求められそうですが、いかがですか?
北橋:
EDEYANS の開発チームには、以前、副業から参画して「忘れ物 AI 機能」を自ら立ち上げた西尾というエンジニアがいます。彼は整備された仕様書を待つのではなく、自分で仕様の骨子を考え、フルスタックに実装し、自ら現場へ足を運んで導入・改善までをすべて1人でやり切ったんです。
最初から完璧なプロダクトなんて作れないから、当然バグも出るし、ズレも生まれる。
でも彼は、実際のオペレーションが綺麗に回り出すまで徹底的に泥臭く伴走する「デリバリーの責任」を持っていました。
この「1人のエンジニアが現場と対話し、圧倒的な当事者意識を持ってプロダクトを形にするスタイル」が大きな成果を生んだからこそ、今回のルームカルテでも八坂さんにプロダクトリードをお任せしましたし、今後の EDEYANS における標準的な開発体制にしていこうと考えているんです。
八坂さんはまさにその適性を持った人でした。
技術的に難しい、とできない理由を並べる前に、まず「一旦受けて、ちょっとやってみる」。
このマインドを持った方に、EDEYANS はどんどん打席を任せていきたいと考えています。
自分の名前で、代表作を創れ。連続的なプロダクトリードの打席に立つ仲間へ
ーー 技術の高さだけでなく「やり切る覚悟」があるかどうかが境界線なのですね。八坂さんは、もともとホテル業界やホスピタリティの領域に興味があったのですか?
八坂:
正直、全く興味はありませんでした(笑)
でも、入ってみてすぐに面白さがわかりました。
やったことがない未知の領域に飛び込んで、知らない世界を解き明かしていく知的好奇心がある人なら、このドメインの複雑さは絶対にハマると思います。
ーー 客室清掃という言葉のイメージを超えて、エンジニアが EDEYANS でキャリアを積む最大の面白さは、どこにあると感じていますか?
北橋:
僕らは単に「客室清掃を効率化するシステム」を作っているという感覚はもうないんです。
見据えているのはホテルのバックヤードを変革する OS の構築。
自然と、エンジニアのキャリア観点で言えば、ビジョンの大きさ以上に「自分でプロダクトを持って、数億から十億円規模のビジネスインパクトを出す打席が目の前にある」という環境の方が、圧倒的に面白いと思っています。
これから、そんなチャンスのあるポジションがいくつも空いていきます。
舞原:
頼まれた仕様を実装しているだけだと、自分のキャリアにおいて「自分の名前でこのプロダクトを作った」とは胸を張って言えません。
でも、 EDEYANS のプロダクトリードなら、仕様決定から現場へのデリバリーまでを丸ごと主導できる。「これが俺の代表作だ」と言える打席が、いくらでも用意されています。
ーー それでは最後に、八坂さんがこの「ルームカルテ」というご自身の代表作を通じて、今後目指していきたい未来の景色を教えてください。
八坂:
今ちょうど客室データベースの基盤ができたので、まずは自分が一般のゲストとしてどこかのホテルに泊まりに行ったときに、あたりまえのようにルームカルテが裏側で使われているような状態にしたいですね。
「作ったものが世に出て、どこにでもあるインフラになっている」という確かな手応えを、このチームで掴みにいきたいです。
取材企画・協力 / 世界線株式会社