こんにちは。株式会社リアルアキバ・コミュニケーションズの倉光です。
今回は、エンタメ業界の仕事について、外から見ているとなかなか伝わりにくい部分を書いてみようと思います。
エンタメの仕事というと、
企画を考える。
イベントをつくる。
クリエイターと作品をつくる。
タレントをプロデュースする。
そんな華やかな部分をイメージする方が多いと思います。
もちろん、それも仕事です。
ただ、実際に長くこの業界で仕事をしていると、
エンタメの仕事って、8割くらい「調整」なんじゃないか。
と思うことがあります。
正確に8割を計算したわけではありません(笑)。
それくらい、何かを実現するために「人と人の間に立つ仕事」が多いということです。
面白い企画を考えただけでは、何も始まらない
例えば、
「このタレントと、この企業でイベントをやったら面白い」
という企画を思いついたとします。
アイデアとしては、一瞬で生まれるかもしれません。
でも、実現するためにはそこからが長い。
タレントのスケジュールは空いているのか。
会場は押さえられるのか。
予算はいくらなのか。
誰が制作するのか。
権利的に問題はないのか。
告知はいつからできるのか。
素材は誰が用意するのか。
当日の運営はどうするのか。
クライアントが実現したいことと、タレント側が大切にしたいことは一致しているのか。
一つずつ確認して、関係者と話して、条件を合わせていきます。
つまり、
「面白いことを思いつく仕事」と「面白いことを実現する仕事」は、かなり違います。
私は後者のほうが、圧倒的に時間がかかると思っています。
調整は「伝言ゲーム」ではない
調整という言葉を使うと、
「Aさんから聞いたことをBさんに伝える仕事」
のように思われることがあります。
でも、それだけなら調整役は必要ありません。
私が考える調整は、
それぞれの立場を理解して、実現できる形に変換すること
です。
例えば、クリエイターが「もっと時間が欲しい」と言っている。
一方で、クライアントには絶対に動かせない公開日がある。
このとき、
「クリエイターが時間が欲しいと言っています」
とクライアントに伝えるだけでは、仕事は前に進みません。
なぜ時間が必要なのか。
どの工程なら短縮できるのか。
何日あれば品質を担保できるのか。
公開日を変えられないなら、制作内容をどこまで調整できるのか。
それぞれの事情を整理して、
「では、この形ならできます」
という着地点をつくる。
これが調整する仕事だと思っています。
全員の希望を叶えることが「良い調整」ではない
プロジェクトには、いろいろな立場の人がいます。
クライアント。
クリエイター。
タレント。
制作スタッフ。
宣伝担当。
営業担当。
そして、その先にはファンやお客様がいます。
当然、全員が同じことを考えているわけではありません。
予算を抑えたい人もいれば、クオリティを上げたい人もいる。
早く公開したい人もいれば、もっと制作期間が欲しい人もいる。
ここで全員の希望を100%叶えようとすると、ほとんどの場合プロジェクトは成立しません。
だから必要なのは、
「何を一番大切にするプロジェクトなのか」を決めること。
だと思っています。
絶対に守るものは何なのか。
逆に、調整できるものは何なのか。
そこを整理して、できるだけ多くの人が納得できる着地点を探します。
調整とは「全員にYESと言う仕事」ではありません。
ときには、
「今回はここを優先します」
「これはできません」
と言わなければならないこともあります。
「できません」で終わらせない
ただ、私は仕事で「できません」だけで終わらせないことを大切にしています。
例えば、
「このスケジュールではできません」
で終わるのではなく、
「この内容のままでは難しいですが、ここを変更すればできます」
と伝える。
「この予算ではできません」
ではなく、
「この部分を削れば、この予算で実現できます」
と考える。
100点の形では実現できなくても、80点なら実現できるかもしれない。
別の方法なら、むしろ最初の案より面白くなるかもしれない。
できない理由を説明するだけではなく、できる方法を探す。
これは、調整する人にとって大切な能力だと思っています。
連絡が早いだけでも、プロジェクトはかなり救われる
前回、「仕事ができる人ほど確認が早い」という話を書きましたが、調整の仕事でも同じです。
返事が遅れる。
確認が止まる。
判断が止まる。
それだけで、後ろにいる何人もの仕事が止まります。
逆に、
「今確認しています。明日の午前中までに回答します」
という一言があるだけでも、相手は次の予定を組めます。
調整が上手な人は、必ずしもその場ですべての答えを持っているわけではありません。
「いつ答えが出るのか」を相手に伝えられる人です。
これは地味ですが、仕事ではかなり重要です。
「誰が悪いか」より「どうすれば進むか」
複数の会社やスタッフが関わるプロジェクトでは、認識のズレが起きることもあります。
「聞いていません」
「そういう認識ではありませんでした」
「そちらがやると思っていました」
こういうことは、残念ながら起きます。
そのとき、もちろん原因を確認することは必要です。
でも、プロジェクトの途中で一番最初に考えるべきことは、
「誰が悪いのか」ではなく、「ここからどうすれば間に合うのか」
だと思っています。
責任の整理や再発防止は、そのあとでもできます。
まず目の前のプロジェクトを成立させる。
これはイベントなど、絶対に本番日を動かせない仕事では特に重要です。
調整が上手な人は「相手の事情」を想像できる
調整力というと、話が上手な人をイメージするかもしれません。
私は少し違うと思っています。
大切なのは、
相手の立場を想像できること。
クライアントにはクライアントの事情があります。
クリエイターにはクリエイターの事情があります。
タレントにも、現場スタッフにも事情があります。
自分の都合だけを押し付ければ、一度は仕事が進むかもしれません。
でも、それを続けていると長く一緒に仕事をすることはできません。
「この人はいま何に困っているんだろう」
「何を守りたいんだろう」
「どういう提案なら受け入れやすいだろう」
そこまで考えて話せる人は、調整が上手いと思います。
調整力は、エンタメ業界でかなり強い武器になる
採用面接などで、
「エンタメ業界で働くためには、何か特別なスキルが必要ですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん、専門的なスキルは武器になります。
デザインができる。
映像が作れる。
文章が書ける。
数字に強い。
どれも素晴らしい能力です。
でも、それと同じくらい、
人の話を聞ける。
情報を整理できる。
確認ができる。
代替案を出せる。
必要な人を巻き込める。
こういう力も、エンタメ業界では非常に重要です。
なぜなら、エンタメは一人では作れないからです。
多くの人の力を借りて、一つのものを形にしていく。
だから私は、
「人と人の間に立って、物事を前に進められる人」
は、どんなプロジェクトでも必要とされると思っています。
華やかな仕事の裏側には、地味な調整がある
イベントが無事に終わる。
作品が公開される。
広告が世の中に出る。
ファンの方が楽しんでくれる。
完成したものだけを見ると、その裏側に何百通のメールやチャットがあって、何十回の確認や修正があったのかは見えません。
それでいいと思っています。
裏側の苦労をお客様に感じさせず、純粋に楽しんでもらえたなら、それが一番です。
ただ、これからエンタメ業界で働きたいと思っている方には、知っておいてほしいことがあります。
エンタメの仕事は、
「面白いことを考える仕事」であると同時に、
「面白いことが実現できるように、人と人の間をつなぐ仕事」
でもあります。
企画力だけでは、企画は実現しません。
制作力だけでも、作品は世の中に届きません。
いろいろな人の力をつなぎ、最後まで形にする。
少し大げさかもしれませんが、私はそれがエンタメの仕事の「8割」くらいを占めているのではないかと思っています。