心の不調に関する話題を目にする機会は、この数年で確実に増えました。
ニュースや統計だけでなく、身近な人の体験談として耳にすることも珍しくありません。以前はどこか遠い出来事のように感じていたテーマが、
いまは「誰にとっても起こり得ること」として語られるようになっています。
この状況を考えるとき、
私は単に個人の体質や性格の問題として片づけることはできないと感じています。
もちろん個人差はありますが、
それだけでは説明がつかない広がり方をしているからです。
心の不調の増加は、個人の弱さではなく、
社会構造の変化と深く結びついているのではないか。
そう考えるようになりました。
たとえば、働き方の変化があります。
リモートワークやオンラインツールの普及によって、
場所や時間に縛られない働き方が可能になりました。
通勤時間が減り、柔軟なスケジュールを組めるようになったことは、
間違いなく前進です。
一方で、仕事と私生活の境界が曖昧になったという声も多く聞きます。
自宅が職場になり、常に通知が届く環境の中で、
「完全にオフになる時間」を意識的につくらなければならなくなりました。
便利さと引き換えに、
頭のどこかが常に仕事とつながっている感覚を持ち続ける人も増えています。
この小さな緊張状態の積み重ねは、想像以上にエネルギーを消耗させます。
情報環境の変化も見逃せません。
私たちは日々、膨大な量のニュースやSNS、メッセージに触れています。
必要な情報にすぐアクセスできるのは大きなメリットです。
しかし同時に、刺激の量そのものが増え続けています。
強いストレスだけでなく、弱い刺激が長く続くことでも人は疲れます。
「休んでいるつもりでも、脳が休まっていない状態」が慢性化していること。
これが今の社会で静かに起きていることの一つだと思います。
さらに、将来の見通しの立てにくさも大きな要因です。
選択肢は増えました。働き方も、生き方も、多様になりました。そ
れ自体は歓迎すべき変化です。
ただ、「自分で決めなければならないこと」が増えたことも事実です。
正解が見えない中で、常に判断を重ねる。
選べる自由は可能性であると同時に、責任でもあります。
この見えないプレッシャーが、心に負荷をかけている側面は小さくないと感じています。
こうした変化は、どれも社会の進歩の中で生まれたものです。
だから単純に元に戻すことはできませんし、戻るべきでもないと思います。
では、私たちは何と向き合うべきなのでしょうか。
私は、環境が変わったのなら、支え方や仕組みも同じように進化させる必要がある
と考えています。
以前と同じ前提のまま「気の持ちよう」で片づけてしまうのではなく、
今の社会に合った支援の形を模索していくこと。
それが求められているのではないでしょうか。
心の不調が増えているという現実は、誰か特定の人の問題ではありません。
特別な人だけが抱える課題でもありません。
これは社会全体で共有すべきテーマであり、構造的に捉えるべき課題です。
採用という立場で多くの方とお話しする中でも、
「頑張りたい気持ちはあるけれど、余白がない」という声を耳にすることがあります。
能力や意欲の問題ではなく、環境とのかみ合わせの問題。
そうした背景を理解することなしに、
個人だけに努力を求め続けるのは違うのではないか、と感じる場面が増えました。
社会が変わり続ける以上、心にかかる負荷のかたちも変わり続けます。
メンタル不調が増えているのは、「人が弱くなった」からではなく、
「社会の前提が大きく変わった」からではないでしょうか。
だからこそ必要なのは、個人に適応を求め続けることではなく、
変わった前提に合わせて、支え方や医療の仕組みそのものを見直していくこと
だと私たちは考えています。
精神科医療や心のケアも、今の生活構造に合った形へと進化していく必要があります。
株式会社ココフィーは、
社会に人を合わせるのではなく、
社会の変化に寄り添う支援のあり方をつくる側でありたいと思っています。
それが、これからの時代における私たちの役割の一つだと感じています