こんにちは。
日本一ワクワクする会社、インバウンドホールディングスの山崎です。
本日は、「施設立ち上げ」という宿泊事業の入り口づくりの話をします。
新しいホテルや民泊がオープンする日。
きれいに整った部屋、公開された予約ページ、最初のゲスト。
華やかに見えるその裏側には、数え切れない準備があります。
物件の宿泊事業化、許認可、家具や家電、消防や安全面、撮影、掲載文、料金、清掃、問い合わせ対応、鍵の受け渡し。どれか一つが遅れれば、予定日にリリースできません。
公開できても、情報が不十分なら予約が入らず、現場の導線が悪ければトラブルが増えます。
社内研修では、立ち上げチームを「収益の起点」と表現しています。
運営が始まってから頑張る前に、売れる状態、守れる状態、改善できる状態をつくる。
施設の未来は、オープン前の設計で大きく変わるからです。
立ち上げは、家具や備品を並べる仕事ではない
立ち上げという言葉から、備品をそろえ、写真を撮る仕事を想像するかもしれません。
実際には、オーナーが実現したいこと、物件の制約、地域の需要、ゲスト像、運営コストをつなげるプロジェクトです。
誰に泊まってほしいのか。家族か、グループか、長期滞在か。どんな価格帯を狙うのか。競合と何が違うのか。清掃やリネンは、予約が増えても回るのか。
設備トラブルが起きたとき、誰が対応するのか。
非常に重要な戦略的にも重要なポジションです。
これらを考えず、見た目だけ整えても、開業後に無理が出ます。
立ち上げチームは、オーナーの希望を聞くだけでなく、収益と運営の現実を伝えます。
時には、やりたいことをそのまま実行せず、別の方法を提案する必要があります。
調整役ではなく、施設という事業の最初の設計者です。
五つの工程を、一つの物語として見る
社内研修では、立ち上げを大きく五つの流れで整理しています。
最初は、営業からの引継ぎと計画。契約内容、物件情報、オーナーの目的、開業希望日を確認し、必要な工程と担当を決めます。
次に、許認可。行政、消防、建築などの条件を確認し、不足があれば早い段階で修正します。ここが遅れると、その後の準備ができても販売できません。
三つ目は、現場のセットアップ。家具、家電、備品、鍵、ネットワーク、案内表示を整え、ゲストと運営者の両方が使える状態へします。
四つ目は、運営マニュアル。清掃、問い合わせ、緊急対応、設備、近隣配慮など、開業後に迷わないための判断基準をつくります。
最後は、OTAへの掲載と公開。写真、文章、設備情報、料金、キャンセル条件を確認し、予約を受けられる状態へします。
これらは別々の作業ではありません。
狙うゲストが変われば、備品も写真も料金も変わります。
設備の制約は案内文や緊急対応へ影響します。一つの判断が、後工程へどう響くかを見る力が必要です。
開業日を守るだけでは、成功ではない
プロジェクトでは、予定日に公開できたかが分かりやすい目標になります。
しかし、オープン直後から問い合わせが殺到し、清掃が回らず、価格が市場と合わないなら、立ち上げは完了していません。
本当に見るべきなのは、予約できるか、現場が守れるか、ゲストが迷わないか、
オーナーへ説明できるか、改善に必要なデータが残るかです。
開業後の最初の数週間は、設計した仮説を検証する期間です。
どの写真が見られているか、どんな問い合わせが来るか、想定外の使われ方がないか、
清掃時間は現実的か。運営チームから学び、必要ならすぐ直します。
立ち上げ担当が「自分の仕事は公開まで」と線を引かず、最初の結果まで見ることで、
次の施設の精度も上がります。
若手でも、プロジェクト全体を見る経験ができる
大企業では、仕事が細かく分かれ、若手は一工程だけを担当することがあります。
立ち上げの面白さは、小さな担当から始めても、施設全体とのつながりが見えることです。
たとえば備品手配を担当するなら、単に商品を注文するのではありません。
なぜ必要か、何人のゲストが使うか、補充はどうするか、壊れたときに交換できるか、写真で魅力が伝わるかを考えます。
進行管理を担当するなら、期限を一覧にするだけでなく、遅れたときに何へ影響するかを判断します。許認可の確認が一週間遅れたら、撮影や公開の順番をどう変えるか。
代替案はあるか。関係者へいつ伝えるか。
自分の担当を越えて、プロジェクトの目的から判断する。この経験は、新規事業、店舗開発、システム導入など、他の仕事にも持ち運べます。
「何も起きない」をつくる高度な仕事
立ち上げが上手くいくと、開業日は静かです。
鍵が開く。Wi-Fiにつながる。ゲストが迷わず入室する。清掃が予定どおり終わる。
問い合わせに必要な情報がそろっている。
派手なトラブル対応がないため、準備の価値は見えにくいかもしれません。
しかし、「何も起きない」は偶然ではなく、起こり得る問題を先に考え、つぶした結果です。
最悪の場合を想定し、チェックする。誰かの記憶に頼らず、手順へする。
現場で実際に動き、机上の計画との違いを見つける。
問題が起きてからヒーローになるより、問題が起きにくい構造をつくる人を評価したい。それが、事業を長く強くします。
意見がぶつかるところに、価値がある
オーナーは、施設の個性や投資効果を大切にします。デザイナーは、美しさを守りたい。清掃チームは、毎日回せる導線を考える。ゲスト対応は、説明しやすさを求める。
収益担当は、販売しやすい商品にしたい。
正解が一つではないから、意見がぶつかります。
立ち上げ担当は、全員を単に納得させるのではなく、施設の目的と制約へ戻します。
何を最優先するか。どのリスクを受け入れ、何を守るか。決定した理由を残し、
後から検証できるようにする。
調整力とは、波風を立てないことではありません。
必要な論点を表に出し、期限までに決める力です。
入社後は、小さな責任から始める
未経験で入社した人に、いきなり一棟すべてを任せることはしません。
まずは、既存のチェックリストを使い、先輩と一緒に現場を確認する。次に、備品、写真、マニュアルなど一つの領域を持ち、期限と品質へ責任を持つ。
そこで問題を早く共有し、関係者を動かす経験を積みます。
その後、小規模施設の進行、複数領域の統合、オーナーとの打ち合わせへ範囲を広げる。成果だけでなく、情報共有、判断、振り返りの質を見ながら権限を渡します。
経験者には、過去の方法をそのまま当てはめるのではなく、私たちの運営データや現場の声を使い、立ち上げの型自体を改善してほしいと思います。
立ち上げ経験が、事業責任者への土台になる
立ち上げでは、顧客、収益、現場、人、期限、リスクを同時に見ます。
一つの施設を成功させる力がつけば、複数施設のポートフォリオ、ホテル開発、
業務改善、新規事業へ進む土台になります。
何もないところから計画をつくり、関係者を集め、決め、実行し、結果を検証する。
これは事業づくりそのものです。
完成した環境で、決められた仕事を行うより、仕組みがないところからつくりたい人。
異なる専門家の間へ入り、全体を前へ進めたい人。
目立つ瞬間より、成功を支える準備に面白さを感じる人。
そんな人にとって、立ち上げチームは、単なる開業準備の部署ではありません。
ゲストの最初の期待、オーナーの最初の売上、現場の最初の一日をつくる、収益の起点です。
開業後の一か月までを、立ち上げに含めたい
鍵を渡し、OTAを公開した日をゴールにすると、設計の答え合わせができません。
最初の一か月は、予約の入り方、問い合わせ、清掃時間、設備の使われ方、レビューを短い周期で確認します。想定より家族利用が多ければ案内や備品を見直す。チェックインで迷う人が続けば、地図や表示を変える。価格と予約速度が合わなければ、収益担当と仮説を修正する。
立ち上げ担当が運営チームへ仕事を投げるのではなく、仮説と判断理由を引き継ぎ、実際の結果から学ぶ。運営側も、起きたことを立ち上げへ戻す。
この往復が、次の施設の開業速度と品質を上げます。
候補者に見てほしい、仕事の厳しさ
立ち上げには、予定どおりに進まない日があります。納品が遅れる。行政確認に時間がかかる。現場で図面と違うことが分かる。複数の関係者から、同時に返事を求められる。
ワクワクする新規プロジェクトである一方、細かな確認と地道な連絡の連続です。曖昧なまま進めれば、開業直前に大きな問題になります。
求めるのは、何でも一人で解決する強さではありません。分からないことを早く言い、
必要な人を巻き込み、判断が必要な論点を整理できること。プレッシャーがあるときほど、事実と期限を正直に共有できることです。
完成した施設だけでなく、そこへ至る混乱も含めて楽しめる人には、毎回違う学びがあります。
自分が立ち上げた施設の初めてのお客様のレビューは本当にドキドキですよ♪