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人事の仕事とはなんなのか?

こんにちは。株式会社Colereの共同創業者の中村です。

僕の人事の仕事との出会いは、新卒で入った会社の配属です。特に人事を希望したわけではなく、自分を活かしてもらえる場所だったらどこでも頑張ります、と微妙に生意気なことを言っていたら配属されたのでした。

人事の仕事との出会い

最初の3ヶ月は新卒採用のお手伝いでしたが、本配属されたのは人事企画という部署。仕事はその名の通り人事関連の企画をする所で、人事制度の策定を始め、等級・報酬制度の運用、その延長として組織別の生産性管理などを行うことが主な仕事でした。比較的異動のペースが速い会社だったので先輩や上司がどんどん入れ替わっていく中で、僕はそこに7年ほど在籍することになります。

その頃の2000年代中盤から後半にかけて、会社の課題はいかに紙の情報誌の会社からネットの会社に変わっていくかということでした。当然僕の仕事もその文脈に基づいたものとなります。そんな中で、5年目から6年目にかけて担当させてもらった仕事が、人事という仕事の深みに触れる機会となったのでした。

その仕事は上記のビジネス上の変革に向けて、今までの成功体験が通用しないフィールドで改めて新しい価値の創造に向かう経営の決意を伝え、会社も社員も自己革新を進めていく必要性を説いた、大規模な人事制度改訂でした。

僕はその制度改定案の企画、経営会議の資料作成、全社広報資料の作成などを任せていただき、当時の人事執行役員の方の元で、1年半にわたって2週に1度は経営会議に起案し続けました。

当時の僕の力量からすると随分背伸びをした仕事を任せてもらっていて、どの場面も思い出深いのですが、中でも退職金制度の改定が大きな転機となりました。

人事制度改訂が及ぼす影響

当時会社には一定期間勤めたら、その後いつ辞めても直近の年収1年分を支給する「フロンティア制度」というものがありました。僕の企画は、その制度に追加して、「35歳から3年毎の年齢(35歳、38歳、41歳・・・)で卒業する場合に、30代は750万、40代以降は1500万の加算金を払う」というものでした。

その名も、「ニューフロンティア制度」。3年に一度、自身のキャリアをしっかり考える節目を提供するということと、特殊な権利発生条件のために退職給付債務の引き当てを行わなくても良いという意味で、機能としてはなかなか良いものだったと思っています。

そうやって機能を考えていくという所までは順調だったのですが、自分の企画は社員本人だけでなく、そのご家族を含めたとても多くの人に影響があるんだということを考え始めてから、僕は立ち止まってしまいました。

ビジネス環境の変化に対応する必要性、制度の機能性といった点は分かる、でもそれだけではこの制度が導入される理由や意味を説明することにはならないのではないか。

何日も何日も堂々巡りの日が続きました。

“人事ポリシー”と向き合う

そんな時にずっと向き合い続けたのが、当時の人事ポリシーでした。

「価値の源泉は人」ということが真ん中に謳われ、会社から個人に対して「成長機会を提供し続ける」、逆に個人から会社に対して「成長し続ける」ことを約束し合うというものです。

そして徐々に自分の中である想いが固まっていきます。

人に期待され、その期待に応えて成長する、そうやって働くことを楽しみ、人生を豊かなものにしていく。

それが、自分が好きな会社がこれまで守ってきた人や労働についての哲学ではないか。

徐々に頭の霧が晴れ、思考が進んでいきます。

何のため・誰のための施策なのか

この制度は会社と個人をできる限り対等な関係で結ぶためのもの。社員が優秀であればあるほど、会社は今まで以上に魅力的な機会を提供する努力が必要になる。逆に社員も会社からの期待に応えるために進化し続ける必要がある。

そうやって関係性のレベルを上げていくための施策なのだと考えるようになりました。

一方で、様々な理由でどうしても組織の中で次の活躍機会を提供できない人も生まれる。でもそれは単に一つの組織の中での競争の結果に過ぎない。その人達には別の場所でまた機会を得て、期待と成長と楽しさに溢れた豊かな人生を歩んでほしい。

折しも、派遣社員の正社員化を促す法案が成立するなど、雇用を守るという風潮が強まっていた時期。内外から様々な声が上がることが予想されるし、そもそも自分の都合の良い独りよがりかもしれない。

それでも、自分が正しいと思うポリシーに基づいた制度を提案するべきだと決めて、経営会議に持ち込んだのでした。

結果は無事に承認され、翌年制度として施行されました。社員の皆さんにも、前向きに新しい人生のフェーズを自ら創っていくための機会提供と理解いただけたと思います。

辿り着いた、「人事の仕事」

この体験から、理屈を超えてそれ以上立ち返ることのない“ポリシー”という形で、会社として選んだ人や組織の姿を形にするのが人事の仕事なのだと思うようになりました。

そしてそれが、今Colereのコンサルティングの中で“人事ポリシー”を見つけることから伴走していくようにしている理由です。

自分達がどんな信念や哲学をもった組織なのか、経営者が旗を立てて、その旗の下に集まった仲間と信頼で結ばれた組織を創っていく。

そんな会社を一つでも多く生み出したいと思っています。


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