「地域からハッピーシナリオを共に」をスローガンに、全国各地で地域に根ざした事業づくりに取り組むNEWLOCAL。
連載「We are NEWLOCALs」は、NEWLOCALに関わる一人ひとりに焦点をあて、その歩みや考えをたどっていくインタビューシリーズです。
今回話を聞いたのは、丹後・野沢温泉・小松、それぞれの拠点でPM(プロジェクトマネージャー)を務める3名。前編では、それぞれがPMという役割にたどり着くまでの道のりや、「PMとはどんな仕事なのか?」という輪郭をひもといてきました。
後編では、PM同士だからこそ気になるお互いの仕事観や、日々の現場でどんな力が鍛えられているのか、そしてこの先どんな未来を描いているのかについて、話を聞いていきます。
筒井 章太
丹後の宿「mizuya」PM。2025年より京都丹後企画にジョイン。宿の運営を担いながら、地域の人やプレイヤーを巻き込み、“まちの編集長”として幅広く活動を展開している。
松本 健太郎
野沢温泉のゲストハウス「野沢温泉ロッヂ」PM。2025年より野沢温泉企画にジョイン。宿の現場を率いるかたわら、地域の「同級会」にも参加するなど、土地の文化に深く関わりながら事業に取り組んでいる。
寺田 晴菜(HALELU)
小松の宿「komado」PM。歌舞伎町のバーで店長を務めたのち、2025年に小松企画へジョイン。接客・現場経験を活かしながら、立ち上げ期の宿を現場から支えている。
目次
- はだかのままで、まちに入る
- 絶賛、筋トレ中。PMの仕事で鍛えられる力
- PMが描く、地域と事業のこれから
- 面白そうなら、飛び込めばいい。
はだかのままで、まちに入る
筒井 自分はこっちに来て4年目なんですけど、最初は知り合いもいなくて、とにかく飲み歩いてたんですよ。お二人は、今どんなふうに馴染んでいってるんですか?
健太郎 僕も飲みに行きますね。昼って、誰しも固いと思うんですよね。飲み屋の方がフラットに話せる気がします。
HALELU たしかに。何かを背負っている状態じゃなくて出会える場所って、飲み屋になりがちですよね。
筒井 お酒が飲めることが偉いわけじゃないけど、ひとつのコミュニケーションツールにはなっていますよね。飲み会だけじゃなく、肩書きを背負わずにいられる場所に身を置くことが大事なのかも。

HALELU そういう意味でいうと、仕事モードがオフになって、「ただの住人」でいられる瞬間ってありますか?
健太郎 僕の場合はひとつあって。ありがたいことに、同級会のメンバーがすごくウェルカムなんです。2人は村民で、僕ともう1人が移住者なんですけど、4人でよく飲みに行ったりしています。その時間はもう、普通に友だちっていう感じですね。
HALELU 同級会って、すべての学年にあるんですか?
健太郎 そうです。全部の学年に名前がついていて。僕らの学年は「弐喜舞(しきぶ)会」というんですが、それも同級会のメンバーで決めたそうです。道祖神祭りには、同級会の名前が入ったつなぎを着ないと出られなくて、それをもらえるかどうかは、同級会のメンバーに認めてもらえるかどうかで決まるんです。

国の重要無形民俗文化財に指定された日本三大火祭りの一つ、「道祖神祭り」
筒井 宮津もかなり内輪なコミュニティなんですよ。野沢温泉もそうだと思うんですが、歴史やコミュニティが濃い場所ほど排他的な面もある。でもそれは悪い意味ではなくて、そういう場所だからこそ歴史や文化が残っているんだと思います。
そんなまちに受け入れてもらえているのは、フラットさと素直さ、そして「このまちが好きです」「面白いことやりたいんです」っていうオーラが出ているからなんじゃないかなと思うんですよね。
ーHALELUさんは、歌舞伎町で活動されていたところから小松に来られたんですよね。かなり環境も違うと思うんですが、どうやって馴染んでいったんですか?
HALELU もう、「どう馴染むか」とか考えない(笑)。やっぱり、戦略的な感じって出るじゃないですか。そういういやらしさって、人はちゃんと見ていると思うんです。
本当に素直な気持ちで、気取らず、着飾らない。はだかでいるというか。そうじゃないと、こちらが聞きたいことも、相手は話してくれないと思います。

絶賛、筋トレ中。PMの仕事で鍛えられる力
ーPMの仕事を通して、「成長したな」と感じる部分はありますか?
HALELU いやもう、絶賛筋トレ中ですね。立ち上げのタイミングで入ったので、最初の1週間で宿、次の1週間でカフェ、みたいな感じで、とにかく爆速で仕上げていったんです。
そのときは大変だったんですけど、自分がこれまでやってきたことを使いながらなんとか回していました。でも、やっぱり飲食店の運営とは畑が違う感覚があって。
たとえばPC作業とか、会議とか、いわゆる「普通の社会人」みたいなところは、あまり得意じゃなかったんですよね(笑)。なので、今は飲食の現場とはまた違う筋トレをしている感覚です。
周りが本当に優秀な人たちばかりで、聞けば前向きに教えてくれるので、本当に贅沢な環境だなと思っています。その中で、ちょっとずつ盗み見ながらやっている感じですね。

健太郎 僕もまだ2ヶ月ちょっとなので、絶賛筋トレ中なんですけど、特に「実行力」は鍛えられているなと感じています。
前職でももちろん実行力は必要だったんですが、会社の規模も大きいので、極端に言えば自分の営業成績が少し落ちても、すぐに何かが変わるわけではなかったんですよね。
でも今は、自分が宿全体の売上の責任を持っている。だからこそ、やりたいと思ったことを、ちゃんと現場で実行できる形まで落とし込む力が鍛えられているなと思います。

筒井 自分がこの半年で特に成長したと感じているのは、チームづくりの部分ですね。mizuyaでは雇用契約を結んでいるスタッフが10人ほどいて、月に数回だけ入る人も含めて、本当にいろんな人が関わってくれています。
これまで自分はプレイヤー気質で、どちらかというと価値観の近い人たちと一緒に事業をやることが多かったんです。でもホテルって、それだけでは成り立たないんですよね。
清掃でコツコツ支えてくれる人もいれば、地元の高校生もいるし、ふらっと移住してきた人もいる。そういう多様なメンバーと同じビジョンを見ながら、mizuyaというホテルを一緒につくっています。
自分ひとりでは成立しない仕事なので、任せて、信じて、預ける。その中で「みんなでこのホテルをつくっている」という感覚が生まれてきました。
今はチームのみんなのことが本当に好きですし、誇りにも思っています。そういうチームをつくることにやりがいを感じていますね。

PMが描く、地域と事業のこれから
ーここまでPMの仕事について伺ってきましたが、この先についても聞かせてください。地域の未来や宿のこれから、そしてご自身のキャリアについて、どのように考えていますか?
筒井 前提として、「これをやりたい」というのがあるタイプではなくて。そのとき夢中になれること、ワクワクすることに本気で挑戦してきたら、振り返ったときに一本の線になっている、という感覚なんです。
「一生青春していたい」というのがテーマなので、泣いたり笑ったりしながら命を燃やして生きていけるか。それが自分にとっての仕事や人生の意味だと思っています。
最近強く感じているのは、地域って何もないようでいて、実は余白と資源だらけだということです。ここにしかないものを掛け合わせながら、住む人にとっても訪れる人にとっても楽しいまちをつくっていきたい。
もう一つは観光のあり方です。地域の魅力は、そこに暮らしている人の思いや守られてきた文化にこそある。だからこそ、それを消費するのではなく、守っていくような観光のあり方を、ホテルからつくっていきたいと考えています。
そして、京都丹後企画という会社を本気で大きくして、まちにしっかり経済を生む存在にしていきたい。その中で個人としても、心からワクワクできる事業に挑戦し続けていきたい。いつかは地元の北海道にも恩返しができたらと思っています。

健太郎 キャリアという意味では、まだ明確に描けているわけではありません。ただ直近で言えば、野沢温泉ロッヂのグリーンシーズンをどう盛り上げるか。そこに120%コミットしたいと思っています。
通年雇用を生むためにも重要なテーマですし、数年で解決できるような簡単な課題ではないと思っているので、まずはそこにしっかり向き合いたいですね。その挑戦を続ける中で、その先のキャリアも見えてくるんじゃないかなと思っています。
ロッヂとしては、ここを入口に野沢温泉の魅力を知ってもらえるような拠点になれたらいいなと思っています。そこから北信州など周辺地域にも人の流れが広がっていく、そんな循環を生み出していきたいです。
会社としても、地域の課題に向き合いながら事業を育てていきたいと思っています。たとえば高齢の方にとって雪おろしが大きな負担になっているという話もあるので、そうした困りごとを解決しながら、事業としても成長していける形を探っていきたいですね。

HALELU 私は神奈川で生まれて東京にも住んできましたが、どこか一つの場所をホームとして生きてきた感覚はあまりなくて。だからこそ少し客観的な立場から、いろんな地域に関われるのかなとも思っています。
komadoに関しては「こうなってほしい」という明確な理想があるわけではないんですが、このまちの中で、人をワクワクさせる存在であり続けてほしいなと思っています。
実際にこのまちでいろんな人と出会い、イベントをやったりする中で、外から入ってきた自分が人を触発する役割になっているのかもしれないと感じることがあるんです。自分が関わったことで地域の人が「何かやってみたい」と思い、その連鎖がまちを盛り上げていく。そういうことを、小松に限らずいろんな地域でやれたらいいなと思っています。
まちづくりって、誰か一人が大きくやるものというより、いろんな人がそれぞれの立場で少しずつ関わっていくものだと思うんです。そのきっかけを「ツン」とつつくと、波紋のように広がっていく。そんな役割を自分が担えたらうれしいです。

面白そうなら、飛び込めばいい。
ー最後に、PMの仕事に興味がある方に向けて、メッセージをお願いします。
HALELU どこにもカテゴライズされにくい人っているじゃないですか。いろんな面を持っていて、「○○の人」と一言では表現できないような。そういう人は、PMに向いている気がするんですよね。
筒井・健太郎 たしかに。
HALELU そういう人が、そのいろんな要素をうまく使いながら働ける環境がPMなのかなって。だから、これまでフィットする場所がなくてつらかった人には、合う仕事かもしれないですね。
筒井 自分も、専門的なスキルがないことがコンプレックスだったんですけど、最近は「専門性がないことが専門だ」と言っていて。
専門家ではない分、フラットで素直に考えられる。だからこそ、漁師とも農家ともアーティストとも経営者とも、対等な立場で巻き込んだり巻き込まれたりできるんじゃないかなと思っています。
健太郎 僕は、20代くらいの若い人たちにもっと来てもらえたらいいなと思っています。
僕がこのPMの仕事をやろうと決めたとき、周りからは「いいな」「楽しそう」って言われることが多かったんです。
もちろんリスクもあるし、知らない場所に飛び込む怖さもある。場合によっては、給料が下がることもあるかもしれません。それでも、得られるものはすごく大きいと思っています。そういうことを、もっと早く知ってもらえたらうれしいですね。
筒井 「面白そう」と思ったら、とにかく飛び込んでみたらいいんじゃないかなと思います。ご縁や偶発性に身を任せてみると、意外となんとかなるし、死にはしない(笑)。
グッドなバイブスを感じたら、ぜひ来てほしいですね。面白い人たちが待っていますし、僕たちも全力でサポートします。

取材・文 塩冶恵子