こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
Slackをはじめとしたビジネスチャットツールが台頭してから、会社では活発な情報交換やコミュニケーションが日々行われています。
そのコミュニケーション中でも、最近特に重要だと思うのが「それだったらこの記事読んでおいて」という記事の引用です。そして、なぜか引用する人は大体決まっていて、その人は仕事ができる人ばかりだと気づきました。
自分も代表という立場柄、メンバーに対してフィードバックを頻繁に行うのですが、「もっと理解を深めて欲しいな」という時は、自分の作ったコンテンツや記事だけでなく、他者の記事やコンテンツなどを引用して渡すことが多いです。
今回はそんな情報の引用とそのメリットについて解説していきたいと思います。
目次
ビジネスシーンに有効な引用文化
まずはこの引用についてあまりイメージが湧いていない方向けに、「引用」がどんな行動を指すのか説明します。

引用は学びの言語化を補助し、フィードバックの納得度も高まる
このように「引用」とは、具体的な出来事の振り返りに対して補助になるような情報提供を指すのです。抽象化(課題の本質を見抜く)がうまくない社員は、具体的な事象の改善策に対し、具体的な振り返りをしてしまいます。
例えば、朝会社に来た時に元気のない挨拶をしたとしましょう。それに対し上司から「朝の挨拶は元気よくしろ」と注意を受けて、「朝、挨拶は元気よくするべきなのだ」と振り返ることってしまうようなことを指します。
このような振り返りは具体度が高いので「昼間や夜の挨拶は元気がなくても良い」みたいな考え方になります。
しかし先ほどの挨拶の例で上司が本当に言いたかったことは「若手の頃はとにかく先輩に可愛がられるような行動をしろ」だったり、「挨拶だけでなく、ビジネスマナーは徹底しろ」だったりするのです。もう1段階抽象度を上げて振り返りをしないと、何度も似たようなミスをしてしまう社員になってしまうのです。しかし、記事を引用して送ってあげるだけで、本当に学ぶべき教訓や本質に触れることができるのです。
このように引用は、メンバーの抽象化を助け、課題の本質に触れるための補助輪となるのです。そしてこの引用が上手くなることは、部下の学習以外にもたくさんメリットがあるので、次の章で解説していきます。
引用力を高めるメリット
上司が部下に対して適切に引用し情報提供することは、部下の具体と抽象の行き来を促進させる効果があります。これは地頭力の要素の1つである「抽象化思考力」を高めるためのトレーニングに他なりません。
そんな素晴らしい引用ですが、会社にとって「三方よし」と言えるくらい各ステークホルダーにメリットが存在します。どんなメリットがあるのかご紹介します。
①引用の受けて側のメリット
まずは引用をもらう人(主に部下や新入社員)のメリットについて解説します。この人がメリットを享受するのは当たり前に見えますが、そのメリットは大きく2種類存在しています。
1つ目は、具体(自分の悩み)と抽象論(記事・本)が結びつき、学びが高速化することです。これはすでに解説している内容ですが、具体と抽象の往復が促進され、学びが加速したり、理解度が深まります。上司とは違う人の言語化の方がしっくりくる みたいなこともあるので、いろんな角度やいろんな言葉から学習することも可能になります。
2つ目は、「自分だけが悩んでいるわけではない」という安心感や、勇気をもらえることです。言い換えると、「できていないのは自分だけかもしれない」という恐怖心が薄れるということです。これは意外なメリットに思われますが、引用する記事というのは、引用をした側もその記事によって学んできたことを意味します。

他人の失敗事例に触れることで、自己効力感を取り戻すことができる
人が何か課題に直面した時に悩みやすいのは「自分だけができていないのではないか?」という恐怖心なのです。学校のように同級生がたくさんいて、みんな同じようにつまずいていると、自分が失敗してもあまり深く落ち込まないですよね?
それと同じように、記事の引用を通して「この先輩も、ひいてはこの記事の筆者も自分と同じようにつまづいてきたのだ」という勇気をもらうことができるのです。
②引用する側のメリット
意外にも思えますが、引用をする側(先輩や上司)にもメリットがあるのでしっかり覚えておいてください。大きく2点あります。
1つ目は、記事を引用することで説明コストを下げられるということ。これはある種当たり前ですが、部下へのフィードバックを全て自分で考え自分で言語化していると、時間も労力もかかります。もちろん一定程度、自分でフィードバックできる必要はあるのですが、「あとはこれを読んでみて」とやれる方が格段に楽になるのです。
そして2つ目として、師匠のような存在になれるというメリットがあります。たくさん物事を理解していて、適切なタイミングに適切な情報を与えてくれる上司は、稀有で非常にありがたい存在です。そして、いつしか憧れや尊敬の対象となっていくのです。そうなると周りからの信頼を得ることができるので、マネジメントがしやすくなったり、人を動かしやすくなるのです。

他社へのフィードバックを通して、自己の言語化力も磨くことができる
まさに、「情けは人のためならず」的なメリットがそこにあるのです。
③組織のメリット
引用文化のある会社では、組織(当事者以外)にとってもメリットが大きいです。
上司が何度も何度も部下に引用を活用してフィードバックを行うと、そのメリットを享受した部下が、また下の世代に引用を行うようになります。「やってもらったから、自分もやろう」という恩おくりの文化が醸成され、組織全体の学習スピードが上がります。「自分もこの悩みに直面した時に、上司からこの記事を読んで腹落ちしたんだよな」という経験は継承されていくのです。
また、オープンな場でフィードバック行うことで、直接フィードバック受けていない人までも勝手に学習することができるのです。

対面やメール文化の会社ではなかなか生まれづらい、チャット特有の学習文化
誰か一人の「引用」がやがて組織全体に波及していくことで、学習文化が強く生まれていくのです。
引用力を高める方法
三方よしの引用を用いたフィードバックですが、意外と簡単にできるものではありません。
他者へのフィードバックの際に記事を引用するためには、下記の4つのステップが存在しています。
①知識(記事)をインプットする
↓
②引き出せるように抽象化しておく
↓
③引用するタイミングを見極める
↓
④知識(記事)をアウトプットする
では、それぞれのステップについて解説していきます。
①知識(記事)をインプットする
まずは引用するための記事をインプットしなければ、当然アウトプットすることができません。しかしいたずらにインプットすればいいわけではありません。
書籍でインプットするのもよしですが、フィードバックに添える引用としてはボリュームが多いのと、購入までの金銭と時間軸的なハードルがあるので少し不向きであります。ネット上でも誰かが本と同じ内容について、別の角度・別の語彙で解説してくれていることがほとんどなので、その記事を摂取しておきましょう。
また、読んでおくべき記事の優先順位としては、SNS上で話題になっているものを素直に摂取しておきましょう。SNSで話題になるということは、マスに響きやすい情報だということなのです。マスに響くということは、自分の部下にも刺さりやすいテーマになっているということなのです。
なので、その記事をインプットしておけば、アウトプットする対象も多くなるのです。
②引き出せるように抽象化しておく
次のステップとして、インプットした記事を引き出しやすい状態に抽象化(サマライズ)しておくこと必要があります。これをやっておかないと、なかなか引用することができません。
学びを整理せずに感情的にホクホクして読んでしまったら、「○○の本」というレベルで言い表すことは難しいですよね。なので、自分にとってドンピシャに刺さる本ほど、冷静に「つまり○○だよね」というレベルまで昇華する必要があります。この抽象化をしておくと、「あ、今回のこの事象は前のあの記事と同じ内容だ」ということに気づくことができるのです。
では、記事を引用できるようになるためにはどうすれば良いか?
簡単な方法としては、記事をサマライズし、その上で自分の意見を乗せてSNSに投稿したり、社内でメンバーに共有してください。この工程を挟むことによって、記事が引用ができるサイズ感まで圧縮されるだけでなく、自分の記憶の定着率も上がります。学びを忘れてしまっては肝心な時に引用ができないので、しっかり記憶に残るレベルで、記事に触れてください。
③引用するタイミングを見極める
次は、「インプットした記事をいつどのタイミングで出せばいいか?」というステップになります。
これはステップ②と、基本的にやることが同じになります。先ほどは記事の本質を考えたの対して、ここでは部下の行動に対して本質的な課題は何なのか?を考えれば良いのです。
「今部下がやってしまったミスは、あの記事に書いていることと本質的に同じだ」と思えると、引用することができるのです。
記事の内容と部下へのフィードバックすべき内容が一致した時が引用するタイミングなのです。
④知識(記事)をアウトプットする
最後のステップとして、記事を引用しましょう。そして、せっかく引用するのであればただ「この記事読んでおいて」と投げるのではなく、より効果を実感してもらうためのラストワンマイルの工夫を凝らしましょう。
具体的に意識するポイントとしては、下記を意識してみてください。
・課題に直面したタイミングで引用する(吸収率を高める)
・記事の中で特に読んで欲しい箇所を明示する(論点を絞る)
・引用した理由やその記事に対する考察を載せる(読みやすくする)
これらを意識して引用してあげることによって、部下側はどんな理由で、どこを読めばいいのかがわかるので、より記事を味わいやすくなります。
4つのステップをまとめると、下記のイメージとなります。

部下の行動から本質を見極めると、「この記事でも学びを深められそうだな」と勘が働く
引用力を高めるトレーニング方法
ここからは具体的に引用力を高めたい人向けに、今日から実践できる具体的なトレーニング方法をレベル別で3つお伝えします。
レベル①:X上の引用をそのまま引用する
最も取り組みやすいのが、Xの引用をそのまま活用させてもらうパターンです。「この記事を読んで、こう解釈するのか」という参考データを蓄積していくイメージです。引用自体を引用するだけなので、自分がいいなと思ったものを選り好みしすぎず、引用してみてください。
レベル②:自分が引用されたものを別の誰かに引用する
次のレベルとしては、自分が引用されたものをそのまま別の人に引用してみてください。同じ職場で働いているということは、同じような課題感にぶつかりやすいので、自分が経験したことを部下も同じように経験する可能性が高いのです。なので、自分がもらったものを良きタイミングで引用してみてください。
レベル③:自分のインプットしていた記事を、タイミング関係なく引用する
ここまでいければ引用力はかなり高まっています。引用はタイミングが大事ですが、そのタイミングがなくてもガンガン引用し、不特定多数の人に対して発信・共有してOKなのです。ここまでできれば、引用力としては十分なものになっているので、あとは部下の成長にコミットすれば自然と理想的な引用は可能になるはずです。
引用する際の心得として最も重要なのが「気にし過ぎず引用してみる」ことです。ここまで引用の仕方やポイントについて解説してきましたが、完璧な引用を行う必要は全くありません。
そもそも誰かの学びを共有しようと思うそのスタンスがあること自体が賞賛されるべきであるので、どんどん行動のハードルを下げていきましょう。
誰かの引用が言語化を促進し、ビジネスパーソンの腹落ち体験を増やすのです。ぜひ、今日から引用できる側の人になっていきましょう。