こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表の堀内猛志(takenoko1220)です。
このシリーズでは、「信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方」と題して、50名から4000名まで成長した企業で、各ステージの人事組織戦略の遂行に人事役員として奔走した自身の経験をもとに、
▼人事トップになるために実行したこと
▼意識していたマインド
▼経営や現場とのコミュニケーションのtips
などをお伝えしていきます。僕の経歴詳細は、以下の記事からご確認ください。
前職時代、僕は人事役員を務めていたので、人事の立場で自社をプレゼンする機会が多々ありました。その一方で、現在は、エージェントとしてさまざまな企業のプレゼンを聞く立場にいます。
今回は、プレゼンを「する側」と「される側」の二つの経験をもとに、自社の魅力を的確に伝えるためのポイントをお伝えしていきます。
目次
愛ゆえの悲劇〜自社の魅力が伝わらない〜
意義あるプレゼンにするためのポイント
前提:3つの「C」を考える
No.1:Customer(顧客)の視点
No.2:Competitor(競合)の観点
No.3:Company(自社)の観点
想いは熱く、思考は冷静に
TIPS:人の振り見て我が振り直す
愛ゆえの悲劇〜自社の魅力が伝わらない〜
エージェントは、企業と求職者の間に立ち、企業やポジションの魅力を求職者に伝える存在です。そのため、僕は頻繁に企業の担当者にヒアリングをするのですが、中には、自分たちの良さを熱心に伝えようと、手の込んだプレゼン資料を準備して、会社の成り立ちから事業内容、社長の人柄まで、事細かに説明する方もいます。
でも、こうした場合、僕は「このプレゼンで求職者にも説明しているようでは、人材の確保は難しいだろう」と感じます。それは、自分のことしか見えていない、つまり、自社を客観的に捉えられていないからです。
こんな言い方をするとすごく否定的に聞こえるかもしれませんが、実は、そうなってしまうのは自社への愛ゆえの場合が多いです。自社のことを好きすぎるがために、つい「いかに素敵か」を主観的に説明してしまう。まさに「Love is blind」ですね。
意義あるプレゼンにするためのポイント
プレゼンを聞く側は、好きな気持ちを思いっきりぶつけられたとしても、同じ気持ちになれるわけではありません。むしろ、気持ちが熱ければ熱いほど話が長くなり「なんか重いわ」と感じてしまうこともあります。誰だって、興味がない話はそんなに長々聞いていられないんです。
ここからは、こんな事態になることを避けるために頭に入れておいてほしいポイントをご紹介します。
前提:3つの「C」を考える
企業が経営戦略上の課題を分析するためのツールの一つに、「3C分析」というものがあります。「3C」とは、Customer(顧客) 、Competitor(競合) 、Company(自社)という3つの単語の頭文字をとったものです。
マーケティングの分野ではかなり浸透している考え方ですが、人事担当者でこれを落とし込めている人はそうそういません。
早速、「3C」それぞれの観点から、自社の魅力を客観的に伝える方法を考えてみましょう。
No.1:Customer(顧客)の視点
当たり前ですが、物事には順番があります。初対面の人とは、普通は大きいボールで会話を進めますよね。その中で、だんだんと相手の性格や好みを掴み、ニーズに合う話題に深めていくわけです。
採用活動も同じです。まずは、お客様=求職者は何が好きなのか、何を大事にしているのかを理解することからスタートします。
それがわかったら、ようやくスタートラインに立った状態になります。その上で、第一にやるべきことは、「当社に入社すると、あなたはどんなハッピーを得られるか」を一言で伝えることです。
このように話すと、「じゃあ自社のビジョンから話せばいいんだ」とおっしゃる方もいますが、そうではありません。相手が一番大事にしているものは、ビジョン云々ではなく、報酬だったり、社長の人柄だったりと、それぞれ異なるからです。
大きな論点を押さえないままに細かい事柄をつらつらと話されても、なかなか頭には入ってきませんよね。相手にとってのメリットを明確に提示し興味を持ってもらってから、仕事の内容や報酬、就業環境など、具体的な話を進めていくことが大切です。
No.2:Competitor(競合)の観点
求職者としては「他の企業と何が違うのか」は気になるポイントです。ところが、多くの人事担当者にそれを尋ねると、ふわっとした回答をされることが多くあります。おそらく、他社のことは大して調べられていないんですよね。
マーケティングや営業の部門なら、お客様に自社を選んでもらうために、事業上の競合となる同業他社を詳しく調査するはずです。ですが、採用上の競合は、自社と同じ業界とは限らないため複雑になります。事業内容は全く異なっていても、会社の規模感や職種が同じであれば、求職者が併願することは大いにあり得るからです。
確かに、採用上の競合を調査することは難しいですが、だからといって考えることを放棄してはいけません。どんな企業とバッティングするのか、そうした事態が起こった際に、どういった点で自社が勝てるのかは、しっかりと分析しておく必要があります。
No.3:Company(自社)の観点
僕は、いろいろと会社の魅力を聞かせてもらった後に、「では、御社の一番の売りは何ですか?」と質問することがあります。実は、この問いに対して、「人です」と答える企業はすごく多いんです。
正直、求職者にとって、人が良いことは働く上での前提条件であって、差別化のポイントではありません。それに、人の良さは「たまたま取引先だった」などのつながりでもない限り、内部に入ってみないと感じることができないものです。就職先・転職先を探している人が、よく見えもしない「人」にビビビッと運命を感じて入社を決めることって、果たしてあるのでしょうか。
僕は、求職者が企業に興味を持つ最初のきっかけは、パッと見てわかりやすいものだと思っています。たとえば「ユニークな場所に広告出してる。なんか面白いな」とか、「求人広告見てたら、めっちゃ給料高いのあった」とかですね。
プレゼンも、ファーストインプレッションが重要な世界です。それなのに、最も魅力を伝えにくい「人」を最大の魅力と言い切ってしまうのは、「Love is blind」の弊害だと思います。
求職者が「人の良さ」を基準に考えるのは、競合他社の中から1社を選ぶ最後の最後の段階になってからのことです。まずは、「人」以外の自社の強みは何なのか、その強みは、競合と比べてユニークポイントになり得るのかを考えてみてください。
想いは熱く、思考は冷静に
せっかく自社の説明を聞いてもらえる機会があるのに、熱くなりすぎて主観的な話ばかりしてしまっては逆効果です。時間をかけて資料を作って、労力を費やして説明した結果が自社のネガティブキャンペーンでは、非常にもったいないですよね。
ところが、自分がそんな振る舞いをしていることに気づけていない人事担当者の方も結構います。
学生を対象にした合同説明会の場合、話がつまらなければ退出してくれるので「あれ?自分の説明が悪かったかな?」と察することができますが、中途採用の場合は基本的に一対一。しかも、皆さんいい大人なので、仮につまらなくとも笑顔で話を聞き、さも興味があるように質問などをしてくれます。そのため、候補者に辞退されると「いい感じだと思ったのに、なんで?」という事態になることがあります。
担当者からすると「今日の話を聞いて魅力を感じなかったなら、合わない人だと思います」などと結論づけたくなりますが、もしかすると、自分にも原因があるかもしれません。
自社への愛が深ければ深いほど、説明は主観的になってしまいがちです。熱意を持って採用活動に取り組んでいる方こそ、自分自身を客観視して、思い当たる節がないか振り返ってみてほしいと思います。
TIPS:人の振り見て我が振り直す
もし「自分の説明ってどうなんだろう?」と思ったなら、他社の説明を聞きに行ってみてください。相手の気持ちを理解するには、相手の立場に立ってみるのが一番です。
おそらく、自分自身が求職者になって話を聞いていると「面白くないな」「興味持てないな」と思うのではないかと思います。ですが、そうなったときに、「自分の方がいい説明できてるな」「自社の方がいい会社だ」という感想で終わっては意味がありません。
一般的に見たらいい会社なのに、なぜ面白くなかったのか、なぜ興味が持てなかったのか──。ここにどんな理由があるのかを掘り下げることができれば、自分自身の今後に活かすことができると思います。
また、自社に対して批判的な見方をしている人の方が、ポジティブ面とネガティブ面、両方の特徴を的確に捉えている傾向があるのも事実です。説明を聞く側としても「あれも良い、これも良い」より、「こういうところもあるけど、ここはズバ抜けていい」と言ってもらえた方が、心に刺さるんですよね。
人事担当の方には、自社を愛しているからこそ冷静になり、客観的な視点で話す意識を持ってほしいと思います。
より詳しい内容が知りたい、自社で戦略人事思考を持った人事責任者を採用したい、育てたいがうまくいかない、という経営者の方はご連絡をください。CHRO採用とCHRO開発を承っています。
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