サロウィンは今年6月、ヒューリック株式会社の100%子会社としてグループに参画しました。
この3ヶ月、これまで以上のスピードで挑戦できるフェーズに入り、事業が加速しています。この決断に至った背景を、代表・阿部が自身の言葉で綴っています。
「ビューティシャンが世界中で活躍できる未来をつくる」というサロウィンのビジョンに関心を持ってくださっている方、これから仲間として加わることを検討してくださっている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
「100%で買収します」
2026年2月13日の夕方。ヒューリックの長塚専務からのお電話で、そう告げられました。
実はその日の午前中、PEファンド2社から私たちの希望条件を満たすLOI(買収意向書)が同時に届いたばかりでした。ちょうど経営合宿の真っ最中で、社内のメンバーと将来の構想を熱く議論していたタイミングです。午前にPE2社、夕方にヒューリック。1日で3社から提案を頂戴することになるとは、まったく想定していませんでした。
そして本日のリリースの通り、サロウィンはヒューリック株式会社の100%子会社としてグループに参画させていただくことになりました。
当社は2028年〜2030年を目処にIPOを計画しておりましたが、その計画を大きく転換し、M&Aという選択をしました。
「IPOを目指していたはずなのに、なぜM&Aなのか?」
「業績が悪いから売却したのか?」
「上場を諦めて、楽な道を選んだのではないか?」
そう思われる方もいるかと思います。けれども、答えはすべて違います。
サロウィンは前年成長率+60%超の急成長期にあります。
シェアサロンを起点に、サロン開業支援、多店舗展開支援へと事業を広げ、現在は全国280店舗以上・3,000名を超えるビューティシャンに活用いただくプラットフォームに育ってきました。ここからさらに、数年で300億、10年で1000億、そして30年で10兆円。美容業界のグローバルトッププレイヤーと並ぶスケールまで、本気で取りに行きたいと思っています。「IPOで調達できる資金の規模感では、私たちが本当にやりたい挑戦は実現できない」
だから今回の判断に至りました。
そして大前提として、私は経営トップとして続投します。退任する予定もありません。次なるサロウィンを実現する経営責任は、私が背負い続けます。
このnoteでは、IPOを目前にしていた私たちが、なぜM&Aを選んだのか。そしてなぜヒューリックと組むのが最善だと判断したのか。1人の社長として何を考え、どう動いて、どこで決めたのか。
あったことを飾らずに書いておきたいと思います。
■ずっと潜っていたかった、というのが本音でした
サロウィンは、ファーストリテイリングの柳井正社長がおっしゃる「3倍ルール」を、創業から常に意識して自己変革を続けてきた会社です。
10億円を30億円に。30億円を100億円に。100億円を300億円に。300億円を1000億円に。そしてその先、1兆、3兆、10兆と——3倍の階段を、何段でも登り続ける覚悟です。
その段階ごとに、組織のあり方も、必要な仕組みも、経営者として自分が手放さなければならないものも、全部つくり変える必要があります。
4年ほど前に最初に目標として口にしたのが、「2028年〜2030年の間にIPO、時価総額1000億円」という絵でした。当時は正直に言うと「夢のまた夢」。けれども毎年事業が伸びていく中で、夢が目標に変わり、目標が具体的な計画に変わっていきました。
ただ、ここ数年、IPOという選択肢に対して、心の奥でずっと引っかかっているものがありました。
プライム市場は堅調に推移する一方、グロース市場は長らく低迷が続いています。仮に1000億円規模で上場できたとしても、その後継続的に株価を上げ続けられるのか。短期利益を追い求めるあまり、本来やるべき大型投資ができなくなるのではないか。公募増資をしたくても、希薄化を嫌う株主の声に配慮することになり、肝心な時に思い切った資金調達ができないのではないか。
「やるべきことを、やれない体制になってしまうかもしれない」
そんな構造的なリスクが、頭から離れませんでした。
本音を言えば、ずっと潜っていたかった。非上場企業として、まだまだやるべきことに専念したかった。けれども、株主の皆さんにはリターンを返さなければならない。期待にも応えなければならない。そんなプレッシャーの中で「IPOしません」とは、なかなか言えませんでした。
事業に100%専念すべき時期だから、こんなことを考えても無駄だとは思っていました。それでも上場の時期は刻々と近づいてくる。思考を切り替えようとしてもなかなか切り替わらない。
そんな宙ぶらりんの期間が、長く続いていました。
■「とりあえず打診してみるか」から始まった話
そんな時、ふと頭に浮かんだのが、ヒューリックの中期経営計画でした。ヒューリックは非不動産領域でのM&Aを加速させる方針を打ち出しており、シリーズCではヒューリックスタートアップ(上杉さん)からご出資もいただいていて、関係性もありました。
「とりあえず、M&A打診してみるかな」正直、最初はそのくらいの軽さでした。
思い立ったら即行動するのが私のスタイルです。すぐに上杉さんとお時間をいただき、思っていることをそのままお話ししました。返ってきたお言葉は、「大変ありがたいお話です。ただ、いきなり100%買収は難しいかもしれません。全力は尽くします」
私自身も「まあ100%なんて無理だよね(笑)」と思っていました。シリーズEも計画していたので、「ヒューリック本体から出資いただける形になれば十分ありがたい」くらいの気持ちでした。
そんな大きな意思決定を考える時、私が必ず相談する人がいます。HIRAC FUNDの金坂さんです。
金坂さんは超多忙な方なので、普通にアポイントをお願いしても永遠にお会いできません笑。今回も、ある会食前の30分だけお時間をいただいて、本件について相談しました。
「バイアウトでも、阿部さんが良いと思うなら応援するよ」
そう言ってくださったあの一言で、私の気持ちは少しM&Aに傾きました。
2025年11月、金坂さんから再度ご連絡をいただきます。「M&Aを検討するなら、ちゃんと比較した方がいい」というアドバイスとともに、Houlihan Lokey(フーリハンローキー)さんをご紹介いただき、PEファンド2社との面談機会を設定していただきました。
■PEファンドとの面談で、私が衝撃を受けたこと
2025年12月、PEファンド2社との初回面談。
サロウィンの事業説明の時間はほとんどなく、むしろPE2社ともに「私に対してプレゼン」をしてくださったことが、強く印象に残っています。
これまでファイナンスといえば、私がVCに対してプレゼンするのが当たり前でした。「うちはこういう事業で、こういう成長戦略で、だから出資してください」と。
しかしPEファンドは違いました。徹底的にリサーチした上で、「私たちは御社をこう伸ばせます」と逆にプレゼンしてくる。会社を買って伸ばすという事実に真剣に向き合うPEファンドの姿勢に、感銘を受けました。
その流れの中で「2026年2月13日までにLOI(買収意向書)を提出します」というお話を頂戴することになります。
同じタイミングで、ヒューリックからもご連絡がありました。「やはり100%買収は難しい。まずは20%程度の出資から検討してほしい」と。
「なるほど、ヒューリックは部分出資。であればPE2社のオファーを軸に考えるしかないか」
その時点では、PEファンドとのディールに気持ちが大きく寄っていました。
■3社同時オファーの日
そしていよいよ、2026年2月13日を迎えます。
午前中、PEファンド2社から、私たちの希望額を満たす内容のLOIが届きました。経営合宿の最中だったので「まさか本当に届くとは」という驚きと、これほど高く評価いただけたことへのシンプルな嬉しさが入り混じった瞬間でした。
そして同じ日の夕方、ヒューリックの長塚専務からのお電話です。
「100%で買収します」
まったく想定外でした。「20%からの部分出資」だったはずの話が、その日のうちに「100%」に変わったのです。
この瞬間に、M&Aで行く。と決めました。
2月20日に社外取締役の皆さんと協議し、2月25日には株主の皆さんへ説明をさせていただきました。
正直に言うと、「怒られるかな……」と思っていました。IPO前提でご出資いただいたVCの皆さんに、方針転換を切り出すわけですから。けれども皆さん、本当に心優しく応援してくださいました。「阿部さんが選んだ道なら、応援する」と言ってくださった株主の方々のお言葉に、何度救われたかわかりません。創業から今日まで、サロウィンを支えてくださった株主の皆さんには、感謝してもしきれません。
3月中盤からはDD(デューデリジェンス)が始まりました。
■なぜヒューリックを選んだのか
最終的に、PEファンドもヒューリックも、ほぼ同条件でのオファーで着地しました。つまり、株主利益のみで考えればどちらを選んでも同じです。だからこそ、考えるべき論点は1つに絞られました。
「どのパートナーと組めば、サロウィンが一番成長するのか?」
その観点から徹底的に比較した結果、ヒューリックを選びました。理由は3つあります。
① 事業展開の可能性が、圧倒的に広い
私の中で、サロウィンは日本国内で完結する会社ではありません。世界中にサロウィンを作り、ビューティシャンが国境や年齢、性別、ライフステージといった制約を超えて活躍できる未来を作る。
これが、私が本当に作りたい絵です。
そのためにやるべきことは、本当にたくさんあります。国内の出店余地は依然として大きく、周辺領域(教育、物販、福利厚生、SaaS、流通)へのM&Aもこれから加速させていきます。インバウンド需要の取り込み、訪問美容の本格展開、そしてグローバル展開——どれもサロウィン単独でやろうとすれば、相当な時間がかかります。
ヒューリックは、これらの「サロウィンがこれからやるべきこと」の周辺アセットを、グループ会社という形ですでに多数保有しています。つまりサロウィンがゼロから時間をかけて積み上げなくても、グループ連携を強化するだけで一気にスピードを上げられる。「再現性のある急成長」を実現するための環境が、ヒューリックグループには整っていたのです。
② 圧倒的な資金力と、親子ローンによる金利優位性
M&A後の急速な事業成長を支える「継続的な資金供給」は、サロウィンの成長にとって絶対に欠かせません。
PEファンドも潤沢な資金をお持ちです。けれども、ヒューリックの財務基盤は、その遥か上の水準にあります。年間数百店舗の出店に耐えうる資金が安定的に供給される。これは、出店ペースを加速させる私たちにとって本当に大きな意味を持ちます。
そしてもう1つが、親子ローンによる金利優位性です。サロウィンのようにデットファイナンスを多用する会社にとって、金利は事業構造に直結します。試算したところ、当社が単独で銀行借入する場合と比べて、親子ローンの活用で金利が下がり、 利息支払額の節約だけで、年間数千万円のインパクトがあります。これは10年積み上げれば数億円。出店原資にも、新規事業への投資原資にもなる、非常に大きな違いです。
③ 経営の独立性を尊重する、柔軟なガバナンス設計
そして3つ目、私にとって最も重要だった論点が、ガバナンスです。
100%子会社になることで、私自身がリーダーシップを発揮できなくなるのではないか。意思決定権を奪われ、「親会社の言うことを聞くだけのサラリーマン社長」になってしまうのではないか。もしそうなるのであれば、PEファンドとパートナーシップを組んで上場を目指す方が、よほど経営の自由度は高いはずです。
ここはヒューリックとの間で、相当な時間をかけて議論しました。
結論から言えば、ヒューリックは1つ1つの意思決定内容を丁寧に確認した上で、ガバナンス設計に柔軟に協力してくださいました。出店判断の権限、人事の権限、報酬設計、新規事業の意思決定スピード。どれもサロウィンの強みを毀損しない形で設計していただけました。
結果として、これまで以上に私自身が動きやすい構造になりました。グループの信用力と資金力を背負いながら、意思決定スピードはスタートアップのまま。サロウィンの独自性とスピードを尊重してくださったヒューリックの姿勢には、深く感謝しています。
■サロウィンが本当に叶えたい未来
サロウィンが本当に叶えたい未来について、改めて書かせてください。
10年以内に売上1000億、30年で売上10兆円——どちらもあくまで結果指標に過ぎません。本当に叶えたい姿は、3つあります。
1. ビューティシャンの所得向上
2. 労働環境の改善
3. 一生涯働ける環境の提供
日本のビューティシャンの平均年収、平均労働時間、平均離職年齢を見るたびに、私はずっと納得がいきませんでした。これだけ高い技術を持ち、お客様の人生の節目に寄り添い、地域コミュニティを支えている職業の方々が、なぜ報われにくい構造の中にいるのか。なぜ40代を過ぎて第一線を退かざるを得ないのか。なぜ結婚や出産でキャリアを諦めなければならないのか。
人の手と感性に強く依存する産業だからこそ、その人たちが100%自分の仕事に集中できる「インフラ」が必要だと、私はずっと信じてきました。店舗開発も、集客も、経理も、雇用契約も、社会保険も。本人がやらなくていいことから、解放されるべきです。
サロウィンがやってきたシェアサロン、me by,,(小規模開業支援)、ALL SHARE(多店舗展開支援)。すべて、その思想で作ってきました。「ビューティシャン経済圏のOS」を作る、というのが私たちが目指しているビジョンです。
これからは、この基盤の上に新しい事業を重ねていきます。ビューティシャンと事業者のための業務基盤SaaS「BYOON」、業界の流通構造そのものを再設計する物流・調達プラットフォーム、そしてグローバル展開。どれもサロウィン単独で取り組むには時間がかかりすぎる挑戦ばかりです。
今回のヒューリックグループ入りは、これらの実現スピードを一気に引き上げるための決断です。これまで7年かけて積み上げてきたものを、これからは1〜2年で積み上げていく。そういう挑戦のフェーズに、サロウィンは入っていきます。
■美容業界の皆様へ
美容業界の皆様へ、改めてお伝えしたいことがあります。
サロウィンがヒューリックグループの一員になる。という事実だけ見ると、「大資本に飲み込まれた」「これからは利益優先になるのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。けれども、私が約束できることが3つあります。
1つ目は、ビューティシャンファーストの姿勢は1ミリも変わらないということ。 むしろ、これまで以上に、皆さんが働きやすい環境、活躍しやすい仕組み、長く続けられるキャリアを作っていきます。
2つ目は、サービスの質と現場の文化を守り続けるということ。 店舗で起きていること、現場で感じている課題、ビューティシャンの声。これらこそが、サロウィンの一番の財産です。グループに入っても、ここは絶対に変えません。
3つ目は、業界全体への還元を加速させるということ。 ヒューリックグループ入りで得られる資金力・信用力・ネットワークは、サロウィン1社の成長のためだけに使うものではありません。美容業界全体の構造を変えるために使います。メーカー、ディーラー、サロン、ビューティシャン、お客様。
すべてのプレイヤーにとってフェアな経済圏を作ることが、私たちの責任だと思っています。
世界一、ビューティシャンが活躍できる国を、日本から作っていく。そしてその仕組みを、世界に広げていく。
その挑戦に、心からワクワクしています。
これからも、サロウィンをよろしくお願いいたします。
■P.S. 今回ご一緒してくださった皆さまへ
本件に深く関わってくださった皆さまへのお礼を、ここに残させてください。
ヒューリックの皆さまへ。 本件のM&Aプロセスを通じて、ご担当者の皆さま全員に、終始迅速かつ紳士的に対応していただきました。膨大なDD、繊細な交渉、緻密なガバナンス設計——どのフェーズも、フェアで誠実な姿勢で進めてくださったこと、本当に感謝しています。これからはグループの一員として、その信頼に事業の成果でお返しできるよう、全力で走ります。
PEファンドの皆さまへ。 サロウィンの可能性を真正面から評価していただき、伸ばし方の具体的な絵を一緒に描いてくださったこと、本当に光栄でした。出店可能性のリサーチ、マーケット規模の試算、顧客分析など、私たち以上に踏み込んだファクトとデータを提示してくださったこと。経営陣・メンバーへのインセンティブパッケージのご提案を含め、皆さんが用意してくださった内容は、私たちの視野を大きく広げるものでした。今回はご一緒できませんでしたが、ファンドの皆さん一人ひとりと過ごした時間は、サロウィンの次の挑戦の確かな糧になっています。
Houlihan Lokeyの皆さまへ。 FAとして入っていただけたことで、本件に含まれる複雑な論点を1つずつ丁寧にクリアしていくことができました。圧倒的な経験と専門性、そして何より、最後までサロウィン側に立って導いてくださった姿勢に、心から御礼を申し上げます。フーリハンの皆さんがいなければ、この決断にここまでの納得感をもって辿り着くことはできませんでした。本当にありがとうございました。
そして、ここまでサロウィンを共に作り上げてきてくれたメンバーへ。皆さん一人ひとりがいなければ、今回の評価額も、今回の機会も、そもそも存在しませんでした。ここから先のフェーズは、これまで以上にスケールの大きい挑戦が続きます。
一緒に、世界一を取りに行きましょう。
※本記事は、代表・阿部友哉のnote「IPOではなく100%売却を選んだ理由。サロウィン、ヒューリックグループ入りの全背景」からの転載です。
原文はこちら:https://note.com/abe875/n/nd2db3bfcfd2f
この挑戦のフェーズを、これから一緒につくっていく仲間を探しています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひカジュアルにお話ししましょう。