AIはゴジラみたいに大くて強い?AIは過大評価だという仮説
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こんにちは!藤村です。最初に行っておきますがタイトル詐欺なんで内容はそんな尖ったこと言ってません。
うちはAI駆動のSaaS運営してますしAIによる技術革新が今後ますます増えると思って日々頑張ってるんですが、生成AIが登場してからもう結構立つけど結局世間的には解像度上がってないし、シンギュラリティとかいつ来るの?て感じですよね。(僕もそうです)だからこそ今日はそんな中でAIをどう捉え、自分自身をどう変えていけばいいのかについて考えてみたいと思います。
1.何かしらの技術変革の熱気って、だいたい毎回こうなる
ここ数年、AIの話題は「第二の産業革命だ」「ホワイトカラーが消える」みたいな威勢のいいフレーズで満ちています。投資家のテンションも高いし、経営会議の議題にも毎週のように乗る。分かります。流行っているものに乗り遅れるのは怖いすよね。
ただ、ここで一回だけ冷水をかぶって(かけて?日本語ムズイ)みたいと思います。
本当にAIの進化は、産業革命やIT革命と同じスケールで世界を塗り替えるのか。あるいは、実際には「便利な道具が増えた」くらいで、経営者やビジネスマンに必要なスキルも、言うほど別物にはならないんじゃないか。今日はその仮説を、過去のイノベーションの数字や、AIのマクロ推計を並べて眺めながら考えてみたいな!と。
2.産業革命のインパクトは、そもそも人類の成長率を変えた
僕も生まれる前ですが、色々と文献を読むと産業革命のすごさって、蒸気機関が登場したこと自体より、「経済成長が常態化した」ことにあると言えるんじゃないでしょうか。歴史研究の長期統計では、産業革命以前の一人当たりGDPは、長い期間で見ると伸びが小さく、地域的に差がありつつも、現代のような持続的な成長とは性格が違う、という整理が一般的です。たとえば長期GDP推計を整理する研究では、近代的成長への移行や、産業革命直前までの伸びの限定性が示されています。
この「成長の常態化」はすごいことです。成長率が構造的に変わるというのは、企業の売上が増えるとか、新規事業が当たる、という次元ではなく、社会の地形が変わる話ですから。
3.IT革命のインパクトは、少なくとも一時期は生産性統計に出た
ではIT革命はどうでしょうか。こちらは「いつ効果が出たのか」論争もありますが、米国では1990年代後半から2000年代前半にかけて、生産性の加速が観測され、IT投資やIT生産がその説明要因として整理された研究が多いです。NBERの整理なんかでは、1995〜2000年の成長加速において、IT利用やIT生産の寄与が大きな部分を占めた、という推計が示されています。
ポイントはここです。ITは「企業の中で便利」だけでは終わらず、一定期間、マクロ統計(生産性)に“見える形”で出た。もちろん国や産業で濃淡はありますが、少なくとも「革命」と呼ばれた側には、そう呼ばれるだけの統計上の痕跡があったといえます。
4.ではAIはどうか。マクロ推計は意外と控えめなものもある
AIについては、将来推計がレンジだらけで、強気シナリオも弱気シナリオも作れます。だからこそ、私は「控えめな推計」を一度ちゃんと見ておくのが、経営の健康診断として大事だと思っています。
代表例として、ダロン・アセモグルはタスクベースの枠組みで、今後10年のマクロ影響をかなり慎重に評価し、GDP押し上げは10年累計で1.1〜1.6%程度という「控えめ」な見立てを紹介しています。
同じ流れで、10年程度のTFP(全要素生産性)押し上げが非常に小さい、という趣旨の説明もあります。
一方で、OECDは「奇跡か神話か」と題して、AIが今後10年のTFP成長に年0.25〜0.6ポイント程度寄与し得る、というレンジの試算を示しています。
さらに国際通貨基金のワーキングペーパーでは、シナリオによって世界GDPの水準が1.3%〜約4%拡大する、といった幅のある結果が示されています。
ここで言いたいのは「AIは大したことない」ではありません。言いたいのは、まともな機関・研究者の推計を真面目に読むと、少なくとも短中期(10年スパン)では、産業革命みたいに“成長率の地殻変動”が起きると断言できるほど単純じゃない、ということです。むしろ“控えめ推計”の存在が重要です。経営者は、強気筋のプレゼンだけで意思決定すると、だいたい痛い目を見ます。
5.AIの効果が「革命級」に見えにくい理由
仮説として、AIのインパクトが産業革命やIT革命ほど大きく見えない可能性には、いくつか筋のいい理由があります。
まず、AIは「単体で社会を変える発明」というより、「既存プロセスの手戻り・探索・文章化を速くする道具」として入りやすい。つまり改善の多くが、置き換えというより“圧縮”です。圧縮は強いけれど、マクロ統計に出るまでには、導入、再設計、教育、ガバナンス整備といった補完投資が必要になります。ITと同じ構図です。
次に、AIのボトルネックは技術より組織側に寄りがちです。データが散らかっている、承認フローが多い、例外処理が標準、責任分界が不明。ここが改善されないと、モデルが賢くても成果は出にくい。AIが止めるのはウイルスではなく、あなたの会社の「謎ルール」です。
そして最後、AIの便益は偏在しやすい。うまく使う企業・職種では劇的でも、そうでないところは「ちょっと便利」で終わる。その平均を取れば、マクロ推計が控えめになるのは自然です。IMFも国・産業によるギャップを強調しています。
じゃあこの先のAI新時代的な世の中で経営者やビジネスマンに必要なスキルは何か。これがそんなに目新しいものじゃないかもね?というのが今日の趣旨です。
ここまでの話を踏まえると、「経営者やビジネスマンに求められるスキルセットが、まるきり新しくなる」というより、「道具が増えた分、使いこなしの差が出る」という話に寄っていきます。
必要なのは、革命的な思考法というより、次のような地味スキルの組み合わせです。
一つ目は、課題設定。AIに聞けば答えが返ってくる時代ほど、「何を問うか」で成果が決まる。これは昔から変わらない。
二つ目は、業務の分解。タスクに切って、例外を数えて、前提を揃える。AI導入の成否は、だいたいここで8割決まります。
三つ目は、運用と統制。誤り・偏り・情報漏えい・権限設計。ここが弱いと、AIは“便利”より先に“事故”を連れてきます。
四つ目は、現場の言語化。プロンプトが上手いより、現場の暗黙知を文章にできる人のほうが強い。結局、仕事ができる人は昔から「説明がうまい」です。
つまり、AI時代の必須能力は「AI脳」ではなく、「仕事の基本を、道具で増幅できる能力」なんだと思います。控えめ推計が示すのは、AIが無力というより、社会がそれを“革命級”にするには結局それなりの時間と補完投資が要る、という現実です(これは個人的に間違いないと思ってます)。
まとめ:AIは革命かもしれない。でも、あなたの明日の仕事はたぶん地味だ
産業革命は成長の常態化をもたらし、IT革命は(少なくともある局面で)生産性統計に痕跡を残した。AIはそのどちらにもなり得るけれど、短中期のマクロ推計には、意外と控えめな数字も並びます。
だから私は、AIを「世界を変える魔法」ではなく、「既存の仕事をうまくする増幅器」として見るのも一つだと思っています。増幅器は、元の信号がしょぼいと、しょぼさも増幅します。つまり、仕事の基本が弱い会社ほど、AIで派手に転びます(というかAIという見えない敵をゴジラくらい大きいと勝手に思って、驚き、怯え、怒って、何もできず死んでいくと思います)。ここは皮肉じゃなくて、たぶん事実です。
AIが本当に革命になるかどうかは、未来が決めます。
でも、一人ひとりの人間が今日できることはわりと決まっていて、課題を絞り、業務を分解し、データと統制を整え、現場が使える形に落とす。派手ではないけど、確実に効く。
革命の準備って、だいたいこういう地味作業から始まるんですよね。悔しいけど。
うちのソリューションはそういう哲学のもとに「現場に効く」地味だけど強いサービスです。一緒に動いてくれるセールス募集してます!!ぜひ応募してください。では。