4月は転職の季節だ。転職エージェントのオフィスは多くのエンジニアで混雑しているだろうし、私のメールボックスにもカジュアル面談の申し込みが増えている。Codenceはまだ設立1年未満の小さなスタートアップだから、メガベンチャーのように毎日のように面談が入るわけではない。でも、その分だからこそ、一人一人の面談を丁寧に進めたいと思っている。
そんな面談の中で、私は必ず聞いていることがいくつかある。それはスキルシートに書いてあることではなく、その人がどんなエンジニアなのかを知るための質問だ。
もちろん、経験年数やスキルセットは重要な情報だ。でも、それだけで判断するなら、書類選考で十分だろう。わざわざ面談という時間を取るのだから、書類には出てこない部分を知りたい。採用活動としてではなく、一つの対話として。
Codenceは現在、設立1年未満という段階で、一人一人の判断や主体性がチームの質を大きく左右する。だからこそ、採用の際には技術スタックよりも、その人のスタンスや思考の癖を見たいと考えている。
スキルシートの向こう側
SES業界の採用では、スキルシートが非常に重視される。何年のキャリアがあるか、どの言語に何年携わったか、どのプロジェクトに参画したか。それらは確かに参考になる。客先での契約や配置を決める際には必要な情報だから。
でもね、スキルシートだけでは、その人がどんなエンジニアかはほぼ分からない。
JavaScriptが3年、Pythonが2年。フロントエンドのプロジェクトに2件参画。これを見て、「ああ、フロントエンドエンジニアなんだな」と判断するのは簡単だ。でも実際には、その3年間のJavaScript経験がどんな環境で、どんなアプローチで、どんな学びを得たものなのかは、文字では伝わらない。
だから私は面談のときに、スキルシートに書いてあることをもう一度、口で聞き直す。でも聞き方が違う。「JavaScriptは3年ですね」ではなく、「JavaScriptでやってきた中で、一番印象に残っているプロジェクトは?」と聞く。そこから始まる対話の中に、その人の人柄が表れる気がする。
2018年に私はRailsエンジニアとしてキャリアをスタートさせた。当時、Railsはこの業界でも一定の存在感があり、スタートアップの界隈では「Railsでサクサク開発できる」という評判が広がっていた時代だ。でも実際に仕事をしてみると、技術選択というのは、自分がいかに深く考えてその言語なり、フレームワークなりと付き合っているかによって、見え方が全く違う。
私自身、エンジニア時代に何度か面談を受けた。スキルシートを事前に送って、当日は「ここに書いてある通りですが」と確認される。あの時間は正直、何のためにあったのだろうと思う。お互いにとって、もったいない時間だった。
だから自分が面談をする側に立ったとき、スキルシートの読み合わせだけは絶対にやらないと決めた。せっかく30分なり1時間なりの時間を使って向き合うのだから、そこでしか聞けないことを聞きたい。
なぜその技術を選んだのか
「その技術を選んだ理由は何ですか?」という質問は、エンジニアのキャリアに対するスタンスが一番よく表れる質問だと思っている。
「前の会社で使われていた言語だから」という答えもあるだろう。それは悪い答えではない。でも「使われていたから、そこで学ぶしかなかった。ただ学んでいるうちに、なぜこの言語ではこういう構文になっているのか、設計思想はどこにあるのかに興味を持つようになった」という答えと、「前の会社で使われていたから」という答えには、大きな差がある。
実は、技術そのものはあまり重要ではない。今のエンジニア業界では、言語は次々と変わっていく。Pythonが流行ったと思ったら、今度はGoだ、Rustだと新しい言語が出てくる。その波に乗り続けることはできない。だから大事なのは、その技術に対してどういうスタンスで向き合ってきたかだ。
Codenceで一緒に働くエンジニアには、受託開発の案件に入ることもあるし、SESで客先に常駐することもある。その時々で、使う言語や技術は変わる。だからこそ、「技術に使われるのではなく、技術を使う側にいる」というスタンスが大事だ。
困ったとき、最初に何をしますか
「困ったときや問題が発生したとき、最初に何をしますか?」という質問も、毎回聞くことにしている。
これは本当に答え方がいろいろだ。「ドキュメントを読む」と答える人もいるし、「先輩や同僚に相談する」と答える人もいるし、「とりあえずGoogle検索する」と答える人もいる。
どれが正解というわけではない。でも、その答えの中に、その人の現場力が表れる。例えば、「まずドキュメントを読む」という答えは、マニュアルの整備が充実している大企業出身なのかもしれない。「Google検索する」という答えは、スタートアップや中小企業で、自分で判断する環境にいたのかもしれない。「先輩に相談する」という答えは、そういう雰囲気のチームにいたのかもしれない。
でも大事なのは、その後だ。「最初の一手の後、どうしましたか?」と掘り下げると、その人が本当は何を大事にしているのかが見える。
「先輩に相談した後、その理由を自分でも調べた」と言う人は、自分で学ぼうとする姿勢がある。「ドキュメントに書いてなかったから、コミュニティに聞いた」と言う人は、解決するために柔軟に手段を変える力がある。「結局、その問題は解決しませんでしたが、どうして解決できなかったかを理解することが大事だと思った」と言う人は、学習の視点を持っている。
Codenceのような小さな組織では、一つの問題を解決するために、複数のアプローチを同時に進めることができない。だから、その人がどれだけ主体的に、臨機応変に問題解決できるかが、ものすごく大事になる。
SESの現場では、社内の先輩がすぐそばにいるわけではない。客先のチームに入って、初めて会うメンバーと一緒に仕事を進めていく。困ったときに「とりあえず誰かが助けてくれるだろう」と待っているだけでは、なかなか信頼は得られない。逆に、自分で調べて、考えて、それでも分からなければチームに聞く。そういう順番が自然にできる人は、どの現場に行っても重宝される。
前の現場で、一番つまらなかったことは?
「前の現場で、一番つまらなかったことは何ですか?」という質問は、採用面談ではちょっと変わった質問だと思う。普通は「一番やりがいを感じたことは何か」とか「学んだことは何か」とか、ポジティブな質問をする。でも私は、あえてネガティブな側面を聞く。
これは、その人の成長意欲を測るための質問だ。
エンジニアのキャリアの中には、つまらない業務がある。いや、正直なところ、どの職場にもつまらない業務はある。退屈な作業、意味が見えない仕事、同じことの繰り返し。そういう業務とどう向き合うかで、エンジニアの器が決まる気がしている。
「前の現場では、毎日同じバグ修正を繰り返していた。それがつまらなかった」と言う人がいるとしよう。その後「でも、なぜそのバグが繰り返すのか、設計に問題があるのではないか、そこを改善できたらチーム全体が楽になるのではないかと考えるようになった」と続けば、その人は何か見えていることがある。退屈な業務の中に、改善の余地を見つけ、それに向き合おうとしている。
一方で「前の現場では、やりたくない仕事ばかり割り当てられていた」という答えだけで止まってしまう人は、その環境に工夫の余地があったことに気付いていないのかもしれない。もちろん、ブラック企業のように本当に救いようがない環境もあるだろう。でも多くの場合、その人がどう働くかで環境は変わる。
つまらないと感じたことを、どう捉え直すか。それが成長意欲につながるのだと思う。
私自身も、エンジニアとして客先に常駐していた頃、テスト工程ばかりを任された時期がある。正直、最初は退屈だった。でも、テストケースを書いているうちに、設計の甘い部分が見えてくるようになった。「この仕様、矛盾してませんか」と一言伝えただけで、チーム全体の手戻りを防げたことがある。退屈だと思っていた仕事が、実はプロダクトの品質を守る最前線だったと気づいたとき、仕事の見え方がガラッと変わった。
Codenceは受託開発を準備中だし、SESの案件も様々だ。これからのキャリアの中で、つまらないと感じることもあるだろう。その時に、その人がどういう姿勢で向き合えるのか。それを知りたいから、あえてこの質問をしている。
Codenceを選ぶ理由がなくてもいい
実は、採用面談では「Codenceを選ぶ理由は何ですか?」という質問は、あまり聞かないようにしている。
もちろん、話の中で「どうしてうちに興味を持ったんですか?」という流れになることはある。でも、あえて聞き出そうとはしていない。
理由は簡単。Codenceはまだ1年未満のスタートアップだから、最初から完璧なマッチ感を期待することが難しいからだ。大手企業なら、事業規模も実績も知られているから、「その企業を選ぶ理由」は明確になりやすい。でも、Codenceのような新しい会社では、事業内容だって、どんな環境だって、あまり情報がない。
だからこそ、逆の発想をしている。最初から完璧な理由なんてなくていい。むしろ、一緒に働いてみて初めて分かることがある。その人がCodenceという環境の中でどう成長するか、どう貢献するか。それは実際に働き始めて、初めて見えてくる。
スキルシートに書いてある「JavaScriptが得意」「Pythonが使える」という情報よりも、「この人とだったら、何か一緒に作れそうだ」という感覚の方が、採用では大事だと思っている。
採用面談は選考ではなく対話
面談を終えた後、何人かのエンジニアから「採用試験はありますか?」という質問をもらうことがある。その度に「試験はありませんよ。今の面談で、お互いを知ることがゴールです」と答えている。
採用というと、何か選別されるようなイメージがあるかもしれない。こちらが相手を判断して、合格か不合格か決める。そんなプロセスだと思う人もいるだろう。でも、Codenceではそう考えていない。
私がエンジニアとして面接を受けていた頃、面接官が一方的に質問して、こちらがそれに答えるだけの面談をたくさん経験した。終わった後に「で、結局あの会社はどんな会社だったんだろう」とモヤモヤが残ることも少なくなかった。聞かれるばかりで、聞く機会がない。そんな面接に疑問を感じていたから、自分がやる面談では、候補者からも質問してもらう時間を意識的に作っている。
「何か聞きたいことはありますか?」と最後に聞くのは形式的だし、突然言われても出てこないことが多い。だから、面談の途中で「ちなみに、今の話で気になることがあれば何でも聞いてください」と声をかけるようにしている。そうすると、自然と「SESの案件はどうやって決まるんですか」とか「受託開発の仕事はいつ頃から始まりますか」とか、具体的な質問が出てくる。
面談は、お互いを知るための時間だ。私たちがあなたという人を知るためにあり、同時にあなたがCodenceという環境を知るための時間でもある。スキルシートだけでは見えない部分を、対話を通じて理解する。その過程の中で「ああ、この人とだったら一緒に仕事ができそうだな」という手応えが生まれたら、それは採用に進むし、そうでなかったら、それはそれでいい。
だからこそ、面談では気軽に話してほしい。難しく考える必要はない。もし質問に対して「う、これ採用試験みたいな質問だ」と思われたら、遠回しでいいから「この質問の意図を教えてもらえますか?」と聞いてくれてもいい。そういう質問が出てくること自体が、その人のスタンスを表しているから。
4月は新しい季節だ。転職を考えているエンジニアの中には、まだ何もアクションを起こしていない人もいるだろう。でも、カジュアル面談なら、気軽に話せるチャンスだと思う。スキルシートには書かなかった想いや、キャリアに対する考え方、現場での工夫。そういう話を聞かせてもらえたら、私たちも嬉しい。
もし興味があれば、ぜひ面談に来てください。Codenceがどんな会社か、どんなエンジニアと一緒に働いているか。そして、あなたという人のことも知りたい。
面談は30分から1時間くらいだ。その中で全部を知ることはできない。でも、「この人と一緒に仕事をしたら、何が起きるだろう」という予感みたいなものは、意外と面談の中で生まれる。少なくとも、私はそう信じている。
スキルシートの向こう側に何があるのか。一緒に話してみませんか。