■PEEK-A-BOO川島文夫先生の集大成をプロデュース
僕が手がけてきた仕事の中で印象に残っているのが、2025年7月28日に中国・北京で開催した「THE PEEK-A-BOO GREAT DESIGNERS Premium Super Live-」です。
日本の美容界を牽引し続けるPEEK-A-BOO代表・川島文夫先生によるこのヘアショーは、2016年の台湾から始まり、アジアの各都市を巡ってきました。その集大成となる北京公演。これまではディレクターとして演出を担うことが多かったのですが、このプロジェクトは総合プロデューサーとして参画。ヘアショーの価値を最大限に高めるための新たな挑戦となりました。
■「本物」を届けるために、日本から20人のモデルを連れて
今回の北京公演を計画するにあたって、PEEK-A-BOOには譲れないこだわりがありました。それは、現地調達のモデルではなく「日本で完全に創り込んだヘアデザイン」をそのまま北京のステージに持ち込むことです。日本でモデルを選定し、ヘアカラーを施し、デザインを切り込む。完璧な仕込みをして、20人のモデルを日本から北京へ連れて行く――。イベント運営の常識からすれば、コストも手間もかかる非常に高いハードルです。しかし、川島先生にとって、そしてKBPIにとっても、アジアは今まさに「つながっている」場所。同じ黒髪文化を持つアジアの舞台で、日本が誇る本物の技術を見せる。そこに一切の妥協はありませんでした。
■2年間の「種蒔き」が生んだ、国境を超えた信頼
海外で大規模なイベントを成功させる鍵は、志を共にする「仲間」の存在です。実は、今回のために2年以上も前から現地で「種蒔き」を続けてきました。中国で開催される小規模なセミナーやヘアコンテストを現地の制作会社に依頼。映像ひとつとっても、こちらの意図をどこまで汲んでくれるか。トラブルにどう対応するか。そして、「このチームなら任せられる」と確信したパートナーと、この大舞台でジョインできました。
会場選定も、その信頼関係があったからこそ。彼らが提案してくれた候補の中から選んだのは「800人を集客できる、700平米の倉庫のような空間」。単なる広さや設備ではなく、そこにショーとしての「かっこよさ」があるか。川島先生に「原田くんなら見つけてくれると思った」と言っていただけたとき、プロジェクトの成功を確信しました。
■常識を打ち破る「やぐら」と3倍の照明
ステージ設計には、ディレクターとしての視点を凝縮させました。特にこだわったのは、客席の両サイドに組んだ「やぐら」のような構造です。日本の消防法では不可能な設計ですが、これによって立ち見客も含めた圧倒的な一体感を創り出しました。照明の数も、日本で行うショーの3倍近い量を投入。演出は、20年来の付き合いがある信頼する同僚ディレクターにすべてを託しました。
PEEK-A-BOOのヘアショーは、奇をてらわず、美容師としての真摯な立ち姿を見せるものです。ステージ上で普段のサロンワークと変わらない「本物のカット」がクローズアップされた瞬間、北京の観客の期待を大きく超える熱狂が生まれました。
■裏方こそ、表に立つ人間と同じ熱量を
僕はよく若い世代に伝えています。「イベント制作に関わる人は”裏方”であっても、表に立つ人と同じ熱量を持ってステージを創らなければならない」と。
海外での仕事は、ごまかしが効きません。電圧の細かなチェックから、楽屋に置くティッシュの数まで、リストを徹底的に作り込み、「外国にいる」ことを感じさせない快適な空間を整える。その設計図がしっかり描ければ、イベントは必ず成功します。それを若手に伝えていくのも、私の仕事です。
■「熱いつながり」を世界中につくっていきたい
5年後、10年後、僕はまた新たな挑戦をしているかもしれません。でも、根底にあるのは仲間と一緒に良いものを創りたいという純粋な「文化祭気質」です。関わる全員が「この価値を創っている」と誇れる現場に、これからもこだわっていきたい。
北京で得たこの確信は今、ASEANやアメリカといった次なるステージでの挑戦にもつながっています。単なるビジネスの枠を超えて、魂で共鳴できるチームを世界中につくりたい。そして、若い世代にもこの「熱いつながり」の醍醐味を伝えたい。これが、今の僕が一番ワクワクしている仕事です。