サンガッチョジャパン株式会社が展開するスニーカーブランド『にゅ~ず』が、初の実店舗を京都・河原町にオープンします。
ひらがなの“にゅ”のロゴが印象的な『にゅ~ず』は、「オールハンドメイドの履き心地」を追求するスニーカーブランド。創業当初から、日本の精緻な技術とイタリアの創造性を融合した、独自のものづくりを続けてきました。
今回オープンする京都店は、私たちにとって初めての実店舗であり、今後の店舗展開を見据えた1号店でもあります。国内外から多くの人が訪れる京都で、『にゅ~ず』の世界観や商品をインバウンドのお客様に直接体験してもらう、新たな拠点です。
京都店から世界に届けたい、ブランド体験とは。そして、新しい場所をともにつくる仲間に期待することとは。代表の前田さんにお話を伺いました。
代表取締役 兼 スニーカーデザイナー 前田一輝
1980年、広島県出身。
中学生時代にスニーカーの魅力に目覚め、25年以上のスニーカーコレクター。
中学生の頃には新しいスニーカーを買うために新聞配達のアルバイトを行い、卒業アルバムには「スニーカー屋になる」と書くほどスニーカー好き。経営者を目指しコンサルティング会社で活躍するも、若かりし頃の夢を実現するべく退社。
神戸の靴学校で製作技術を学び、その後、イタリア・フィレンツェへ留学しシューズデザインを専攻。世界には日本文化に関心が高い人が多いことに気づき、和風デザインを用いたスニーカー製作をスタート。
スポーツ選手や著名人からのオーダースニーカーを製作する傍ら、自身のスニーカー製作へのこだわりを多くのスニーカーファンに味わって欲しいと2015年にサンガッチョジャパン(株)を設立。
初の実店舗は京都へ。世界に“にゅ”を届ける1号店
――今回、京都・河原町に初の実店舗をオープンしますね。京都店を出店することになった背景を教えてください。
前田氏:今まで実店舗がなかったので、どこかでお客様とコミュニケーションを取ったり、世界観を共有したりする場がありませんでした。そのため、実際に手に取ってもらえる店をつくりたいと考えました。
前田氏:とくにインバウンドのお客様に、商品を手に取ってもらって、発信してほしいという思いがあったんです。京都は国内外から多くの人が訪れる場所なので、ブランドをより広く知っていただくための拠点としても大きな意味があると考えています。
そもそも、店舗を作る案そのものが、グローバル展開の話から始まったところがあります。どの国にどうアプローチしていくかを考えたときに、まずは店舗を作って、どの国の人がどういうふうに発信してくれるのかを見てから進めた方がいいよね、という結論になったんです。
――京都店は、これからのグローバル展開を見据えた拠点でもあるのですね。常設店舗として構えることで、お客様にどのような体験を届けたいと考えていますか?
前田氏:そうですね、ちなみに最初から京都と決めていたわけではなくて、東京の蔵前や浅草、表参道、銀座なども考えて物件を探していたんです。しかし、なかなか良い物件に出会えず、もう少しエリアを広げて、関西訪問でも探してみようとなったときに、たまたま京都で良い物件が見つかったんですよ。
そんな京都店では、私たちが大事にしている“商品一つひとつを手作りでこだわって作っている”ことや、ブランドが体現する“日本らしさ”を存分に伝えられたらなと思っています。
京都で届けたいのは、富士山でも忍者でもない“もうひとつの日本”
――ブランドを届けていくうえで、前田さんが表現したい「日本らしさ」とは、どのようなものなのでしょうか?
前田氏:日本のカルチャーを表現したいと言うと、すぐに富士山、芸者、忍者、歌舞伎、刀といったモチーフが持ち出されますよね。もちろん、それらも伝統として素晴らしいものです。
でも、僕らが表現したいのはそこではありません。僕たちが青春時代を生きた1990年代、2000年代の、ちょっとサイバーパンクのような感じの…、あの日本独特の色合いを出すことがいいのではないかと思っています。
――なるほど、1990年代〜2000年代の日本のストリートカルチャーやスニーカーカルチャーには、どのような独自性があったのでしょうか?
前田氏:スニーカーカルチャーについて言うと、スニーカーの中古市場って日本から発達したんです。
90年代の日本では、アメリカのフリーマーケットで買い付けてきたジョーダンなどが、中古として古着屋で売られていました。これ、外国の人は、「なんで日本人は使い古したナイキの靴を買っていくんだろう」と不思議がっていたんですよ。彼らは新品を集めるので、使い古した靴をありがたがって買う日本人の感覚がよくわからなかったのだと思います。
この90年代のスニーカーブームが、2010年頃に「第二次スニーカーブーム」として、日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパやほかのアジアにも広がっていきました。
前田氏:僕はイタリアに行くことがあるのですが、現地のスニーカーショップに行くと、日本語のスニーカー雑誌が置いてあるんですよ。当時の雑誌というより、当時を振り返るものや、そこから広がったムーブメントについて書かれたものです。かつて僕らがアメリカの雑誌を見ながら「あ、いいな」と思っていたのと同じ感覚で、海外の人たちは日本のスニーカーカルチャーを見ているのではと思うんです。
―― そうした日本のスニーカーカルチャーの空気感は、『にゅ~ず』の世界観にどのように反映されているのでしょうか?
前田氏:言葉にするのが少し難しいんですけどね(笑)。
ナイキやアディダスなどは、たとえば「力強く、速く、遠くまで」という世界観があると思います。アンダーアーマーであれば、着ると力持ちになった気がするとか、ブランドの世界観がありますよね。
僕の場合は、自分自身が靴がすごく好きで、コレクターとしてたくさん集めているのですが、そんなに履かないんです。飾っておくだけだったり、勉強のために眺めたり。つまりスポーツブランドとは真逆の行動をとってきました。靴の楽しみ方として、そういう形もありますよね。
ナイキやアディダスのように、「力強く、速く、遠くまで」という方向性とは違って、靴を履かずに眺めたり、飾ったりする楽しみ方もある。
そう考えたときに、90年代〜2000年代の日本のストリートカルチャーにあった独特の「リラックス感」とも重なると思ったんです。
だから、別に立ち止まってもいいよ、という靴。僕らが『にゅ~ず』で伝えるのは、そういう世界観がいいなと思いました。
「立ち止まってもいい」と言えるスニーカーをつくりたい
――『にゅ~ず』の思想の根底にある、前田さんにとっての「日本的なリラックス」について、もう少し聞かせていただけますか?
前田氏:僕は、日本の文化こそが、もしかしたら世界でトップクラスのリラックスを持っているのではないかと思うんです。
一般的に“リラックス”というと、何も考えずに体を緩めるような意味合いがあると思います。でも、リラックスって、僕のフィルターを通して日本語にすると、「気を使わせない」「気を使わない」ということなのではないかと。
たとえば、お寿司屋さんに行くと、最初はすごく緊張するじゃないですか。大将も怖いし。茶道やお花、空手道場なども、最初はすごく緊張しますよね。でも、その中にあるルールやマナーを身につけて、お互いにマナーを通して「あ・うんの呼吸」でコミュニケーションが取れるようになると、そこはすごく気を使わずに過ごせる空間になる。それが日本だなと思います。
前田氏:ビジネス界でも、禅をしにアメリカから日本へ来る人がいるじゃないですか。そういう人たちが求めているものも、リラックスなのではないかと思います。僕らが表現したいのは、日本的なリラックスです。
これを店舗に落とし込めたら、すごく面白いんじゃないかと思うんですよ。
スニーカー好きな人だけを求めているわけじゃない
――京都店で働くスタッフには、スニーカーの専門知識が求められるのでしょうか?
前田氏:もちろん、スニーカーが好きな人もあり、です。たとえば「スニーカーを700足持っています」という人も、全然ありです。
ただ、僕は多分ひねくれているからだと思うのですが、たとえばスーツを買いに行って、ものすごくスーツに詳しい人が出てきたら、ちょっと嫌じゃないですか(笑)?
僕は、「自由にやらせてくれよ」と思ってしまうタイプなんです。
なので、ほかの特技がある人なんかがいいと思っています。たとえば「バク転が得意です、今ここでできます」とか、「楽器が好きです」とか。そうすると、お客様とも面白い会話ができると思うんですよね。
――スニーカーの知識よりも、もっと大切にしたいことがあるのですね。
前田氏:はい。一緒に働くのは「素直で、愛嬌が良くて、目の前の人を大切にしている人」がいいです。これは僕が勝手に言っているだけですが、うちの家訓でもあります。ただ、意外とうちに残っているメンバーは、そういう人が多いです。そこがあるからこそ、スニーカーが好きかどうかということの重要度が低くなっているのかもしれないですね。
あとは、スニーカーに限らず、「何か好きなことがある人」がいいと思います。その方が『にゅ~ず』では個性を活かせるのではないかと思うんです。
僕は高校を卒業して、一度就職したことがあって、靴屋で働いていました。でも、嫌でした。売りたくない靴を売ったり、自分とは違う紐の結び方をすすめたりするのは難しかったんですよね。言ってしまえば、僕自身靴に関して“変態”なところがあるので(笑)。
でも、本当に変態並みに何かが好きな人が京都店に集まったら、絶対に面白いですよね。あとは、笑顔がかわいいとか、笑顔が爽やかな人だったらいいですね。
――京都店では、お客様とどのようなコミュニケーションを取れるスタッフが合うと思いますか?たとえば、英語が使えるとか…
前田氏:英語?そうですね、使えたらそれに越したことはないですが、必須ではないですね。今は、Google翻訳なんかもありますから。
それよりも、たとえばお客様によって店内のBGMを変えられるくらい、気の利いたことをやってくれるスタッフがいたらいいですよね。店には、DJブースを置きたいと思っているので。お客様がスニーカーを手に取ったら音楽が変わるとか、すごく面白いと思います。
マニュアルのない1号店で、ゼロからブランド体験をつくる
――京都店は、ブランドにとって初めての実店舗です。その立ち上げメンバーとして入社する方は、どのような経験ができるのでしょうか?
前田氏:京都店は初めての店舗で、マニュアルも何もありません。だから、ゼロイチを作ることができますね。
また、ゆくゆくは店舗展開も考えているので、店舗が増えたときの全体のマネジメントであるとか、出店計画であるとか、経営の戦略的なところにもどんどん関わる人材になっていけるのではないかと思います。
前田氏:僕としては、2店舗目の立ち上げなど、物件探しから内装まで全部任せられたら最高です。
――前田さんご自身も、京都店に立つのでしょうか?
前田氏:多分立つと思います。お店は全部で40坪ぐらいで、2階建てなんですけど、なんなら、倉庫で寝られるようにしておいてくださいと頼んでいます。もちろんスタッフが泊まるという話ではありませんが、それくらい僕も関わるつもりです。
――最後に、京都店の店長候補・販売スタッフに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
前田氏:僕と一緒に働けるチャンスです(笑)。
京都店は、マニュアルも何もないところからゼロイチを作っていく場所です。そこに面白みを感じてくれる方に来てほしいですし、その過程を楽しんでもらえる方がいいですね。
「君は乗り越えられるか。挑戦者求む!」そんなスタンスでお待ちしています(笑)。