中小企業のオーナー経営者にとって、事業承継は避けて通れない重要なテーマです。
少子高齢化やキャリアの多様化などを背景に、親族内に後継者が存在するケースは少数派になりつつあります。また、近年のM&Aトラブル報道を背景に、直近の帝国データバンクの調査などからはM&Aによる第三者承継に対するオーナーの意欲が減退している状況が伺えます。(🔗M&Aに対する企業の意識調査)
当社の調査レポートにおいても、こうした状況を裏付ける結果が示されました。
事業承継の選択肢としてオーナー経営者の支持を最も集めたのは、社内の役職員への承継、すなわち社内承継でした。
🔗「社内承継」が事業承継の第一希望に。最大の壁は「後継者の株式取得資金」と「適格性への不安」
事業承継の選択肢として最優先で検討される「社内承継」ですが、その実現は容易ではありません。
なぜなのか? そしてどうすれば、それを“現実の選択肢”にできるのか。
今回は、当社の代表に、社内承継の支援に取り組む想いを聞きました。
深刻化する後継者不在問題と、増加する親族外承継
作田:中小企業における後継者不在の問題は年々深刻になっており、事業承継が進まないまま廃業へと追い込まれる企業も少なくありません。
帝国データバンクの調査からも分かるように、後継者の就任経路として「同族承継」の割合は減少傾向にあり、M&Aの実施や社内からの昇格といった、親族外承継が増えてきています。
こうした状況の中で、長年会社を支えてきた信頼できる役職員に経営を託す「社内承継」は、多くのオーナー経営者にとって魅力的な選択肢となっています。
それでも社内承継が進まない理由
作田:社内に後継者候補がいる場合においても、社内承継の実現にあたっては様々な障壁があります。
社内承継を進めていくにあたっては、カリスマ的な存在であるオーナー経営者の役割を後継者一人で担うことは難しく、多くのケースでは組織的経営で補っていくことになるでしょう。
社内承継後のガバナンス、経営管理体制をどうしていくかなど、安心して事業を託せる組織を実現するためには乗り越えなければならない課題が山積です。
組織的経営を実現していくためには、透明性のある、数値に基づく意思決定ができるかが重要です。財務・会計データの整備や適時報告を可能にする経理実務を整備していく必要もあるでしょう。
また、社内承継を実現する上で大きな障壁となるのは株式の承継です。
オーナー経営者としては、できるだけ良い価格で株式を譲りたいという想いもあるでしょうし、できるだけ後継者の負担を軽減してあげたいという想いもあるでしょう。株価の設定は悩ましいところです。
金融機関がMBOローンの提供を行なっていますが、社内の後継者候補にいざ話を持ちかけると「借入までして株式を譲り受けたくない」と辞退されてしまうケースも多いようです。
このような株式承継の問題が解消せず、「社内承継も検討したけれど、結果としてM&Aによる第三者への承継を選択する」ケースが数多くみられます。
当社の調査でも、社内承継が進まない理由として、「後継候補者に株式取得の資金がない」ことが社内承継実現の大きな課題の一つであることが示されています。社内承継を実現する上で大きな障壁となる株式の承継問題については、これを解消する新しいソリューションが求められています。
なお、後継者に株式を譲渡せず、経営だけを託していく選択肢も考えられますが、その場合は親族内で株式をどのように相続していくか、相続税負担を軽減するために株価対策をどのように行なっていくか、納税資金をどのように確保するかなどを検討しておかなければなりません。
社内承継の実現に向けては、こうした課題を一つひとつ把握し、それぞれに取りうる対応策を分析・検討し、実行性のある「社内承継計画」へ落とし込んでいくことになります。網羅的に選択肢を棚卸して、最善のものを選択していくにあたっては、ファイナンス、税務、法務、ガバナンス、経営管理など総合的な知見が求められます。ここに、外部の専門家として社内承継を支援するニーズを感じています。
「RISONAL 社内承継」という新たな選択肢
作田:そこで私たちは、社内承継を総合的に支援する「RISONAL 社内承継」という新たな支援サービスを立ち上げました。また、株式承継の課題を解消する独自の新しいソリューションとして、社内承継支援機構株式会社(以下、社内承継支援機構)を子会社として設立しました。
社内承継支援機構が“安定株主”としてオーナー経営者の保有する株式を譲り受け、投資後は役職員を主役とした経営体制の実現を支援します。
属人経営から“チーム経営”への移行を支援し、さらに経営を強く
作田:日本の中小企業では、資本の理論に基づくアメリカ型のトップダウン経営がうまく機能しないケースが散見されます。外部登用の社長が現場からの支持を得られず、逆に反発されてしまうこともあるのではないでしょうか。
社内承継支援機構の目指す事業承継は、会社で長年働いてきた役職員が次の経営を担う中心的存在と位置付けるものです。これまでの企業の想いや文化、取引先との信頼関係を大切にしながら、オーナー経営者が安心して経営を託せる経営体制の構築を進めます。
和を重んじる日本の企業風土においては、こうした承継手法の方がフィットしやすいと考えています。
“第三の選択肢”として社内承継を広げていきたい
作田:これまでRISONALを運営するオーナーズでは、売り手特化のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)として、M&Aによる第三者承継をご支援してきました。活動を通じて様々なオーナー経営者とお会いする中で、親族内承継や社内承継など様々な検討を経てM&Aに行き着く方が多いことを感じていました。
事業承継という大きなトピックについて、より検討段階の上流で悩まれているオーナーをご支援したい。多くのオーナー経営者が求める社内承継の実現を支援したい。そんな想いから生まれたのが「RISONAL 社内承継」です。
私たちはこの取り組みを通じて、「社内承継」を親族内承継や第三者M&Aに次ぐ“第三の選択肢”として広め、「事業承継の総合パートナー」としてオーナー経営者を支える存在になりたいと考えています。
広報担当:今回の取材を通じて、社内承継の実現には、株式の問題はもちろん、経営管理やガバナンス、財務の透明性といった経営基盤の整備が欠かせず、それは単なる“引き継ぎ”にとどまらない、広い視野と計画性を要する取り組みであることがよくわかりました。また、社内承継の大きな壁となっていた株式承継の課題に対して、制度や仕組みそのものをつくって向き合っている点にも、大きな意義を感じています。
社内の信頼できるメンバーに経営を託したいというオーナー経営者の想いを、現実的な手段で実現できる体制が整ったことは、事業承継に悩む多くのオーナー経営者にとって大きな安心材料となるはずです。
社内承継という選択肢が、より実現可能で、前向きなものとして広がっていくことを、心から期待しています。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!