去年の夏、ハウスのスタッフが、扇風機の前から一歩も動かずに休憩していたのを覚えています。
涼しい場所で育てるはずの椎茸が、実は夏が来るたびに一番気を使う作物になっている。
東北という立地で昔はそこまで暑くなかったのですが、年々記録的な暑さが続くようになっています。
椎茸の菌床栽培は、屋内で温度と湿度を管理しながら育てる。
以前の記事でも書いた通り、湿度85から90%、24時間換気という条件を保ちながら育てています。
外の暑さに関係なく安定して育てられるのが、この方法の強みだと思っていました。
でも「外に左右されない」というのは、「外が暑くなるほど、中を冷やすコストが増える」という意味でもあったんだと、数字を見て気づかされました。
気象庁の分析では、日本の夏の平均気温は長期的に見て100年あたり1.38度の割合で上昇しています。2025年の夏は平年より2.36度も高く、統計を開始した1898年以降で最も暑い夏になりました。
しかも2023年、2024年、2025年と3年連続で記録を更新していて、猛暑日を記録した地点数も、これまでで最も多い数になっています。
「今年は特別暑かった」ではなく、「毎年これくらいが当たり前になりつつある」という段階に入っている。
この暑さは、そのままハウスの中の負担に直結します。
農畜産業振興機構の資料によると、施設園芸のコスト構造は人件費が全体の3分の1程度を占め、次に大きいのが水道光熱費、つまり電気代です。
ある施設園芸の生産者の記録では、1年の間に重油代や灯油代、電気代といった動力光熱費が大きく上昇し、肥料費も2倍以上に上がったという事例もありました。
人工光型の植物工場に限れば、電気代がコスト全体の4分の1程度を占めるという試算もあるほどで、電力の値上がりがそのまま経営を圧迫する構造になっています。
椎茸のハウスも例外ではありません。
外の気温が上がれば、それだけ冷房や換気にかかる電気代が増す。
菌床は熱に弱く、温度管理を怠ればすぐに品質が落ちてしまうんです。
そのため夏の電気代は、うちにとっても年々重くなっている項目のひとつで、しかも椎茸は生き物なので、電気代が高いからといって冷房を弱めるという選択肢は基本的にできません。
コストが上がっても、管理の水準は下げられない。
ここが他の業種と違う難しさだと思っています。
断熱を強化する、稼働時間を工夫する、いろいろ試してはいますが、決定打と呼べるものはあまりなく、猛暑という前提そのものが年々厳しくなっている中で既存の設備でどこまで対応できるのかも分からない部分があります。
省エネ設備への投資も検討はしていますが、初期費用をどう回収するかという計算がまだ社内で詰めきれていません。
こういう話をすると、椎茸の栽培技術とは関係ないように聞こえるかもしれませんが、実際には菌床の扱い方と同じくらい電気代やエネルギーの構造を理解している人が現場に必要になってきています。
栽培のプロである必要はなくて、コストのグラフを見ながら、どこにお金をかけるべきかを考えられる人の方が、案外このポジションには合っているのかもしれません。
涼しさを売りにしている食材が、実は気候変動の影響を一番受けやすい現場のひとつになっている。
この矛盾を面白いと思えるかどうかは、人によって分かれると思います。
今取り組んでいるいちご事業に関しても同様で、作物は温度が大き関係するものです。
コストの構造を数字で語りつつ、現場でできることを一緒に考えてくれる仲間を募集しております。
もしも、
少しでも興味がある。
転職を考えてる。
田舎で仕事をしたい。
そんな方はぜひ一度お話をさせていただければと思います。