農業法人に「就職」する人は増えているのか
農業をやる、と聞くと、多くの人は「農家になる」ことを思い浮かべると思います。
自分の畑を持って、自分で育てて、自分で売る。
でも今は、会社員として農業に関わる人が少しずつ増えています。
農業法人に「就職」するという道です。
農家は減り、法人は増えている
今年まとまった2025年の農林業センサスを見ると、全国の農業経営体は82万8千。
5年前から23%減っています。
一方で、法人として農業をやっている経営体は3万3千で、5年前より7.9%増えました。
個人の農家が大きく減る中で、法人だけが数を伸ばしている。
個人の農家で中心になって働いている人は、102万1千人。
こちらも5年で25%減りました。
農家の数が減っても、農地や作物がすぐになくなるわけではありません。
誰かが引き受けなければいけない。
その受け皿になっているのが法人で、1つの法人が抱える仕事はこれからもっと増えていくはずです。
法人が増えれば、そこで働く人も必要になります。
農林水産省のデータでは、農業法人などに雇われて農業を始めた人は、2023年で9,300人。2015年以降、毎年1万人前後で推移しています。
新しく農業を始める人の中で、「就職」という入り方が一つの流れになっているということです。
アメリカではブルーカラーの人気が再燃しているだとか。
就職だから、できること
農業法人に就職するいちばんの違いは、最初から全部を背負わなくていいことだと思います。
自分で農業を始めるなら、農地を探して、設備をそろえて、お金を借りて、それから技術を覚える。
就職なら、その順番が逆になります。
まず現場に入って、技術を覚えて、給料をもらいながら仕組みを知る。
社会保険もあるし、休みも決まっている。
農業に興味はあるけど、いきなり人生を賭けるのは怖い。
そういう人にとって、就職は現実的な入口です。
それに、農業の仕事は畑やハウスの中だけではありません。
出荷の段取り、取引先とのやりとり、商品の見せ方、数字の管理。
法人になると、こういう仕事が「誰かがついでにやるもの」から、ちゃんとした役割に変わっていきます。
農業の経験がなくても、別の業界で身につけた力が生きる場所が増えているということです。
レンチナスも、2023年に法人になりました。
個人経営の頃から、仲間が一人ずつ増えてきた会社です。
伊勢社長は、今の気持ちをこう話していました。
「一人よがりで事業を展開していくっていうことが、今だとすごい虚しく感じるんだよね」
人を雇って、一緒にやる。その前提があるから、就職という入口にも本気で向き合える。
まだ「会社」になりきれていない部分
ただ、法人になったからといって、急に会社らしくなるわけではありません。
農家は特にだと思いますが、仕事の手順は人の頭の中にあることが多いし、教え方も感覚的なことが多い。
評価の仕組みも、キャリアの道筋も、大手に比べたら物足りなさは感じると思います。
大きな農業法人のように、研修制度が整っているわけでもなくまだ発展途上。
その代わり、仕組みを作る側に回れる余地はかなりあります。
現場の手順を言葉にする。新しく来た人が迷わないようにする。
そういう仕事も、たぶん入ってすぐに関わることになる。
いずれ自分で農業をやりたい人にとっても、ここでの数年は無駄にならないと思います。椎茸の現場も、会社が形になっていく過程も、両方を内側から見られるので。
農業に就職するという選択肢を、一度考えてみてもらえたら嬉しいです。