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大学院博士課程と仕事を両立。ビジネスの現場と学術領域を行き来しながら働く【メンバーインタビュー #10】

コパイロツトでは、プロジェクトを推進するための実践的な方法論や、プロジェクトチームのあり方を研究するコミュニティ「Project Sprint Quest(プロジェクト スプリント クエスト)」を運営しています。その中心を担うメンバーの一人が、八木翔太郎さんです。

大学では開発経済を学び、卒業してから総合商社、財団に勤務した後、大学院に入ってイノベーションの研究をしていた八木さん。大学院博士課程に在籍しながら、なぜ二足のわらじをはきつづけているのか。そのきっかけや現在の取り組み、今後について聞きました。

プロフィール

八木 翔太郎

大学院での研究活動と両立する形で2017年に入社。現在は主に社会学や哲学に基づいたプロジェクトマネジメントの理論研究を行っており、その知見を活かしてさまざまな事業やプロジェクトに携わっている。

大学院博士課程に在籍しながら、さまざまなプロジェクトに携わる

—— 現在、八木さんがコパイロツトでどんな業務に取り組んでいるのか教えてください。

八木:今、私の業務の中心となっているのは「Project Sprint Quest」の活動です。方法論の研究をはじめ、実践的なツール開発、プロジェクト診断ツールや各サービスの開発を目的としたもので、2021年4月にスタートしました。

参考)「Project Sprint Quest」公式サイト
https://quest.projectsprint.org/

Questでは「Method(メソッド)」「Expansive(エクスパンシブ)」「Lab(ラボ)」という3つの研究領域に取り組んでおり、私は「Expansive」を担当しています。「Expansive」では、実践者と研究者がともにプロジェクトの原理原則を探究できる基盤づくりを行っています。具体的には、理論研究と実証研究、そして対外発信が主な役割です。

例えばプロジェクトを推進する際「なぜミーティングベースであることが重要なのか?」を説明することが理論研究で、それを実践してその結果をわかりやすく伝えることが実証研究です。だから私自身はこの取り組みを単なる研究活動ではなく、コパイロツトの目指すことや事業内容を、より多くのみなさんに理解してもらうための取り組みとして捉えています。

「Project Sprint Quest」の取り組みを軸に、新規事業のチームに参加したり、クライアントのプロジェクト支援に参加したり、ときにはワークショップを設計してファシリテーターを務めたりすることもあります。

「おもしろい会社がある」大学院に進んだのを機に、コパイロツトに入社

—— 八木さんは現在も大学院の博士課程に在籍しながら働いているわけですが、どのようにキャリアを選択されてきたのですか?

八木:私はもともと貧困問題に興味があって、大学では経済学を専攻し、開発経済やマクロ経済を学んでいました。そのうちイノベーション研究へと関心領域が広がり、もう少し研究を続けたいと思うようになったんです。

ただ、実際に現場のビジネスも経験した方がいいと考えて、大学を卒業したあと一度、総合商社に就職して2年、米財団の日本法人で1年ほど働いていました。

そして2017年に大学院生活が始まったのですが、研究活動と両立しながら柔軟な働き方ができる会社を探していて、出会ったのがコパイロツトでした。

—— コパイロツトの存在は、どのように知ったのでしょう。その経緯と、興味を持った理由を教えてください。

八木:当時、コパイロツトが開催していたイベントをたまたま見つけて参加したことがあったんです。そのとき「こんなおもしろい会社があるんだな」と。

転職するにあたり、当時の研究領域と近く、自分自身の関心が高かったデザイン思考に基づいて活動している会社で働きたいと思っていました。コパイロツトが特に「デザイン思考」という言葉を使っていたわけではありませんでしたが、話を聞いてみると、それをすでに一つのツールキットとして扱っていることがわかったんですよね。

それに……語弊があるかもしれないのですが、話を聞いてみても「結局なにをやっている会社なのか」が、そのときは明確に掴めなかったんです。

—— それで逆に興味を持った、ということですか?

八木:そうです。デザイン思考はすでに使っている。プロジェクトマネジメントが事業の軸であり、それを追求しているのはわかる。でも抽象度が高い話をしていて、哲学に関心があるメンバーもいれば、編集工学に長けている人もいる——私自身がまだイメージできていない、未知の余白をすごく感じました。それで「おもしろい」と感じ、入社を希望しました。


3か月ごとにアイデンティティ・クライシスに直面するも、議論を重ね続けた

—— 八木さんが入社した当時、コパイロツトでは自社内のナレッジマネジメントに注力していました。その中で、八木さんはどのような役割を担っていたのですか?

八木:KMチーム(ナレッジマネジメントチーム)に参加し、社内でナレッジをどのように共有し、循環させていくかを考え、その仕組みを構築することが私のミッションでした。自分たちだけではなく、今後どの企業にとっても、実践知と形式知を行き来することにより、属人性に依存することなく前に進む組織体系を作ることは重要な課題になると感じていました。

ただ取り組み方がとても難しくて、常にKMチームのメンバーと議論しながらも根本に立ち返り、何度も問題設定からやり直していた記憶があります。

参考)2017年頃、コパイロツトが取り組んでいたナレッジマネジメントについてはこちら
https://blog.copilot.jp/entry/dialogue-study-20221024

チームのみんなで学会に参加したり、合宿したりしながら、ベストプラクティスを世の中から引っ張ってきて、それを社内外に広めていくにはどうしたらいいのかを考えていました。よく、ホワイトボードが真っ黒になるまで議論を重ねていましたね。

ただ、自分たちも「そもそもナレッジとは何か?」という問いに何度も立ち戻らざるを得ず、さらに直接的に売り上げを作れるわけではないので、社内のメンバーに対し、KMチームの存在意義や役割を十分に伝えられていない時期もありました。しばらくの間は、3か月ごとにアイデンティティクライシスに直面していたような気がします。

—— 5年間、取り組みを重ねてきて感じている手応えや変化はありますか?

八木:ナレッジマネジメントを必要としてくれる企業が増えたことで、少しずつ実践との境目がなくなりましたね。一方で、ナレッジという概念を経由しないで実践を理解したり改善できるようになってきた現状もあります。ただ、プロジェクト研究についていえば世界的にもまだまだ未踏の領域が多いので、実践側からもっと問い返せることがあると思います。


体系化・言語化だけではなく「体験できる場所」を作っていきたい

—— 八木さんが大学院で研究を続けながら、コパイロツトで働き続ける理由は何でしょうか。

八木:結論としては、学術領域にプラスして実践の現場にもう一つの軸を置いてよかったと思っています。

北欧などでは、社会学者がビジネスの現場でプロジェクトに携わり、実践と研究を行き来しているケースもよくあるんですよね。実際に今年(2022年)の夏、私は研究出張でデンマークやスウェーデンを訪れ、半ば活動家のようにしてプロジェクトを立ち上げながら社会変革と研究を両立している人たちの姿に触れ、大きな刺激を受けました。

▲2022年9月に研究出張で訪れた「Stockholm Resilience Center」(スウェーデン)にて。自己紹介を無茶ぶりされて四苦八苦する八木さん。

八木:「プロジェクト」は、社会において新しい実践が生まれる場所だと思っています。

創発現象であるという意味では、学術的にまだ解明されてないことがたくさんあります。さらに認識でもあり、言語でもあり、心理でも学習でも組織でもあり、社会現象でもある……という意味では、学際的なアプローチを取らざるを得ない領域です。

その点では、実践者でありながら、さまざまな形で実践者や現場と接続しながら研究できるコパイロツトの環境はとても理想的だなと感じています。研究だけでは行き詰まるような学術領域間の壁や盲点、矛盾に対して、現場に軸足があることで確信を失わずに向き合い続けられるのではないか、と考えています。

—— これから先、コパイロツトで挑戦したいことを聞かせてください。

八木:まずはコパイロツトが実践していることを、広くわかりやすく伝えることを目指したいです。ただそれには、これまで当たり前と思われてきた実践観が刷新される必要があるので、言葉によるマーケティングだけでは限界があると感じているんですよね。

これまでは個別の案件でご一緒し、そこで自律的なプロジェクト推進を体感していただくことが、ある意味で当社のマーケティングになっていました。今後はさらに、そうした実践内容を体験してもらえる場を増やしていく必要があると考えています。

—— その一環として、2022年は共創型オンラインカレッジ「Project Climbing Challenge」(以下、PCC)にも挑戦しました。手応えはありましたか?

▲「Project Climbing Challenge」:周囲の人とプロジェクトを共創するため、プロジェクトの「始め方」「進め方」「拡げ方」を共に探究するワークショップ・プログラム。2021年12月-2022年1月に第一期、2022年5-6月に第二期を開講しました。

八木:PCCのプログラムで得た「体験」を通じて参加者のみなさんにさまざまな変化があったようで、逆に私が驚かされたくらいです。

PCCで学んだことで自分の関わるプロジェクトが成功したのみならず、炎上しているプロジェクトのメンバーから相談を受けるようになったとか、役割がプロジェクトマネジメントを飛び越えて全社的な業務改革にまで拡張したとか——みなさんからいろいろなご報告をいただき、一定の成果と、確かな手応えを得ることができました。

—— 他にもいろいろと、新しい取り組みがはじまっていますね。最後に簡単に紹介をお願いします。

八木:一つ目は、新しいプロジェクトアセスメントツール「Zipadee」の開発です。プロジェクト推進を評価する方法を模索する中、チームの状態を可視化し、改善を促すツールとして実証研究と並行して開発を進めていて、2022年3月にα版の提供をスタートしました。このツールのプロトタイピングを通じて、私たちは「プロジェクトメンバーの自律性とは何か」を考え続けています。

二つ目は、社内のメンバーに向けたPodcastの配信です。他のメンバーからの発案で実現したもので、2022年11月にはじまったばかりです。いずれは、社外のみなさんにもお届けできたらいいなと思っています。

この配信は、私の博士論文のテーマであるプロジェクト推進の理論研究について、社内に共有することを目的としています。最近、コパイロツトのインターンで哲学(現象学)を研究している大学院生メンバーも運営に加わり、議論がより深まってきました。彼の思考を経由することで明晰さが増す新しい感覚を味わっていますし、他のメンバーからのフィードバックが思考に輪郭を与えてくれることを、改めて実感しています。

今後もこうした取り組みを一つひとつ積み重ねることで、実践と探究を行き来しながら、さまざまな可能性を探っていきたいと思います。

コパイロツトでは、共にプロジェクト推進を探究、実践してくれるメンバーを募集しています!

コパイロツトは、実践知と形式知を行き来し、その知見を仲間とシェアしながら、「これからの時代に求められるプロジェクト推進のあり方」を実践・探究しています。私たちと一緒に、さまざまな会社のプロジェクト推進に取り組みませんか?

プロジェクト推進アシスタント
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わたしたちは、コパイロツト=副操縦士として、さまざまなプロジェクトに取り組んでいるみなさまと共に走り、共に汗をかきながら、最適な形でプロジェクトが推進できるよう、支援を行っています。また、実践から得た知見をもとにさらなる探究を行い、常にベストなサービスを提供することを目指しています。 パートナーとしてチームに参加し一緒にプロジェクトを推進する、最適なチームづくりや環境構築のためのアドバイスをする、プロジェクト推進を円滑にするツールを導入する、などお客様との関わり方は多岐にわたります。 マーケティングをはじめとするデジタル化プロジェクト、既存事業からの拡張を行う新規事業プロジェクトなどの推進支援や、ナレッジマネジメントの導入支援を担当させていただくことが多いです。まっさらな状態のプロジェクトにおいて0→1で考え始める段階から参画するケースもあります。 わたしたちのプロジェクト推進支援のアプローチは主に3つあります。関わるプロジェクトに合わせて、柔軟にアプローチを変えながら、プロジェクト推進支援に取り組んでいます。 ▼プロジェクト推進支援 コパイロツトのチームがお客様のプロジェクトに参加し、共に実務を行います。プロジェクト推進のためのノウハウを提供する他、複数の関係者や部門をつなぐ役割も果たします。 ▼ナレッジを蓄積する環境づくり/プロセス改善 ナレッジ・マネジメントの手法をベースとし、ミーティングの進行やタスク管理方法の最適化など、プロジェクト推進のためのプロセス改善を支援します。 ▼独自ナレッジ/クラウドツールの開発・提供 コパイロツトでは、実践に基づいた独自のメソッドを開発しています。最新のメソッドをプロジェクトに関わるすべての方に活用いただけるよう、一部をクラウドツールとして提供しています。 コパイロツトの「プロジェクト推進支援」を知りたい方はこちらの記事をご覧ください! https://blog.copilot.jp/entry/copilot-business-20230125 ミーティングを最適化することによりプロジェクトを推進するメソッド『Project Sprint』 https://projectsprint.org/ ミーティング活用クラウドサービス『SuperGoodMeetings』  https://supergoodmeetings.com/
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