株式会社エウレカ(以下: エウレカ)は、恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営する企業です。エウレカにはいわゆるMVV(Mission/Vision/Values)のValuesにあたる3つのValuesがあり、各Valueを体現し、会社に対してより良いインパクトを与えたメンバーを社内のノミネーションに基づいて選出し、CxO陣が最終決定する「Eureka Awards」という制度があります。今回、Awardを受賞された、Customer CareチームのSakagamiさん、CRMチームのSasaminさん、LLM Platform & EnablementチームのNariさんの3名にエウレカのValuesついて語ってもらいました。
👉Sakagamiさん:入社4年目。カスタマーケア(以下:CC)にて外部パートナーとの連携や、FAQ・AIチャットボットの運用をしている。
👉Sasaminさん:入社6年目。CRMチームにて主にマネタイズ施策を担当。
👉Nariさん:入社7年目。社内向けAIツール作成とAI活用推進、プロダクション向けのLLMプラットフォームの運用をしている。
受賞したValueと受賞理由
Be the Driver
Sakagamiさん:外部パートナーの管理では関係者との連携・調整を行い、安定したオペレーション実現に向けた取り組みを主導。タイムリーかつ適切な情報が反映されるよう管理・整備し、運用基盤の維持と改善に貢献。また、AIに関する新しい知識や技術をキャッチアップしながら、AIツールをCC業務に取り入れ、業務効率化や生産性向上に繋げた。常に目的を捉え、既存の方法に囚われることなくより良い方法を模索しながら形にしていった。
Sprint to the Best
Sasaminさん:App内からWeb課金に送客するという新しい施策を、設計・実装・検証・リリース・報告・次の打ち手まで、一切の手を抜かずに最速で駆け抜けて結果に繋げた。「今出せるものは何か」を常に逆算しながら、バックアッププランを用意し、Goが出た瞬間に施策リリースできる万全の体制を整えた。
One Team, No Limits
Nariさん:Pairs Navi(※)を開発し、他チームに使ってもらえるよう、ヒアリングを重ねて実装にまで落とし込んだ。リリース後も機能拡張やUX改善を爆速でリリース。会社全体の仕事効率の底上げに大きく貢献した。
※ Pairs Navi・・・社内の膨大なマニュアルやデータをClaudeと連携させ、欲しい情報を瞬時に探索させながら、高度なアウトプットや作業の自動化を可能にするエウレカ独自の社内特化型AIエージェント。現在はWebアプリとしてメインで提供している。
左からNariさん、Sakagamiさん、Sasaminさん
受賞エピソード
日々の業務の中で自らdriveできたモチベーションとは?
Sakagamiさん:AIに対する好奇心が1番大きいですね。最初は、プライベートでChatGPTに聞くところから始まり、ここ1年くらいでClaudeを使ってアプリを作ったり遊んだり。いろいろ試しているうちに、仕事でも使えるのではないかと思ったのが始まりです。これまでは人がやらなくてはならなかったものが自動化できる。そういう選択肢が増えることがAI活用の面白さですね。具体的には、ユーザーからの質問に自動回答する生成AIチャットボットを導入し、その回答精度や品質のチェック自体も別のAIに担ってもらう仕組みを構築したり、業務トレーニング用に本番画面を模したトレーニング環境を作成しました。ただし、CCでは個人情報の取り扱いがあるので、AIに読み込ませる場合は事前にマスキングするなど取り扱いには注意しています。
プロジェクトを進行する上で、日頃から気をつけていることは?
Sasaminさん:取りかかる作業やプロジェクトに関わる人をまずは把握しています。というのも、自分やチーム内で完結するものとは異なり、ステークホルダーが多いとその分、各担当への確認やレビューが完了するまでに時間がかかります。そのため、確定前であっても、実行する可能性があれば早い段階で「質問ベース」の相談を持ちかけるようにしています。
Nariさん:素晴らしいですね。CRMチームのメンバーは各チームと連携して、情報を引き出しながらプロジェクトを進めていくのが上手だなと思っていました。
Sasaminさん:ありがとうございます。相談を受ける側の負担を減らすため、事前に過去の前例を徹底的に調べ、情報を共有した上で話を聞くという意識を大切にしています。その点では、生成AIのおかげで時間短縮が可能になりました。記憶の断片情報のみしかない場合や、前例とはこの部分は変えたい、最新の実装を確認したいといった場合にもAIに読み込ませると必要な情報を引き出してくれます。もちろんAIによって出た答えを全て鵜呑みにはできないので、自分でも情報源を確認したり、分からないことは人に聞いたりすることも怠らないようにしています。
行動の裏側にある、チームの成果を後押しするための想いがあれば教えてください
Nariさん:昨年頃から生成AIが急速に普及し始め、エンジニアの仕事のやり方が大きく変わったと実感したことがきっかけです。エウレカでは、プログラムの実装と同時にテスト(動作確認)コードも書いたり、コードクオリティの担保のための開発エコシステムへの投資は高水準で行われてきました。生成AIによるコード提案ツールも、その投資をしてきたからこそうまく使ってこれました。
そして今、世間の流れと同様に、自律型のコーディングエージェントを使うのが当たり前の世界になっていて、「AIをどれだけうまく動かして、開発プロセスそのものを再定義できるか」という次のステップへと向かっています。
Sakagamiさん:この変化はいずれエンジニアだけでなく、経理、人事などホワイトカラーと呼ばれる全ての知的労働者に広がりそうですね。
Nariさん:はい、そう思います。世間的にはまだそこまで実感がない部分もあるし、取り組んでいる会社もある。でも、エウレカ、MGとして、そのパラダイム(時代の枠組み)をいち早く掴みに行くようなツールを作る必要があると思いました。社内全体では知りたいことを質問するという形でChatGPTやGeminiがすでに使われていましたが、Claudeの登場によって、調べた社内情報を用いて資料作成をしたり、社内マニュアルを更新したり、定型作業を自動化したりなど、別の高度なアウトプットに簡単に繋げられるようになってきました。ここをもっと体験してほしい。エンジニア自身が感じている働き方の変化を、会社全体でも早めに体験してもらうために。こういった想いで、Pairs Naviを開発しました。
開発する上で常に意識していたのは「使いやすくなければ使ってもらえない」ということです。そこで、インターフェース(画面の見た目や操作感)は、ChatGPTやGeminiの使い心地を踏襲しました。多くの社員がすでに慣れている体験から大きく外れないようにするためです。
エウレカのValuesとは
今回の取り組みを通じて、チームや社内に与えた良い影響とは?
Sakagamiさん:CCの業務においては、ユーザーの言葉とかの文脈を汲み取って自動化するって、結構これまでは難しかったんです。ここ1、2年で生成AIの目覚ましい発展で、抱いていた考え方は自分の中で払拭されたと感じています。最初は、自身の経験の方がAIを使うよりも効率的なことも中にはあって、「本当にAIを使った方がいいのか?本当にできるのか?」と疑心暗鬼になっていた部分もあると思います。ですが、Claudeなどを使って試行錯誤を繰り返し、試したことをチームにシェアすることで、その使いやすさが他の人にも伝わってきたかなと感じています。
Sasaminさん:私は初めての取り組みに対する姿勢をチームに見せられたことが、良い影響になったかなと思っています。他社事例を見つけて上司に提案したところ、「せっかくだから担当してみたら」と任せてもらい、昨年5月頃から今回のプロジェクトを他チームと共に始めました。エンジニアの知識が必要とされるものや法律や規約などの膨大な文章を読んで理解していくという作業は今まで経験がありませんでした。「頑張ればこれぐらい知らない分野でもできるんだ」と他のメンバーに可能性を感じてもらえたのではと思っています。
Valuesが会社の中で生きている、浸透してると感じた出来事は?
Nariさん:僕の場合は、チームで意識していたことがValuesとして誕生したという印象があります。以前所属していたSREチームには「Draw a Blueprint」というチームの行動指針がありました。「手探りで良いから、まずはみんなが真似できるような前例を作ろう」といった意味の言葉です。Valuesの1つである「Be the Driver」は似たようなニュアンスがあると解釈していて、「組織やチームで見た時にできていない部分に投資する」「後に続くものを作る」といった指針として捉えています。自分も周りも継続してきたことがValuesとなって個人的には嬉しかったです。
Sasaminさん:私は「One Team, No Limits」は結構浸透しているのかなと思っています。他チームへ相談した際も、持ち合わせている情報が少なくても「もっと詳しく説明してくれないと分かりません」という回答ではなく、「こうやったらできるんじゃないですか?試してみましたか?」などと私がやりたいことを理解しようとしてくれる、一歩先を聞いてくれるという雰囲気があります。関係ない、同じチームではない、と思っていたらそういう言葉遣いにはならないだろうと。私の課題でも助けよう、一緒に解決しようというマインドを持っている人しかいないのでは、と思うくらいエウレカには素敵なメンバーが集まっています。誰に声をかけても快く話を聞いてくれるので、本当にすごい会社だと思います。エウレカの一員の立場ですが、どこの会社でも感じられることではないので、つくづくそう実感しますね。
Sakagamiさん:そうですね。僕もValuesを振り返ると、エウレカのみんなは自然と体現できているなと感じましたね。今あったお話のように、自分ごととして捉えてくれるメンバーが多くて、Valuesが生きている、浸透していると感じる瞬間があるというより、常にそういう文化があると感じています。
Valuesという共通言語が、仕事のやり方や判断に影響していることは?
Nariさん:Valuesがある上で採用された人たちが集まっているおかげで、可能になっている部分はありますね。AI時代を生き抜くための先取りができているというのも、その1つだと思います。自分の専門性を大事にしつつも固執はせず、AIで可能性を広げて変化に対応していく。AIだけでできるものではなく、AIと専門性を掛け合わせて初めて価値が生まれる。そういう時に「Sprint to the Best」に基づいた行動を取っています。
Sasaminさん:私が所属するCRMチームの「Sprint to the Best」だと思う行動はPDCAの速さですね。一定のクオリティを担保した上で、とにかく試してすぐ結果を見て、翌週には次のABテストをする。そのスピード感はチームではとても意識して取り組んでいると思います。
Sakagamiさん:CCチームでは細かく計画を立てて進めていく部分ももちろんありますが、とりあえず走り出して、走りながら考えるというスピードと品質の両立を意識した仕事のやり方になっています。ユーザー対応においても、クオリティの高さだけでなく、迅速なレスポンスが求められる。仕事をする上での価値観としてもValuesは合っているので、Valuesは体現しやすいものだと感じています。
Valuesを参考にすることは?
Nariさん:評価期間など自分を振り返るタイミングで、Valuesの「The Vibe / Not the vibe」(※)に照らし合わせています。3つのValuesでも全部100点ということはなく、改善点を見つける時に具体的な行動に落としている「The Vibe / Not the vibe」は振り返りに使いやすいですね。例えば「One Team, No Limits」だと「この人をもっとプロジェクトに絡めたら良かったな」「事前にこういう話をしておけば良かった」と気づくことがあります。
※The Vibe / Not the vibe・・・各Valueに定義されている望ましい姿 / 望ましくない姿
Sasaminさん:Valuesを参照して業務の優先順位を立てたわけではありませんが、「The Vibe / Not the vibe」を見てみると、「Speed / pivoting」にある通り、「必要な時には素早くピボットする」というのを意識していたなと思います。というのも、「素早くできるものの中で、最大火力が出せるものを優先順位として1位にする」というよくあるビジネスのマトリックスに基づいて考えるというよりは、今あるCRMの施策で出せるのか、且つ、それを早く出せるのかを念頭に置いています。早く出すためには何ができるのかを考えて、例えば、過去のクリエイティブ(成果が出た実績のあるデザインや文章)を活用して、1からは作らないという判断をする。そのように総合的に考えて優先順位をつけることを自然とやっていますね。
自然とValuesを体現している人が多いのでしょうか?
Nariさん:フィードバックが必要な時はもちろんあって、同じ方向へ進むためにも「The Vibe / Not the vibe」の両方について触れることが大事になりますね。
Sasaminさん:たしかに。「Not the vibe」を明記していることの重要性を感じます。「目指す姿」が書かれてる会社は多いと思うんですけど、「目指さない、これは良くない」というのが明確に書かれている会社は、転職経験がある私にとって、エウレカが初めてでした。「Not the vibe」を自分はやっていないか、という視点で振り返ることが成長に繋がりますね。
Nariさん:完璧な人はいないし、時期によっても、特定のValuesに特化したような行動を取っている時ってあるじゃないですか。どこかを重視すると、別のところが疎かになってしまう。そういう時に一度俯瞰して見つめ直す指針があることにとても助かっています。
Sakagamiさん:こうやって対談していると改めて、エウレカでの在り方の参考や指針になっていると気づけますね。関わりのある外部の方から見ても、我々のコミュニケーションの取り方やスタンスはValuesに則ったものになっていると思います。
もしValuesがなかったら?
Nariさん:「そういう行動は良くないよね」という空気感を持てなくなってしまいますよね。やろうとするプロジェクトが大きいほどステークホルダーは多くなる。そんな中で例えば、自分のことだけやって共有がない人が増えたら仕事はやりにくくなってしまう。MVV(Mission/Vision/Values)が適切に定義されて運用されていることによって、結果を求めて様々なステークホルダーと共に仕事ができている。それが組織として健全化する、良いサイクルを生むことにも繋がっていると感じています。
Sakagamiさん:そうですね。経験豊富でスキルのあるメンバーが多いので、それぞれの価値観でコミュニケーションを取ったり、プロジェクトを進行したりしたらまとまらなくなってしまうと思います。それぞれの実力も出しにくくなるかなと。
Sasaminさん:Valuesを体現している人をノミネートするという仕組みがあることで、自分自身の振り返りのきっかけにも、意識して行動しようという心掛けにもなっていると思うんです。それがないということは、原点となる他者貢献を意識しなくなる予感がします。誰かが見てくれているかもという意識、自分の能力を引き上げていくモチベーションを維持する役割もValuesは果たしてくれていますよね。
受賞した感想
Sakagamiさん:CCの仕事は、プロダクトの下支え的なポジションというイメージで、これまでのキャリアにおいても表彰されることがなかったので、選出していただいて少し驚きました。過去の経験ではいわゆる花形部署が評価される傾向がありましたが、エウレカではチーム関係なく、表に出てない人たちも表彰される機会があるので嬉しいです。評価されることが遠い存在だと思っていましたが、ここではすごく身近に感じます。「皆さん、ありがとうございます」、この一言に尽きますね。
Sasaminさん:私も近しいところがあって。自分が取り組んできたWeb課金は、密に関わるメンバー以外の人たちには理解されにくく、まだ道半ばでもっとやれることがあると思っていたんです。それが受賞に選ばれて、名前を呼ばれた時は、変な声が出るほど驚きました(笑)。人数が少ないわけではないこの会社で、社長が私の顔と名前を覚えていることにも。投票してくれた方、選んでくださったCxOの皆さんにも感謝を伝えたいです。
Nariさん:開発したPairs Naviを評価してもらえるのも嬉しいですが、自分の専門性と掛け合わせて、業務に役立てて向き合ってもらえているのが1番ですね。「うまく使えないな」で終わってしまう企業もあると思うんで。
Sasaminさん:ローンチに向けたテスト期間の時点で、使ってみた人が多かったですよね。
Nariさん:そうなんです。あまり色眼鏡で見ずに新しいものを触ってくれて、やりがいを感じました。便利だと思ったものがしっかり活用されていることに、リテラシーの高さを感じますし、「顧客に最適なクオリティで、最速で届ける」というところを意識している人が多いからこそですね。
対談を終えて
Nariさん:プロダクト開発や新規開発といった、分かりやすく目立つ成果を出したチームだけでなく、僕たちのような「縁の下の力持ち」として組織を支える役割もきちんと評価してもらえるのは、すごくモチベーションに繋がりますね。同時に、これからも頑張らなければと襟を正す思いにもなります。こうして光を当ててくれる「Values Award」という仕組み自体が、本当に素晴らしいなと感じています。
Sasaminさん:私は思っていた以上にAIに助けられているなと改めて感じました。振り返ると、NotebookLMやGleanなど新しいツールを自然と使うようになってきていましたね。Valuesを体現していくためにも、これからはさらに生成AIの活用が欠かせないと思います。
Sakagamiさん:もし自分がPairs Naviの開発者だったら、きっと「便利なツールを作ったぞ」ということ自体に満足して終わってしまっていたと思います(笑)。でも、Nariさんはツールを作って終わりではなく、「エウレカのメンバーがそれを活用した先に、どんな価値がもたらされるか」という未来までを一貫して見据えていました。その視座の高さには、私自身もすごく刺激を受けましたし、勉強になりました。