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エリート街道から降りて収入が1/100くらいになっても、今が一番楽しいと思う理由 (Part1)

まずこの写真について説明すると、アマゾン奥地のカヤポ族の集落で僕の歓迎会を開いてくれた時の一枚です。だいぶ溶け込んでいるように見えますが、こうなるのに、釣った魚を献上し続けて酋長に話しかけてもらえるまで3日費やしています。笑

総合商社での8年間

新卒の時は、一生勤め上げる古風な気持ちで入社して、忙しく出張したり、徹夜とか酔い潰れたりとか、今では想像もできませんがサラリーマンっぽいことをenjoyしていました。ただし入社数年経って、

自分じゃなくてもできるんじゃないか

そう感じる機会が増加しました。これは事実です。ある程度器用で滅私できるタイプであれば、そもそもプロジェクトは磐石の座組みであり、会社の絶大な信頼と資本力を武器にほとんどの仕事を進めることができます。”会社の看板を背負う”ということは一見責任重大で使命感のある表現ですが、裏を返すと”竹井淳平100%では仕事していない”という事になります。ただしそこは器用に自分を納得させながら、仕事に向き合っていました。

ブラジルでの恩師との出会い

2014年、ブラジルに赴任していた時に、ポルトガル語の先生Margaridaから人生観を見直すきっかけをもらいます。Senhora Margaridaは、心と体が自然と繋がっているということを歴史や宗教観から紐解いて理解する、かけがえの無い時間を与えてくれました。彼女とよく議論していたのが、現代社会と資本主義を自然との調和の観点で見つめ直すこと、そしてその分野では圧倒的な sofisticação(洗練性) を誇る先住民Índioについてでした。

ドラクエのような展開

現在急激に減少しているÍndioの中で、とりわけ逞しく歴史を紡いでいるカヤポ族にどうしても会いたくなった僕は、推測される居住エリア(北海道よりは広い)の近くの街São Félixに行ってみます。国内移動なのに20時間もかけて辿り着いた小さな街で、聞き込みを始めました。

カヤポ族ってどこに住んでるんですか?

そう、僕はその時点でどうやってカヤポ族に会えるのか全く分かっていません。たぶん累計100人くらいは聞き込みしました。変な外人相手でも協力的な住人たちの助けもあり、Índioのエリアの近くに行ったことのある漁師に辿り着きます。

1週間あなたと船をレンタルするのでカヤポ族のところへ連れてってください!

こうして、さらに5時間かけて川を登っていき、ついに集落に上陸することができました。

全然近寄ってくれない3日間

当然ですが、普段は外部の人間と接触しない生活を送り、更には見た目も明らかにブラジル人でも先住民でもない僕は、宇宙人寄りの不審者です。恐らく子供たちも親から「近づくな」と禁止令を出されているのでしょう、物陰からずっとこっちを見ています。集落の外れにハンモックをかけて、やることが無いので一日中釣りをして釣れた魚を集落に献上する生活を3日間続けました。そして3日目の夜、20kgを超えるナマズ”Jau”を釣り上げ、この戦利品が遂に彼らの口を開かせます。

お前、何なんだよ?

先住民は、ブラジル政府との領土交渉のため、どの集落にも数名だけポルトガル語を使える人が居ます。酋長(通称”ダニエル”)もその一人で、第一声は当然の質問でした。笑

一転して大歓迎

4日目からは子供の接近禁止令も解禁で朝から夜まであちこち連れ回され、漁や狩にも連れて行ってもらいました。日本では希少なアマゾンの生カカオもバクバク食べます。よく分からないナッツも食べさせられ、硬すぎて僕だけ歯が欠けました笑


最後の夜には歓迎会を開いてくれて、普段は着ない伝統装飾やメイク(1週間落ちないタイプ)、よく分からない踊り(右足をずっと地面に打ちつける苦行のような舞)、大変汚くて発酵しまくったお酒(後日、お腹に蟯虫が育ち入院しました)、ヤバそうな薬草(実際に2時間くらい飛びました)、そして質素だけど彼らの普段の生活からするととても豪勢なディナー(蒸した魚、バナナ、タロ芋、ライスっぽいやつ)、彼らのもてなしが全て自分に向けらているのでもちろん全部完食しました。それが、冒頭の写真です。

人生を変えた質問

資本主義の権化のような仕事をしていて、自分自身も「自己実現と成長が人生の目標!」と言い切っていた僕からすると暇になりそうな彼らの生活を数日間共にして、

毎日同じサイクルで飽きないの?

こう尋ねた時のこと。彼らの答えは、僕がその瞬間まで理性で隠していた入社当時からの疑念を引きずり出し、一瞬で吹き飛ばし、これまで味わったことのないクリアな思考状態をもたらします。

同じことは二度とない。森の緑や風の向きは少しずつ異なり、Rio do Xingu(アマゾン川の源流)が同じ姿を見せることもない。魚のいる場所も、猪が出る時間も違う。子供は毎日数ミリずつ大きくなっているし、老人は毎日死に近付いている。それを見ているだけでも刺激がいっぱいだ。Jay (僕はジェイと呼ばれている) は新しい刺激とか成長とかを追いかけているというけど、その先に何かあるのか?

こんなに sofisticado(洗練された) で、その時の自分の力量じゃ絶対に答えられない質問、長い人生の中で何度もあることではないでしょう。僕は、見えないものを追い求め、闇雲に走った先に何があるのか分からない中で身の回りの大切なものを見過ごしてきたのかもしれない。消し去ろうとしていた記憶を反芻しながら ”…分からない。” と呟いたのを覚えています。Margaridaが言っていた、心と体が自然と繋がる状態になり、その時初めて何の疑問もなく ”そうだ、会社辞めよう” と素直に決断することができたのでした。

実際にそれから会社を辞めるまでにアフリカ駐在を経て1年半ほどかかり、その後は個人で会社を立ち上げて走りながら多くの経験を積み、2019年10月になってやっとhakkenを設立しました。

今は”100%竹井淳平”で仕事できています。毎日が本当に楽しいです。

少しは、彼らのクリアで洗練された思考に追いつけているだろうか。いつかまた必ず行こう。

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