一緒に守ろう。つなげよう。難民の子どもたちの命、そして未来を。
日本では入学や進学、就職など、新たな始まりの季節となりましたが、他方で世界に目を向ければ、紛争や人道危機が続き、故郷を追われたまま、避難生活を続けるほかない人々が多くいます。
世界では、1億2000万人を超える人々が故郷を追われていますが、そのうち5000万人以上が18歳未満の子どもです。
彼らはかけがえのない子ども時代を奪われ、過酷な避難生活を続けています。
また、世界の難民の子どもたちのうち、約半数は教育を受けることができません。
「学校に行きたい」と切望しながら、それが叶わず、未来への希望を失っている子どもたちが多くいます。
戦争、迫害、気候変動
今、子どもたちに何が起こっているの?
「家を失ったわたしは、学校も失った」
サフィアさん(9歳)は、スーダンの紛争で家を追われ、チャドの難民キャンプで避難生活を送っています。2024年8月、大雨で洪水が発生し15日間水がひかず、約1万3000人の難民が深刻な被害を受けました。サフィアさんの学校は8つの教室が破壊され、ほとんどの授業が外の木の下で行われています。
「今、ひどい状況です。私たちは外の、とても暑い中で座らなければならないのです。勉強になりません。」
数字で見る、家を追われた子どもたち
ギニアから舟でイタリア・ランペドゥーザ島にたどり着き、UNHCRスタッフに保護を受けるタラちゃん(4歳)
難民の子どもたちの抱える問題・リスクとは?
スーダン・ダルフールの戦闘を逃れ、チャド国境へ到着したばかりのアブドライくんと母親
知ってください、苦しむ世界の子どもたち
ウクライナ
320万人の子どもに支援が急務
ウクライナ・ハルキウの戦闘の最前線で暮らしていたネリアさん(62歳)は、娘で障がいを持つアンナさん(31歳)、孫のコンスティアンティンくん(9歳)、双子のイワンくんとヴァシアくん(3歳)と避難を強いられました。現在、収入源はネリアさんの年金と子ども手当だけです。
「ひどいトラウマを抱えた双子の息子たちは、到着後、部屋から出ようとしませんでした。戦争を経験してから話さなくなり、他の子どもと遊ばなくなりました」。着の身着のまま到着した一家に、UNHCRはマットレスや毛布、食器等の物資、カウンセリング等の支援を提供し、現金給付プログラムへ登録。子どもたちは子ども向けイベントに参加し、「ようやく元気になり、子どもらしく振る舞うようになりました」とアンナさんは言います。
戦闘による犠牲 2022年の全面的な侵攻開始から約3年。攻撃はやまず、650人の子どもたちが命を落とし、1686人が負傷しました*。ウクライナと周辺国で、約320万人の子どもたちが影響を受けています。(* 国連の統計による)
トラウマ 爆撃にさらされる恐怖、家族との別離、繰り返す避難などにより、多くの子どもたちが心に深い傷を負っており、約150万人の子どもたちがPTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクに瀕しています。
現金給付プログラム ウクライナにおけるUNHCRの活動の中で、現金給付支援は中心となる重要なサポートです。人々は暖房や食料、医療費などの支払いにあてるなど、緊急のニーズに対応できる支援です。
UNHCRはどんな支援をしているの?
激しい戦闘が続く中でも、UNHCRは国連機関やパートナー団体と連携し、最前線へ支援を届けています。
スーダン
世界最悪の人道危機の一つ
イスラマちゃんの祖母、ミリアムさんはスーダンの紛争を逃れ、4人の子と孫たちを連れてチャド国境へたどり着きました。家族の男性のうち7人は殺され、家は略奪されて家畜も殺されました。食料も枯渇し飢饉が始まっていました。子どもたちは、紛争の始まった2023年4月から学校に通っていません。「チャドでは家族が平和に暮らせて、子どもたちは学校に戻れるのでとてもうれしいです。もうスーダンに戻ろうとは思いません。」
スーダンの紛争とは? 2023年4月に勃発した激しい武力衝突により、 1200万人以上*が国内外で避難し、(* 2025年1月時点)激しい戦闘や暴力行為、物資の略奪、性暴力が深刻です。チャドに逃れているスーダン難民約70万人のうち、89%は女性と子どもです。(2024年12月時点)
飢饉ききん スーダン全土で多くの人々が緊急の食料不安に陥っています。2024年8月、北ダルフール州で飢饉が発生するなど、乳幼児をはじめ多くの人々が命の危機に直面しています。
UNHCRはどんな支援をしているの?
ロヒンギャ
世界で最も迫害されてきた民族の一つ
2024年10月。ロヒンギャ難民のウマールくん(3歳)はインドネシア・南アチェの海で救出されました。ウマールくんは母親、2人のおじ、祖母と一緒にボートに乗り、バングラデシュの難民キャンプを出発。そのほとんどが女性と子どもでした。
十分な水や食料もない危険な航海で海を数週間漂い、生き残るために、みな海水を飲むしかありませんでした。
発見される前までにほとんどは体調を崩し、深刻な状況に陥っていました。ボートは陸地にたどり着く前に壊れ、ウマールくんは救出されましたが、3人が航海の途中で疲労と深刻な脱水症で死亡。ウマールくんの祖母もその一人でした。
ロヒンギャ難民とは? ミャンマー西部で暮らしてきたムスリムで、古くから迫害を受けてきました。2017年8月、村の焼き討ちや暴力、深刻な人権侵 害などにより大規模な避難が発生しました。登録された難民は約100万人(2024年10月現在)で、52%が子どもです。
なぜ危険な航海に出るの? 深刻な迫害や難民キャンプの過密した厳しい生活から逃れるため、舟で他国への避難を試みる人々が後を絶ちません。2024年(1月-10月)は7017人が航海を試み(2023年比で257%増)、約7割が女性と子どもです。2024年は航海中に227人が死亡または行方不明となり、性暴力や搾取等の深刻な被害も報告されています。
UNHCRはどんな支援をしているの?
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、 難民の命を守り、保護する機関です。
UNHCRは、シリア・アフガニスタン・ウクライナなど世界中で家を追われた難民・国内避難民を支援・保護し、水や食料、毛布などの物資の配布や、難民キャンプなど避難場所の提供、保護者を失った子どもの心のケアなど、最前線で援助活動に尽力しています。1991年から10年間、緒方貞子さんが日本人として初めてUNHCRのトップである国連難民高等弁務官を務めました。
※紛争や迫害などのため命の危険があり、国外へ逃れた人を「難民」、国内で避難している人を「国内避難民」と呼びます。
国際情勢が激しく揺れ動く時代、今、私たちにできること
避難を強いられる人の約40%は18歳未満の子どもです。フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「私たちは国際情勢が激しく揺れ動く時代を生きています。現代の紛争は、人々に深刻な苦しみをもたらし、脆弱かつ悲惨な状況を生み出しています」と訴えます。
日本から届ける支援は、避難を強いられた人々を援助するUNHCRにとって、なくてはならない支援です。継続的な支援を続けていただくことにより、迅速な緊急援助、水・食料の安定した供給や、長期の資金計画が必要な学校教育や難民への職業訓練や自立支援などを進めることが可能となるのです。故郷を追われ難民となった人たちは、極限の状況下で支援を待っています。
ひとりでも多くの難民となった人たちに寄付という形で支えていけるよう、私たちは今日も街頭で一人ひとりに声をかけています。
「今日、ここで、あなたと会えたから一歩踏み出すきっかけになった」。新たに国連難民サポーターに参加くださる方からのお言葉です。
ひとつひとつの積み重ねが大きな力となって、難民の命を救うことができる。
日本から届ける難民支援。私たちと一緒に難民支援の輪を広げていきませんか?
/assets/images/658500/original/4c50af79-1b13-4ad1-bfc6-8664da746abc.jpeg?1476948949)