こんにちは、iTipsの若林です。
「日本で働くことを夢見るインドの若者を育て、人手不足に悩む日本の現場へ」 。
私たちの事業は、社会的意義があり、時代の流れにも合った取り組みだと評価していただくこともあります 。一言で語れば、たしかにそう見えるのかもしれません 。
しかし、日本での立ち上げ初期にあったのは、「実績ゼロの夢」を売るともいえる、地道な開拓の日々でした。
そして今、延べ入学生は200名を超え、インドの職業訓練校には100名近い生徒がいます 。
日々の厳しい訓練の中で、皆が必ずしも日本で働くことになるとは限りません 。しかし、壁を越えて日本で働くことを夢見る彼らの進路を切り拓いていくこと——それが日本にいる私たちの役割であり、任務です 。私たちはこの任務に邁進しています 。
今回はiTips日本チーム立ち上げ当初から進路開拓(就職支援)を担ってきた永瀬さんにインタビュー 。 元・大手商社マンでありグロース期のベンチャー経験もある彼が、なぜiTipsを選び、どうやって初期の卒業生の進路を開拓したのか 。
「夢」だけでは語れない、リアルな挑戦に迫ります。
「インドに興味なし」。それでもここを選んだ理由
永瀬さんのキャリアは、いわゆる「王道」から始まりました。 新卒で大手専門商社に入社して経験を積んだのち、その後、急成長中のベンチャー企業に転職。大手企業とベンチャー企業それぞれで幅広く営業職の経験を積んできました。
そんな彼が次のキャリアに選んだのが、まだ実績をつくりあげていく過程にあったiTipsでした。 当時の永瀬さんは実はインドや人材業界に強い思い入れがあったわけではなかったそうです。
永瀬: 「本音を言うと、最初はインドに1ミリも興味がありませんでした(笑)。 でも、ベンチャー在籍時代にふと思ったんです。『1,000台、2,000台売れました!』という急成長フェーズも楽しいけれど、ある程度組織が出来上がっていて、どこか物足りなさもあった。 もっと初期の、何も整っていない荒野で、ゼロから市場を作るような挑戦が欲しかったんです」
そんな時に出会ったのが代表のラトネッシュ。「日本の立ち上げメンバーを探している」という言葉と、なによりその圧倒的な熱量、そして自分にはない経験を積んできた点に強く刺激を受け、「この人と一緒に働けば、これまでにない挑戦ができる」と直感したと言います。
「夢」を語るのをやめた日
覚悟を持って入社した永瀬さんを待っていたのは、想像をはるかに超える厚い壁でした。永瀬さんの入社当時、iTips職業訓練校卒業生の来日実績はまだゼロ。
永瀬: 「アポに行くと、社長さんたちはみんな『素晴らしい事業だね』『いいことやってるね』と褒めてくれるんです。でも、そこで話が終わってしまう。 『で、実績は?』『本当に定着するの?』と聞かれると、採用の決断には至らない日々が続きました」
人手不足に悩む企業にとって、採用は死活問題。どれだけ「国際貢献」や「若者の夢」を語っても、現場のリスク(現実)が見えなければ決断できません。日本の建設業界では長年人材不足が社会課題となっていて、外国籍人材の採用は当たり前になりつつありました 。だからこそ、国全体として未開拓であったインドからの人材採用には慎重になっていたという背景も 。
そこで永瀬さんは、代表のビジョン(夢)を借りて語るのをやめました。 その代わり、徹底的に「現実」と「実務」で勝負するスタイルに切り替えたのです。
実績ゼロを突破した「3つの工夫」
永瀬さんが実行した具体的なアプローチは、非常にロジカルで実践的なものでした。
1. 「現実的な安心材料」を揃える
「想い」だけでなく、相手が気にしている「特定技能制度の仕組み」や「訓練カリキュラムの詳細」、そして「iTips卒業生の無借金来日という取り組み」を、誰よりも詳しく説明するようにしました 。
さらに、インドやインド人材についての特徴も徹底的に学び、その文化や価値観、働き方の特徴まで含めて伝えることで、受け入れ後の具体的なイメージを持ってもらえるように工夫しました。
2. 広く伝え、深く対話する。「出会いたい企業」に届く導線づくり
名刺交換した企業様へ一社一社アプローチも続けましたが、制度に詳しい方でないと「教育重視」「無借金来日」というiTipsの特徴はすぐに伝わりにくい 。いわゆる「外国人紹介会社」と一緒くたに見られてしまい、本当に出会いたい企業にたどり着くのが難しい局面もありました 。
そこで、地域の中小企業を支えている銀行や商工会議所にアプローチしました。
「御社の融資先の建設会社さんが、人手不足で困っていませんか?」人手不足が社会課題化しているという背景事情を逆手にとらえ、多くの企業と関係性のある銀行や商工会議所などに話を持ちかけることで、まずは私たちの取り組みを深く理解いただき、卒業生の就職先候補となる企業と出会える導線(つながり)をつくりました 。
金融機関や商工会議所、ゼネコンと連携して多くの企業に一度に情報を届ける場もつくりました。例えば、講演では、理念だけでなく、制度の仕組みや受け入れの実務、インド人材の特徴まで具体的に伝え、「いい事業ですね」で終わらせない工夫をしました。そして、興味を持ってくださった企業には、一社一社と丁寧に対話を重ねていきました。現場の課題や採用状況を聞き、それぞれに合わせた提案を行いました。広く認知を取り、個別の対話で信頼を積み重ねる。この流れによって、商談の質が少しずつ変わっていきました。
話をすると誰もが「いい事業ですね」と言ってくれる、というそれまでの永瀬さんの実体験があったからこそ、つながりを通じた関係性づくりが必ず結果につながるはずだと確信できたそうです。
3. 信頼をつかむ決め台詞「我々も同業者です」
永瀬: 「実はこれが一番刺さりました。iTipsは人材育成を軸にした会社であると同時に、インド現地で建設業も製造業も行っています。『実は我々も、現場をもつ会社なんです』と伝えると、社長の目の色が変わるんです。 『現場の痛みを知っている同業者』として、同じ目線で話ができる。そのために僕自身もインドへ行って、自分の言葉で語れるようにしました。これがiTipsだからこそ手にしている、信頼獲得の鍵でした。
こうした工夫の結果、卒業生の来日実績がまだない時点から、少しずつ具体的な興味関心を寄せてくれる日本企業との関係性がうまれました。結果として、2025年は32名の卒業生の就職先(採用枠)を日本で確保することができました。」
「阿吽の呼吸」から「チーム戦」へ
現在、iTipsは事業拡大の真っ只中。 永瀬さんは「進路開拓」という枠を超えて、契約後の書類作成から、来日した卒業生の生活サポートまで、あらゆる業務に携わっています。
永瀬: 「これまでは創業メンバーの『阿吽の呼吸』で、あらゆるトラブルをモグラ叩きのように解決してきました。 誰の担当か?なんて関係ない。目の前の課題を解決するために、全員が動く。また、iTipsの事業は日印の連携があって初めて成り立ちます。現場だけで完結できない課題も多く、常にインド側と連携しながら進めていく必要があります。何か問題が起きたときは、代表にも即座に相談し、短い時間で一緒に最善の方法を導いていく。1日1日を無駄にしないそのスピードと柔軟さが、iTipsの面白さだと思っています。」
しかし今、新しいメンバーが増えたことで、その「阿吽の呼吸」だけでは通用しなくなってきているのも事実です。日本とインド両方のチームがスムーズに連携できるよう、暗黙知をルールに変え、誰でもがんばれる仕組みを作る。永瀬さんは今、事業の中核を担うひとりとして、その「組織づくりの過渡期」を楽しんでいます。
取材後記:どんな人が向いているか?
インタビューの最後に、どんな人と一緒に働きたいかを聞いてみました。
永瀬: 「整った環境や、マニュアル通りの仕事を求めている人には、正直向いていないと思います。 でも、『自分で形を作っていきたい』人にとっては、ここは最高の環境です。 僕らは今、インドの若者の人生と日本企業の未来という、二つの『重たい現実』を背負って走っています。この手触り感と緊張感にワクワクできる人と一緒に走りたいですね」
今回、永瀬さんの話を聞いていて、私の頭に浮かんだのは「ラグビーチーム」の姿でした。
「営業だから」「事務だから」というポジションに縛られず、目の前のボール(課題)を拾い、汗をかきながらゴールへ向かって全員で走る。 それはまさに、iTipsが掲げるミッション「すべてのがんばる人に、幸せを」というトライを決めるための、一丸となったプレイそのものです。
「インドに興味なし」から始まった永瀬さんの挑戦。 それは今、インドの若者の就職難と日本の人手不足という社会課題に対する確かな「希望」に変わろうとしています。
あなたも、この地道にも熱いチームで、私たちと一緒にスクラムを組みませんか?
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