医療×DXで社会課題に挑むメディフォン。外国人患者受入れ支援サービス「mediPhone」のコアとなるのは、祖業でもある“医療通訳”です。医療の現場と通訳者をつなぎ、支える多言語サポートチームの皆さんは、どんな想いをもってこの仕事に取り組んでいるのでしょうか。
今回は、マネージャーの嘉野さん、副マネージャーのユーリャさんとランジトさんにお話をうかがいました。
―まずは、みなさんの自己紹介と現在の役割について教えてください。
嘉野さん:2024年4月に入社し、現在は多言語サポートチームのマネージャーを務めています。業務は多岐にわたり、通訳者のコーディネート、通訳者対応、品質管理、採用をはじめ、受診前の相談から医療機関の検索・予約、医療機関や薬局での通訳まで、一気通貫でサポートするサービス「mediPhone Assistance Line(以下、「MAL」)」経由での個人からの入電対応、医療通訳・一般通訳対応などがあります。
副マネージャーや担当メンバーに任せながら、全体が円滑に回るよう統括するのが私の役割です。
ユーリャさん:2023年4月に新卒で入社し、今年で3年目です。現在は副マネージャーとして、日々のコーディネーター業務に加えて、医療通訳や翻訳、各種業務の管理を担当しています。
ランジトさん:2024年6月に入社しました。私も副マネージャーとして、コーディネーター業務や「MAL」の対応をしています。また、ネパール語の医療通訳・翻訳も担当しています。
嘉野さん:多言語サポートチームの特徴は、メンバー全員が「通訳者でもあり、コーディネーターでもある」ことです。現場を知っているからこそ、通訳者の気持ちが分かる。その共通体験がチームの土台になっています。
―みなさんがメディフォンに入社された経緯を教えてください。
ユーリャさん:母国・ロシアの大学では日本語学科に在籍し、通訳や翻訳を専攻していました。将来は日本で働きたいと考え来日しました。医療通訳に関心を持ったのは、医師である母の影響です。幼い頃から医療が身近で、一時は医師を目指したこともありましたが、「外国語を使いながら医療に関わる道」として医療通訳を選びました。大学院進学後の就職活動でも医療通訳一択で、最終的に現場に立てる環境としてメディフォンを選びました。
ランジトさん:私も大学時代に日本語を専攻し、交換留学をきっかけにネパールから来日しました。家族の多くが医療関係者で、自分も医療に関わりたい思いがありました。一度は別業界に就職しましたが、転職を考えた際にメディフォンと出会い、「言語を活かして医療に貢献したい」という気持ちを改めて実感し、入社を決めました。
嘉野さん:前職は病院の医療事務です。その中で「mediPhone」を知りました。海外で自身が医療通訳に支えられた経験があり、「言葉が通じる安心」の大切さを実感しました。医療に関わり続けたいという思いの延長線上に、メディフォンがありました。
▼嘉野さんのインタビュー記事はこちら
「言葉の力で誰かを支える」─多言語サポートチームが拓く、医療通訳の未来
―ユーリャさんとランジトさんは医療通訳も担当していますが、一般通訳との違いをどのように感じますか。
ユーリャさん:一番大きいのは、患者さんやご家族の心境です。医療通訳は命や健康に関わる場面に立ち会うため、正確性は絶対条件ですが、それに加えて精神的な負担にも配慮しながら言葉を選ぶ必要があります。責任は重いですが、過度に意識しすぎず、「正確に、冷静に」を軸に、気持ちに寄り添うことを大切にしています。
ランジトさん:また、文化や価値観の違いも大きく、単なる言葉の置き換えでは不十分です。医師と患者さん双方を尊重し、どちらにも偏らず正確に伝えること。それが医療通訳の責任だと感じています。
ーAIの発展も著しい中で、あえて“人が通訳する”ことの重要性について、どのように考えていますか。
嘉野さん:「mediPhone」でも機械翻訳サービスを提供しており、テクノロジーの活用は重要です。受付での精算など定型的な内容であれば、機械翻訳で十分対応できる場面もあります。
ユーリャさん:ただ、診察の場面では状況が大きく異なります。既往歴が複雑だったり、痛みや不安から話が整理されていなかったりすることも多く、母語でない言語で必死に説明する中で、文法や語順が崩れることもあります。そうした場面では、「何を伝えたいのか」という意図や感情を汲み取り、医療現場に適切な形で再構成する力が求められます。
ランジトさん:医療通訳は変換作業ではなく、文脈と背景を含めた橋渡しです。だからこそ、最終的な判断と責任は人が担う必要があると考えています。
―では、通訳者のコーディネーター業務についても教えてください。
ユーリャさん:主な業務は、電話やビデオで入る依頼を受け、内容を確認し、適切に通訳者をつなぎます。即時対応、予約手配、問い合わせ対応など様々です。
ランジトさん:あわせて、通訳者側の不安や懸念にも対応し、必要に応じて医療機関とも連携します。
嘉野さん:1日の入電は約200件。在留外国人と観光客が半々で、観光シーズンは特に依頼が増えます。個人案件では複数回のやり取りが発生することもあり、件数以上に調整業務は多岐にわたるんです。
ー日々の対応で蓄積される判断基準やノウハウは、チームとしてどのように仕組み化・共有していますか。
嘉野さん:私たちのチームには、「今何をしているかを常に共有する」文化があります。Slack上で対応状況や、案件の背景、判断内容も含めて、重要なケースや学びの多い事例は自然と共有され、「この場面ではこう対処するのか」といった気づきが蓄積されていきます。
ユーリャさん:実際の事例から学ぶ文化が根付いていて、例えば私は日本語が母語ではないので、よく嘉野さんの対応を聞きながら表現や判断の仕方を学んでいます。
ランジトさん:私も入社当初は他のメンバーの対応を聞いて学びました。イレギュラーが起きた際もすぐに共有し、チームで相談しながら解決します。誰か一人が抱え込むことはなく、常にチームで対応しています。
―これまで対応した案件で、印象的なエピソードはありますか。
ユーリャさん:正直に言うと、すべての案件が印象的ですし、緊張感があります。私は特に不妊治療や新生児科の通訳は、ご家族の想いが強くあふれる場面が多く、その重みを毎回感じます。先端医療の説明も多く、学び続ける姿勢が求められますが、その分やりがいも大きいです。
ランジトさん:どの案件も正確に伝えられるかを常に意識しています。産科は一見対応が穏やかそうでも、実際は難しいケースも多く、命に関わる分野だからこそ気を抜けません。
嘉野さん:「mediPhone」は、不妊治療から出産、がんのインフォームド・コンセント、重篤な疾患、そしてお看取りや火葬、海外へのご遺体搬送まで、命にまつわる医療の始まりから終わりまでを支えています。
その分、どの案件にも強い緊張感がありますし、通訳者の方々も高い意識を持って対応していると感じます。
―仕事を続ける原動力になっているものは何ですか。
ランジトさん:「MAL」では、受け入れ先の病院が見つからないこともありますが、何度も電話をかけ、調整を重ねます。見えないところで困っている患者さんのためにチームで動いている、その実感が続ける力になっています。
ユーリャさん:私たちは全員、通訳の現場を経験しています。だからこそ、患者さんの気持ちも、医療機関の立場も、通訳者の重圧も理解しています。
通訳者を支えたいという気持ちと、患者さんの役に立ちたいという気持ち。その両方が、この仕事を続ける理由になっていますね。
嘉野さん:多言語チーム全員に共通していると思いますが、現場で通訳者の方が真剣に向き合っている姿を見ることが一番の原動力です。私たちは、その通訳者を最大限サポートしたいと思っています。
▲多言語チーム・執務スペースでの様子
―今後のチームの強化ポイントと、これから大切にしていきたいことを教えてください。
ユーリャさん:今後強化していきたい点は、「属人化しない仕組みづくり」です。
誰が対応しても一定水準で対応できる体制をつくること。それがチームとしての安定性を高めると考えています。
今後はチームメンバーの増員や、希少言語の通訳者採用を進めることで、さらに強い体制を築いていきたいと考えています。
ランジトさん:常に意識しているのは、「一人で対応しているようで、実はチームで動いている」ということです。
コーディネーターとして一人で電話を受けていても、その後ろには必ずチームがあります。難しい案件は、みんなでフォローします。その意識をこれからも大切にしていきたいです。
また、最近はサービスの利用も増えており、英語や中国語でも対応が逼迫する場面が出てきています。希少言語だけでなく主要言語も含めて、ニーズに耐えられる体制強化が今後の課題です。
嘉野さん:私たちの最大の強みは、全員が通訳者でありコーディネーターであること。
通訳者として現場を経験しているからこそ、通訳者の気持ちが理解できますし、外国語を理解しているので、トラブルが発生した際にもすぐにフォローができます。
一人で電話を受けているように見えても、背後には必ずチームがいる。そしてその先には、真剣に現場に立つ通訳者の方々がいる。
その方々が安心して力を発揮できる環境をつくること。それが、私たち多言語サポートチームの役割だと思っています。