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SmartHRの宮國さんにHRxTechの裏側を「聞いてみた」

これまで社内の人物やプロジェクトを紹介してきた「メドレー平木の気になるあの人に聞いてみた」シリーズ。このコーナーを活用して色んな会社のエンジニアの面白い話を紹介できるかも?と「xTech仲間」なSmartHRさんに相談したところご快諾をいただき、早速オフィスにお邪魔してきました!平木を歓迎してくれたエンジニア・宮國さんから、HRxTechの深遠な世界の話を聞いてきました。

株式会社SmartHRさん

煩雑な人事労務業務をペーパーレス化し、役所への申請もweb上で可能にするクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供しています。

・チームの人数:12人(6月末現在)

・構成:機能ごとにチームに分かれている。デザインチームと連携しながら開発を進めている

宮國 渡(@gongoZ)さん

沖縄で8年間SIerをした後、株式会社SmartHRへ。クラウド人事労務ソフト「SmartHR」の開発メンバーとして、コア機能の開発・実装に携わる。

沖縄→東京へ。入社のキッカケはTwitter

(平木)なんていうか、急な訪問を受け入れて下さりありがとうございます。

(宮國)いえいえ(笑)ようこそ。

(平木)宮國さんはSmartHRさんに入ってどれくらいなんですか?

(宮國)去年の9月に入社したんです。それまでは、沖縄県でSIerをやっていました。もともと沖縄出身なので、新卒でその会社に入り8年ほどグループウェアのパッケージの開発、それに付随するオプション開発やカスタマイズなどをやってましたね。

(平木)では、そこからいきなりSmartHRさんへ転職したということなんですね。

(宮國)ふと「転職しよう!」と思い立ちまして、まず会社に辞めることを伝えて。Twitterで「次に働く場所を探してる」って言ったら、弊社の人事から連絡がきたんですよ(笑)。他にも何社かお声がけいただいていたんですが、その中でSmartHRを選びました。

(平木)人事のフットワークすごい。そのような形で入社されてみて、今の会社の雰囲気とかってどう感じてますか?

(宮國)前職と比べて開発チーム内ではそこまで変化を感じませんでしたが、職種を超えて、全社が一つになってサービスをよくしていこうとする感じはすごく新鮮でした。Slackも基本はオープンチャンネルばかりで、色々なところのやりとりを覗ける。

(平木)なるほど、そういった点はやっぱり違うんですね。メドレーでもやっぱりほとんど全てのやり取りが、Slackやesaなどで可視化されてるのは自分も良いなと思った点でした。

(宮國)あと、新しいプロダクトやアプリケーションを作る時のプロジェクト名称も、全社allのチャンネルで全社員から募集します。

(平木)えっ、それは面白い!

(宮國)うちはOSSの名称を日本の工芸品から名付けるルールがあって、「kirikoとかはそういった経緯で決まりました。それから「kiji」「tsubaki」など。ですが、あまりルールに縛られずに、大喜利みたいな感じでコメントや案がガンガンでてきますね。そういった中から選ばれたりもします。

(平木)御社が出してるOSSの名前はそういうので決まっていたのかー。

国のルールをどうプロダクトに落としていくか?

(平木)実際に入社してみてHRxTechならではの難しさとかを感じる場面ってありますか?

(宮國)SmartHRの機能の一つである社会保険の手続について、国が指定する申請書類の様式が、3月5日からガラッと変わったんですね。4日までは旧式で、5日の0時から一斉に変わるんです。これに合わせて、SmartHR内で使用しているフォーマットも全て変更しなければいけませんでした。こういう仕事は前職ではなかったなあと思います。

(平木)確かに。医療の世界でも、例えば2年に1回の診療報酬改定など、市場全体に影響があるルールの変更が定期的におこるんですが、こうやってプロダクトや会社の外でルールやスケジュールが決まるのはxTechならではですよね。

(宮國)規格が統一されていない苦労もあります。例えば、労務担当がその企業が属する健康保健組合に提出する書類も、健保の種類によって必要なデータや紙上表現が変わってきます。SmartHRの画面上の見え方は統一しつつも、印刷する書類は健保の指定したフォーマットと同じになるよう裏側で振り分けるような開発をしていて、これはSmartHRの目玉となる機能ではあるんですけど、大変です……。

(平木)ああ、分かります……!メドレーが4月からリリースしたクラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」でも、外部システムとの連携を進めているんですが、やっぱり色々な規格に対応しないといけなくて。どう落とし込んで、ユーザが使いやすい実装していくかは、ある意味エンジニアの腕の見せ所ですよね。

ユーザーからの要望は、社内の労務のプロと連携して検討する

(平木)そうやって標準化されていないものをシステムにしていくプロダクトだと、個別にカスタマイズしてほしいって話も来ませんか?うちのオンライン診療アプリ「CLINICS」も、全国の様々な診療科で利用されているので、けっこうリクエストをいただくのですが。

(宮國)やっぱり色々いただきますね。SmartHRも基本はカスタマイズはしない方針ですが、同じような要望を一定量いただいたタイミングで、本質的な改善事項なのかどうか検討するようにしています。あとは、リリース当時は数名〜数十人規模の専任の人事労務担当者がいないようなIT企業が使うことを想定していたのが、最近では数千人、1万人規模の非IT企業様に導入いただくことも増えて、パフォーマンスが足りないということへの対応も増えて来ています。

また、ユーザーによって課題も様々で、「スマートフォンを持っていない」「そもそもメールアドレスを持っていない」という場合もあり、抜本的な設計の見直しも何度か行いました。

(平木)導入企業の規模によって大きく変わるって、普通のWebサービスではけっこう珍しい概念ですね。そういう色々な対応事項がある中で、どれからどうやるべきかっていう進め方は決まってるんですか?

(宮國)まず、社内外から出てくる要望や不具合報告を、各チームがタスク管理ツールに起票していきます。緊急のものを除いては、その起票されたチケットを見ながら、週に1回、営業やマーケティングなども含めた全てのチームリーダが集まり、「これは会社としてやるのかやらないのか」「やる場合はいつやるのか?優先度は?」を判断します。

そこで洗い出された「(優先度の高い)今週やるタスク」を見ながら開発チームがミーティング内で話し合って仕様に落としこみ、開発を進めていくという形です。

(平木)人事労務業務に本質的に必要な改善から実施していく、というのが一つのポリシーだということですね。

xTechこそオープンソース化が必要な分野

(平木)SmartHRさんは、kiricoを始めとして色々自社業務で使われている機能をOSSとして公開してますよね。

(宮國)kiricoもそうなのですが、主に電子申請に関するものを公開しています。SmartHR の電子申請機能は、電子政府の窓口である「e-Gov」というシステムの Web API を利用しています。もともと紙で行っていた手続きをそのまま API 化したこともあってこれが結構複雑なんですね。仕様書も膨大です。

しかし本当につらいのはそこではなく、インターネット上に知見が転がっていないことです。よくある Webサービスやツール、プログラミング言語であれば「◯◯で困ったので、こうやって解決した」といった、企業のみならず個人発信の情報が豊富です。

ですが、社会保険や労働保険の手続きといった特性上、そういった類の情報はほとんどありません。こういった「壁」を感じるとプラットフォームが使われない状態が続きやすく、ユーザからのフィードバックがなくて改善されないという悪循環に陥ってしまいます。

そこで、まずは多くの人に使ってもらえるような環境を整えるために、関連するOSSを公開しています。ユーザーの認知度や利用率が高くなれば、プラットフォームへのフィードバックも増え、利便性もよくなり、一周して弊社としても使いやすくなるという(笑)。

(平木)もととなるシステムが複雑な分、みんなでノウハウを共有するOSSのような文化が、業界全体のプラットフォームをよりよくしていくという効果があるってことか。

(宮國)弊社も Ruby や Rails を始めとした OSS コミュニティの力に助けられてきた立場なので、その気持ちは強いです。

(平木)xTechの業界だからこそ、各プレイヤーが積極的に情報発信することが重要になるのかもしれないですね。

ドッグフーディングしながらプロダクトを育てる

(平木)業務知識が専門的なのはxTech系に共通する話ですが、新しいエンジニアがジョインしたときに、業務知識ってどうやって覚えてますか?

(宮國)自分自身の話になりますが、転職したての時は、プロダクトを一通り触ってみて、労務の本も読みましたけど、すぐにはピンと来なくて。SmartHRは、チャットサポートを使ってお客様からの問い合わせに対応をするんですが、カスタマーサポートで解決できない操作に関する以外の問題(実装上の不具合と思われる現象)はエンジニアチームに質問がくるフローになってるんです。

この一次対応はエンジニアで持ち回りしてるんですが、そこでの対応が一番学びになりましたね。「この書類のここのデータって何を書くの?」という質問を受けて「そもそもこの書類の役割は?」「手続きの目的は?」というのを調べたり聞いたりして。専門用語のシャワーを浴びる感じですよね(笑)。それをやっていくうちに、労務業務の全体感が頭に入って行きました。

(平木)うちでも診療報酬の分厚い本とかエンジニアが読んでます(笑)。でもやっぱり、分からないことは社内の医師に聞きますね。SmartHRさんだと人事労務の経験を積んできたプロダクトマネージャーがいることも大きな強みですよね。コーポレートチームの人々にも聞けますし。

(宮國)ドッグフーディングを社内にしてもらえるのもいいですよ。更新した後に声をかけて、実際に使ってもらっています。

(平木)確かに、それは普通のBtoBではなかなかない光景ですね。

(宮國)先ほど機能改善の検討の話もしましたが、まずは現場を知るプロダクトマネージャーなどから意見をもらい、そこをエンジニアがふるいにかけるというように連携しています。

(平木)メドレーでも、社内の医師と議論しながらプロダクトの開発を進めています。医師としての現場視点は大切にしつつ、エンジニアやデザイナー側はプロダクトを作るプロとして、複雑な医療のフローをどうシンプルに整理するか考えます。こうして異業種が議論を重ねながら開発していくのも、xTechの面白さの一つですよね。

(平木)今まで色々なお話を聞いてきましたが、HRtechに関わる面白さを、最後に一言お願いします。

(宮國)少し自分の入社理由ともかぶるんですけども。最初Twitterで転職先を探していた時に、結構声かけてもらって、一通り色々な企業とお話させていただいたんです。最初は前職がSIer系だったから、次はtoCをやろうかなって思っていました。でもSmartHRの話を聞いて、自分を含めて働く人すべてに身近だけども実はよく分からない社会保険制度やバックオフィスの分野を知れること、変えていけることに面白さを感じて。今もそれは醍醐味だと思っています。

あとは、すごく急成長のフェーズでプロダクト開発を体感できるのは、エンジニアのキャリアとしても、貴重な経験だと思いますよ。

(平木)いやーあっという間の1時間でした。ありがとうございました!

(宮國)We are hiring!

(取材を終えて)

SmartHRさんのプロダクトについて詳しくお話を聞くのは初めてだったのですが、労務経験を積んだプロダクトマネージャーや各チームとタッグを組んで開発していく手法や、業界の発展にはオープンさが必要だという考え方、安易なカスタマイズをせずにプロダクトとして必要な開発手法など、弊社が取り組んでいる医療xTechと共通する話をたくさん伺えました。

今回のSmartHRさんのようにテクノロジーで今までの業界や会社の枠組みを変えていくような開発者の方々にゆるく平木がインタビューしていく「社外に聞いてみた」をシリーズとしてスタートさせてみましたので、平木を呼んで話してもいいよという会社ありましたら、ぜひご連絡ください!

(YATTEIKI Tシャツ、羨ましいと思っている図)


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