#1創業ストーリー 株式会社むらさき 創業者:岩田拓朗 edit & text :LEMON SOUR, Inc.
━━━ 東京・南青山
緑に囲まれた商業施設『SHARE GREEN MINAMI AOYAMA』の広場に、併設オフィスで事業を営む、株式会社むらさきの創業者・岩田拓朗さんが現れた。
スウェット姿だった。
創業者インタビューという場で、“着飾らない選択”をする人は多くない。
だが、そこに違和感はない。
ましてや、その立ち振る舞いには屈託がない。
何より、目が澄んでいる。
この佇まいが全てを語っていたのか、 と後に気付かされることになる。
「もったいない」から始まった起業
民泊代行事業を始めた理由を尋ねると、岩田さんは少し間を置いて、こう切り出した。
「もったいないな、って思うことが多かったんです。」
幼い頃、家族に連れられた海外旅行をきっかけに旅が好きになった。
自分とは違う人たちや文化から多くのことを学び、それからは自ら海外にも日本各地にも、よく足を運んだ。
「いい旅だったなぁ、って思い出を振り返る時、
寄り添ってくれた旅館やホテルスタッフさんの影響ってとても大きいと思うんです。
でも、民泊は? と考えると、
安さや気軽さといった、ホテルとは別視点での満足感はあるけど、
コミュニケーションや運営面について、もっとやり方がありそうだなって。
そうした違和感に、“もったいなさ”を感じちゃったんですよね。」
誰かに言われた課題ではない。
市場を分析した結果でもない。
「完全に、ジブンごとでした。こう変えたらもっと良くなるのにって。」
だから、結論は早かった。
「それなら、自分でやろう、と思ったんです。 すごくシンプルでした。」
やると決めたら、とことん向き合いたかった
始めると決めた以上、岩田さんに“中途半端”はなかった。
「やるんだったら、徹底的にやりたい性格で。
新たに取り入れるものは、先入観なく、すぐに。
一方で切り捨てるものは、バッサリと(笑)」
例えばスリッパ。
民泊で履き倒されてほころびたスリッパ。
どうせ数ヶ月でボロボロになるのなら、
使い捨てスリッパの方が快適に過ごせるし、オペレーションも楽なのに。
だから導入。
例えば歯ブラシ。
「ご用意はありません、ご自身で手配を」
いやいや、歯ブラシは宿での就寝前、起床後に必須。
なかったらコンビニへ買いに行く手間が増えてしまう。
だから導入。
一方で、アメニティを潤沢に取り揃えるでも、
ホテルライクな設えを推奨するわけでもない。
「ゲストが快適に過ごすために最低限必要かどうか、なんです。」
運営を委託するオーナー陣への向き合い方も明瞭だ。
「月に1回のレポートで満足してもらおう、というスタンスに決めました。
宿泊するゲストに快適に過ごしてもらう努力をすれば、自ずと利益が出る。
オーナーに毎日連絡することが、必ずしも結果につながるわけではありません。
持続可能な事業運営のバランスを突き詰めれば、ゲストの満足を最優先し、宿のレビューをつぶさに見つめ、 改善を重ねるのがベスト。
ひいてはオーナーの収益につながる今のビジネスモデルが“最適解”であると確信しています。」
最適化につぐ最適化。その先にあるものとは?
プレミアホストのビジネスモデル、収益構造を知れば知るほどに、
最適化の繰り返しが垣間見える。
ゲストにとって快適であること。
オーナーの収益に貢献すること。
才能あるメンバーが、力を発揮し続けられる環境であること。
どれか一つだけを優先しては、“最適解”に辿り着けない。
どれかを犠牲にして成り立たせる形は長く続かない。
「スタッフ個々の能力や状況判断で対応にばらつきが出る仕組みは続かないと思っていて、
均一な対応ができた上で、関わる全員が幸せになるような仕事を作りたいんです。」
“民泊における三方よしの最適”を、岩田さんは問い続けている。
人と人との距離が、旅の価値だと思うから
岩田さんの原体験は、意外なほど静かな言葉で語られる。
「若い頃に石垣島のホテルでリゾートバイトをしていました。
当時は、人生をどう生きるべきなのかと、自分探しに必死だったと思います。
そんな中で出会った同僚や地元の方々に、随分とお世話になりました。
食事に連れていってもらったり、ビーチへ連れ出してもらったり……。
『旅のなかで記憶に残るのは、設備じゃなくて、人なんだな』って知りました。
人と人との距離とか、ちょっとしたやり取りが、
後からじわっと効いてきて、人生をより豊かにしてくれる。
そんな感覚をいただいたからこそ、今、ここにいるのだと思います。」
民泊代行がすべて、とは思っていない
話は、自ずと未来の話に移っていく。
「日本がすごく好きなんです。豊かな自然や、 その土地ならではの文化、
なによりあたたかい人々……。
世界を見渡してみても、これらは日本ならではの資源と言いきれます。
だから、観光業こそがこれからの日本を支える産業になると確信しているんです。」
ふと空に目線を移し、岩田さんはこう続けた。
「今は民泊運営代行のサービスを磨いています。 その先に、運営代行にとどまらず、“民泊のアップグレード”をお約束するようなモデルが見えてきました。
もっと言えば、民泊業界全体のレベルを底上げしたいんです。」
一社の成功ではなく、業界のアップデート。
「結果として、 すべての人々に、旅を心から楽しんでもらえたらいいな、って。」
「その時々で役割を感じ、期待に応えたい」
仕事をするうえで大切にしていることを尋ねると、間髪入れずにこう返ってきた。
「仕事でもプライベートでも、相手との関係性のなかで、 自分に求められている役割ってあると思うんです。 それをちゃんと理解して、その期待に応えるように動く。それだけです。 」
プレミアホストが提供する民泊運営代行サービスは、岩田さんのジブンごとから始まり、ゲストやオーナーの声に耳を澄ませ続けるなかで磨き上げてきた結晶だ。
そして、このサスティナブルなビジネスモデルには、日本での滞在を豊かに彩るための温もりが詰まっている。
「おもてなし」という一言では片付けられない。
しかし、他に言葉が見当たらない。
最適な言葉は、 近いミライに、
岩田さんが空を見つめながら呟いてくれるに違いない。