――NANICAが考える、本当に人を育てるということ。
前回の対談では、NANICAに入社して7年を迎えた橋本が、自分自身とどう向き合い、どう変わってきたのかを振り返りました。
「自分のことが分かるようになって、人のことも分かるようになった。」
そんな変化の裏側には、決して順調なことばかりではなかった7年間があります。
自分だけでは答えが見つからない。
前に進みたいのに、どう進めばいいか分からない。
頑張っているのに、思うような結果が出ない。
そんな時、人を育てる側はどう向き合うのか。
今回の対談で出てきたのが、
「背中を押すこと」と「引っ張り上げること」は違う。
という話でした。
第2弾では、代表・辻と橋本の7年間から、NANICAが考える「人を育てる」ということについて掘り下げます。
背中を押すだけでは、前に進めない時がある
辻:
昔の僕って、どちらかというと背中を押すタイプだったんですよ。
「いける、いける」
「やってみたらいいやん」
みたいな。
あまり考えすぎず、勢いで背中を押す。
それは今でも僕の元々のキャラクターとしてあります。
でも、人を育てていく中で、それだけでは通用しないことも増えてきました。
相手によって考え方も違うし、置かれている状況も違う。
だから、
「今、この言葉をどう受け取ったんやろう」
「本当にこの人に必要なのは何なんやろう」
と考えた上で関わるようになりました。
昔は背中を押していた。
今は、考えた上で引っ張り上げることも必要になったという感覚に近いですね。
「引っ張り上げる側」もしんどい
対談の中で、ひとつの問いを辻に投げました。
背中を押すことと、引っ張り上げること。
どちらの方が負荷がかかるのか。
辻:
僕は圧倒的に、引っ張り上げる方ですね。
背中を押すだけなら、自分の元々のキャラクターをそのまま出せばいいので、そこまで負荷はかからないんです。
でも引っ張り上げようと思ったら、考えないといけない。
今の言葉は相手にどう響いたんだろう。
今言ったことはまずかったかな。
もっと違う伝え方があったかな。
そういうことを考えながら関わるので、僕にとってはそっちの方が圧倒的に負荷がかかります。
引っ張り上げるって、双方しんどいと思うんですよね。
引っ張る側は、時には厳しい言葉を使わないといけない。
すぐに結果が出なくても、相手がしがみついてくるのを待たないといけない時もある。
逆に引っ張り上げられる側は、自分のペースではない速度で進まないといけない。
どちらにも負荷がかかると思うんです。
辻:
まさにそうですね。
苦しい時ほど、「引っ張られていること」が見えなくなる
一方、橋本は「引っ張り上げられる側」を何度も経験してきました。
営業で結果が出ない時。
人を育てることに悩んだ時。
自分自身の課題と向き合わなければならなかった時。
そんな時に橋本自身が感じていたことを聞きました。
橋本:
今、自分が人を育てる側になって分かることも増えたんです。
「この人に良くなってほしい」
と思ったら、いろいろ考えるじゃないですか。
でも不思議なのが、自分が引っ張り上げてもらう側になると、それが全部頭から抜けるんですよ(笑)。
自分が溺れかけている時って、本当に自分のことで精一杯になる。
周りが何を考えてくれているのかまで見えなくなるんですよね。
それは橋本だけに限った話ではないのかもしれません。
自分がうまくいっていない時ほど、視野は狭くなります。
「できない」
「苦しい」
「なんで自分だけ」
そんな感情でいっぱいになれば、誰かが差し伸べてくれている手に気づけなくなることもあります。
一人の成長を、一人だけの問題にしない
では、その間NANICAでは何が起きていたのか。
辻が話したのは、橋本本人が知らないところでも、周囲のメンバーが橋本について考えていたという事実でした。
辻:
橋本自身が向き合ってきたのはもちろんなんですけど、周りもめちゃくちゃ向き合ってるんですよ。
年末年始にメンバー同士で、
「橋本ってこういう性格だよね」
「これからどう人生を進めていくんやろう」
みたいなことを夜な夜な話していたり。
僕もそういう話を聞いていました。
それくらい周りも橋本に向き合ってきた。
だから今の変化を見ると、僕はある意味では「そうなるよね」と思うんです。
橋本自身が努力したことはもちろんです。
でも、それだけではなくて、周りも一緒に考えてきた背景がある。
そこは大きいと思います。
厳しい言葉を受け止められた理由
引っ張り上げるということは、いつも優しい言葉をかけることではありません。
時には、自分が見たくない部分を指摘される。
時には、自分では「頑張っている」と思っていても、それでは足りないと言われる。
橋本にも、そんな場面がありました。
では、なぜそれでも関係が切れなかったのでしょうか。
橋本:
もちろん、その瞬間はしんどいですよ。
「なんでそこまで言われないといけないんやろう」
って思うこともあります。
でも、振り返った時に分かるのは、私を傷つけるために言っているわけではないということなんですよね。
ずっと関わってもらっている中で、
「私をどうにか前に進ませようとしてくれている」
という目的が変わらない。
だから、その時は受け止めきれなくても、後から
「なんであの言葉を言ったんやろう」
って考えられる。
それは、ここまでの関係があるからだと思います。
信頼とは、「何でも肯定してくれること」ではない
ここは今回の対談で、とてもNANICAらしさが出た部分でした。
「人を大切にする会社」と聞くと、
優しくしてくれる。
否定されない。
自分を受け入れてくれる。
そんなイメージを持つかもしれません。
けれどNANICAが考える「向き合う」は、少し違います。
辻:
本人が諦めていないなら、僕らも諦めたくないんですよね。
ただ、それって全部肯定することではないんです。
本人が本当に行きたいところがあるなら、
「今のままでは難しいよ」
と言わないといけないこともある。
そこを言わずに「大丈夫、大丈夫」と言う方が、その瞬間は楽かもしれない。
でも、それで本人が望んでいる未来に行けないなら、僕はそれを優しさだとは思わないです。
育てる側にも、正解があるわけではない
そして興味深かったのは、辻自身も「自分の育て方が完成している」とは考えていないことでした。
辻:
僕自身も変わってきてるんですよ。
昔は何も考えずに背中を押していた。
そこから考えて引っ張り上げるようになった。
でも今は、考えすぎることで昔持っていた勢いまでなくなってしまうことがあると感じています。
だから今は、
背中を押す自分と、考えて引っ張り上げる自分。
その両方を持てるようにしたいと思っています。
20代の勢いのあるメンバーを見ていると、昔の自分を思い出すこともあると辻は話します。
40代になった今、経験を重ねて得たものだけを正解にするのではなく、昔持っていた良さをもう一度取り戻し、両方を融合させようとしている。
育てられる側だけではなく、育てる側もまた変わり続けているのです。
7年前より、「成長する選択肢」が増えた会社へ
対談の後半、橋本にこんな質問をしました。
「7年前のNANICAと、今のNANICAは違いますか?」
橋本の答えはシンプルでした。
橋本:
違いますね。
一番感じるのは、
個人が成長するための選択肢が増えたこと
だと思います。
7年間で成長したのは、橋本だけではありません。
社員一人ひとりと向き合い、
うまくいったことも、うまくいかなかったことも経験しながら、NANICA自身も「人をどう育てるのか」を考え続けてきました。
全員に同じやり方を当てはめるのではなく、その人に今何が必要なのかを考える。
背中を押した方がいい人もいる。
少し待った方がいい人もいる。
時には、手を掴んで引っ張り上げなければならない人もいる。
「できない時」に、会社の姿勢が表れる。
人は、順調な時には一人でも前に進めます。
結果が出ている。
自信がある。
次に何をすればいいか分かっている。
そんな時に「頑張れ」と背中を押すことは、それほど難しくありません。
難しいのは、
本人が自信を失っている時。
答えが見えなくなっている時。
自分だけでは前に進めなくなっている時。
その時に、周りがどう関わるのか。
そして本人も、差し伸べられた手をもう一度掴めるのか。
NANICAが考える「人を育てる」ということは、何かを一方的に教えることではありません。
本人が前へ進もうとする限り、一緒に考える。
必要なら背中を押す。
必要なら引っ張り上げる。
そして、育てる側自身も「もっと良い関わり方はないか」と変わり続ける。
7年間一緒に働いてきた辻と橋本の関係から見えたのは、そんな育成の形でした。