(前編のあらすじ) EC領域で年間800億円の流通を生み出し、地域創生ビジネスに注力するオンサイト株式会社。代表の岸 謙一は、Web黎明期の熱狂を知るからこそ、泥臭い「現場」と「実行力」にこだわり続けています。
後編となる今回は、組織と人にフォーカス。なぜ、審査の最終段階まで進んでいた上場申請を自ら取り下げたのか? そして、AIが台頭する現代において、なぜ「コンサル経験者」ではなく「サービス業出身の愛嬌ある若手」を求めているのか。「100名以下の少数精鋭」で挑む、オンサイト流の組織論を語ってもらいました。
岸 謙一 / 代表取締役
大手エンターテイメント企業を経て、設立直後のサイバーエージェントに入社し急成長を牽引。その後、リクルートで『R25』立ち上げに関わり、ライブドアでは副社長としてポータルサイト運営等を指揮。2006年にオンサイト株式会社を設立。Web黎明期から一貫して現場に身を置き続ける実務家経営者。趣味はサーフィンで、オンオフの垣根なくビジネスと遊びを追求している。
「上場中止」の真実。AI×少数精鋭で挑む、100名以下の組織論。
ーー組織についてもお伺いします。以前、上場審査の最終段階まで進みながら、直前で申請を取り下げられたと聞きました。その真意はどこにあったのですか?
表向きにはコロナ禍による市況の悪化などを理由にしていますが、本質的な理由は「組織のあり方」への違和感でした。そもそも私が上場を目指したのは、一緒になって頑張ってくれた社員たちを幸せにしたかったからなんです。ストックオプションなどで還元し、ここでの経験を履歴書の武器にするだけでなく、将来独立する際の起業資金も作ってあげたかったんです。
でも、上場準備のために組織体制を整える過程で、私と現場の距離が物理的に離れてしまったんです。その結果、オンサイトの成長の源泉であった「スピード感」と、インターネットビジネスにおける「細部への執着・こだわり(熱狂)」が大きく損なわれてしまった。
ーーそこで「上場しない」という決断をされたと。
はい。会社を大きくすることよりも、自分たちが本来持っていた圧倒的なスピード感や、仕事に対する純粋なワクワク感を守る道を選びました。組織をシンプルにし、全員が当事者意識を持って走れる状態に戻したんです。
ーー今後はどのような組織を目指していくのでしょうか?
「正社員は100名以上にしない」と決めています。
前編でお話しした通り、会社が拡大すると、どうしても私たちが大切にしている「色」や「熱狂」が薄れてしまうというジレンマはずっとありました。20代の頃、組織が大きくなるにつれて失われていった、あのヒリヒリするような高揚感。ビジネスインパクトを出すためには人を増やすしかない、でも増やすと当事者意識が希薄になる……この20年間抱え続けてきた葛藤が、AIの登場で解消されたんです。
AIを使えば、1人が100人分の仕事をすることも可能です。「規模」を追うか「熱狂」を取るかという長年のジレンマは、もう過去のものです。
私が作りたいのは、かつて20代の私が経験したような、サイバーエージェント創業期の熱気あふれる組織です。もちろん、当時のような荒削りな働き方はさせませんけどね(笑)。
AIを駆使すれば、少数精鋭のままでも大きなインパクトを出せる。そのための成長戦略として、再度の上場やM&Aも視野に入れています。一人ひとりが熱狂しながら、会社を大きく成長させる。そんな最強のチームを作りたいですね。
ーーそうした環境は、働くメンバーにどのような成長をもたらすのでしょうか?
間違いなく、「経営者・経営人材」として圧倒的に成長できる環境だと思います。 私が考える経営人材に必要な要素は2つ。「①最後の砦としての役割」を担うことと、圧倒的な「②判断の回数」を重ねることです。
オンサイトの仕事は、単なる支援ではありません。クライアント企業の「EC部門の責任者」を代行するようなものです。しかも、私たちの後ろにはエンジニアや運用スタッフという「実行部隊」がいる。つまり、口だけ出して終わりではなく、実行の責任とイニシアチブ(主導権)を完全に握ることになります。
「自分が指示を間違えたら、現場が混乱し、売上が止まる」。このヒリヒリするような「最後の砦」としてのプレッシャーの中で、日々大量の意思決定を行う。この経験は、安全圏からアドバイスだけをする「副業のアドバイザー」では決して得られません。
だからこそ、ここで数年揉まれれば、どこに行っても通用する経営人材になれるんです。
最後に人を動かすのは、あなたの「愛嬌」
ーー少数精鋭の組織において、どのような人材を求めていますか?
あの頃の熱狂はそのままに、今の時代に合わせてアップデートした組織で一番大切にしたいのは、ズバリ「愛嬌」です。
誤解してほしくないのは、ただニコニコしているだけが良いわけではありません。相手のことを本気で思うからこそ、「それ、違うと思いますよ」って自然に言えて、むしろ「〇〇さんが言うなら、やってみようかな」って相手に思わせてしまう。そんな魅力がある人と一緒に働きたいんです。
机の上で答えを出すのが得意な「お勉強」タイプよりも、現場でお客さんの笑顔を見るのが好き!っていうタイプの方が、今のオンサイトでは間違いなく活躍できます。アパレルや飲食店の店長さんのような、サービス精神と現場でのとっさの対応力を持った人にこそ、ポテンシャルを感じますね。
ーーなるほど。知識やロジックよりも、現場での「人間力」に重きを置かれていると。
その通りです。論理やノウハウは私たちがいくらでも教えられますし、勝ちパターンやロジカルな部分はAIが担ってくれますから。
そうなった時、人間に残される一番楽しい仕事は何だと思いますか? それが「愛嬌」であり、「ラストワンマイルの実行」なんです。
例えば、ユナイテッドアローズやBEAMSの店員さんを想像してみてください。彼らは服が大好きで、知識も豊富で、何より「お客様に一番似合うものを提案したい!」という想いがすごいですよね。パソコンの前で賢い戦略を練るだけの仕事は、もうAIに任せればいい。でも、相手の心を動かして、「あなたのおかげで決心できたよ」と言ってもらえるような熱量は、AIには絶対にコピーできません。だから私たちは、エリートタイプではなく「愛嬌のある現場のプロ」と一緒に、もっと面白い仕事をしたいんです。
47都道府県すべてが舞台。地方から「日本を代表するヒット」を生み出す。
ーー最後に、今の目標について教えてください。
目下の目標として、「47都道府県すべてにクライアントを作る」ことを掲げています。日本中にはまだ見ぬ素晴らしい商品や商売の種が眠っています。それらすべてに出会い、私たちの力で輝かせたいんです。
オンサイトが関わることで、ただECで売れるだけでなく、その商品が「今年のヒット商品番付」に入ったり、「グッドデザイン賞」を受賞したりするような、社会現象レベルの成功事例を地方から生み出していきたい。今の年間流通総額800億円を、もっともっと増やしていくつもりです。
AIやデジタルで効率化できる部分は徹底的に効率化しつつ、最後は「人」と「人」の熱量で地方を動かす。そんな泥臭くて最高に面白い仕事を、日本全国で仕掛けていきます。
ーーその未来に向けて、どんな方に仲間になってほしいですか?
将来は自分で商売をやりたい、経営者になりたいという野心のある方はもちろん、地元の商店街を盛り上げたい、地方のいいものを広めたいという純粋な想いを持っている人にも来てほしいですね。
オンサイトで3年も揉まれれば、ECの知識、経営の視点、そして地域創生の現場経験が全部身につきます。そうすれば、地元に帰って起業するもよし、地方企業の右腕として活躍するもよし。「どこでも食っていける人材(プロデューサー)」になれることは約束しますよ。
今の仕事に閉塞感を感じているなら、そのサービス精神という武器を、もっと大きな舞台で使ってみませんか?私たちと一緒に、最高に楽しい仕事をしましょう!
/assets/images/260749/original/7a605cb9-8430-4d68-b247-982b2094cec2.png?1497450021)