オンタイムデリバリージャパン株式会社
代表取締役 関口治二郎
2004年大学卒業後、人材総合サービス会社に入社。横浜で求人広告の営業に従事。その後、営業企画を経験。2012年6月、オンタイムデリバリージャパン株式会社を設立する。
勝てる道を探しはじめた中学時代
生まれた時の体重が4000gを超える巨大児。小学生の頃は学年で一番足が速く、スポーツや腕っぷしでは負ける気がしなかった。小学校低学年の時、地元のサッカークラブチームに所属。スピードで相手を抜いてゴールを奪うプレーが持ち味だったが、中学に上がる頃に関口を追い抜く選手が現れた。くやしさのあまり短距離走で勝負を挑んだが、結果は同じ。スポーツで生きていくのは無理だと悟り、中2でサッカーを辞めた。
高校では都立高校に進み、当時珍しかったヒップホップのダンス部を創設。後に全国大会出場の常連校となった。大学ではオールラウンド系のサークルを立ち上げ、今も続く老舗のサークルになっているとか。
自ら何かをはじめること。それが関口の勝てる道だった。
新卒就活の面接で起業を宣言
母親は小学校の先生。年齢を重ねても、教育番組を録画し、関連する新聞記事を切り抜き、本を読んで勉強し続ける姿を尊敬していた。父親は脱サラをして起業した経営者。組織に属さず自由に生きる姿も、バブル崩壊後に苦労する姿も、そばで見てきた。関口が起業を目指すことは自然な流れだった。
起業する目的で進んだ道は、人材総合サービス会社への就職だった。
「僕は自分で会社を経営することが信念です」。
最終面接で、当時の面接官に宣言。この時30歳までに独立することを決めていた。それもあくまで「自力で」。父親の会社を継ぐ気も、誰かの出資を受ける気もなかった。
こだわったのは、経営者との商談
人材総合サービス会社は、求人情報サイトを運営していた。企業に求人広告の掲載を提案し、活躍できる人材を採用することで業績向上に貢献することが関口のミッションだった。
求人広告の営業は、経営幹部と商談ができる。全業界で偏りなく人との繋がりをつくることができる。東証一部上場企業からスタートアップまであらゆる規模の経営を学べる。仲介会社をはさまずに一流企業と接点を持てる。経営者のシャワーをあびて意識を高めることができる。
関口にとって、これ以上経営を学べる環境はなかった。
特にこだわったのは経営者との商談。自ら取材し、事業の競合優位性を聞き、設立の経緯を聞いた。どこにビジネスチャンスがあったのか。なぜそのタイミングで起業したのか。なぜ事業を思いついたのか。自分だからできたのか。経営者の考えや思想のすべてに夢中になった
師匠の涙
関口は営業も営業企画も心から楽しんでいた。「ミスをしてはいけない仕事だ」と責任感を持って取り組んでもいた。
入社して8年が過ぎたある日、外食チェーンの社長と飲みに行った。「時間を遊ばすな。モノを遊ばすな。人を遊ばすな。お金を遊ばすな」と投資家思考を授けてくれた人であり、師匠として尊敬していた。酒を酌み交わすうちに、社長は本音をこぼした。「新卒で入社したときはあんなにキラキラして起業の夢を語っていたのに。ぬるま湯につかって楽なほうに流れてないか。もうすぐ30だぞ」。その目には涙が浮かんでいた。(俺、すげーかっこわりぃ)。その翌日、直属の上司に退職意向を伝えた。
中目黒の古いマンションの一室で創業
2012年6月、30歳。資本金は300万円。現金100万円と、私物のバイクやソファの現物出資で200万円。誰にも頼らず自力で用意した。
マンションの一室で立ち上げたのは、アプリで注文を受けて企業に弁当を運ぶフードデリバリー事業。しかし、売上が上がらず3か月で撤退。その後、ITコンサルティング会社のエンジニアとSEOコンサルティング事業を開始。面白いように売上は上がり、エンジニアは独立して出ていった。
そんなタイミングで、前職の人材総合サービス会社に勤める後輩から連絡があった。「関口さん、今代理店を増やそうとしています。チャンスですよ」。2016年1月、関口は社長と再会し、求人広告の販売代理店契約を締結。求人広告代理店として再スタートを切った。
事業は猛スピードで拡大を続けた。2017年には従業員26名。2018年には積み立てた利益で資本金を2000万円に増資し、大阪梅田に支店を開設。2019年に新卒第一期生が入社し、資本金を5000万円に増資。2021年には資本金を9500万円に増資し、名古屋支店を開設した。
願いは20代役員の誕生
事業拡大の立役者は、20代の社員たちである。関口が掲げた企業理念は「仕事を通じた人格的成長」。それを社員たちが見事に体現してくれた結果である。
「困難に立ち向かって、冷や汗をかいて、自分で考えて、くやしい思いをすることが成長になると思います。人格的成長を果たせるかどうかは、困難を経験したもん勝ちです」。
オンタイムデリバリージャパンには、関口が辿ってきた歴史と同じ、経営者との商談機会が豊富にある。加えて、社員に大きなミッションを任せる関口の育成スタイルもある。
「決断はいつも急だよ」と、営業の社員に別ミッションの仕事を任せる。支店長になりたいと手を挙げた社員には、オフィスを用意して預ける。有能な人材を外部から招聘し任せればリスクは少ない。スピーディーな事業拡大も期待できる。だが関口はそれをしない。未経験で入ってきた若手社員中心に組織をつくり、前のめりの熱意を何より喜び、そんな若者に迷いなく託すのだ。この環境の中で実績を上げた社員を20代のうちに役員に抜擢する計画もある。組織に寄りかからず、創意工夫し、自力で生きていける力を身につけた人材を引き上げる事で、またその上司の姿をみて育つ若者が増える。それが文化になっていく。そんな仕事を通じて成長していく人間が続々と誕生することを、関口は楽しみにしている。