こんにちは。
Orange Moon株式会社 代表の増山です。
私たちは、AIを活用したマニュアル自動作成・共有サービス「ManualForce」を開発・提供しています。
ManualForceは、PC操作を記録するだけで、スクリーンショット付きのマニュアルを自動生成できるSaaSです。
Orange Moonは、まだ社員数名の小さな会社です。
そんな会社が、年間20回ほど展示会に出ています。
正直、かなり多いと思います。
展示会は準備も大変です。
ブースの装飾を考える。
説明資料を作る。
当日は何時間も立ち続ける。
何百人もの方に声をかける。
終わったら、獲得したリードに電話やメールで連絡する。
社員数名の会社にとっては、決して軽い負担ではありません。
しかも、私たちはAI SaaSの会社です。
「もっとオンライン広告やWebマーケティングに寄せた方が効率がいいのでは?」
「AIの会社なのに、ずいぶん泥臭いですね」
そう思われるかもしれません。
それでも私たちが展示会に出続けているのには、理由があります。
一言で言えば、
展示会は、ManualForceを売る場所であると同時に、ManualForceを作る場所でもある
と思っているからです。
展示会は、数日で数百人の「生の声」を聞ける
スタートアップにとって、一番怖いことの一つは、
自分たちが思っている顧客課題と、実際の顧客課題がズレること
だと思っています。
社内で考えていると、
「きっとこの機能が刺さる」
「こういう会社が困っているはず」
「この言い方なら伝わるはず」
という仮説がどんどんできます。
でも、それが本当に合っているかは、お客様に会わないとわかりません。
展示会に出ると、数日間で多くの方と話せます。
製造業。
BPO。
情報システム部門。
バックオフィス。
人事。
システム開発。
現場部門。
会社も、役職も、抱えている課題も違います。
同じManualForceを見ても、反応するポイントが全然違います。
ある方は、
「新人教育が大変なんです」
と言う。
別の方は、
「担当者が異動すると業務がわからなくなる」
と言う。
また別の方は、
「システム刷新で大量のマニュアルを作らないといけない」
と言う。
あるいは、
「マニュアルはあるけど、更新されていない」
という話もあります。
こうした話を1日に何十回も聞いていると、
「自分たちが思っていた課題と少し違うな」
「この業界では、この言葉の方が刺さるな」
「この課題、思っていたより深いな」
ということが見えてきます。
これは、Web上のデータだけではなかなか得られない情報です。
お客様の“顔”を見ると、言葉が変わる
展示会で面白いのは、言葉に対する反応がその場でわかることです。
たとえば、
「AIでマニュアルを自動作成できます」
と伝える。
反応が薄い。
次に、
「操作しながら、自動で手順書ができます」
と伝える。
少し反応が変わる。
さらに、
「引き継ぎのたびに、同じ説明をしていませんか?」
と聞く。
そこで、
「まさにそれです」
と返ってくる。
こういうことが普通にあります。
資料上ではどれも似たような言葉に見えるかもしれません。
でも、実際に人の顔を見ながら話すと、
どの言葉で立ち止まるのか。
どの言葉で表情が変わるのか。
どこで質問が出るのか。
どこで興味が薄れるのか。
かなりわかります。
そして、その日のうちに話し方を変えます。
初日と最終日で、ブースでの説明が変わっていることもあります。
展示会は、単なる営業活動ではなく、
数百人のお客様を相手にした、巨大な訴求テスト
でもあります。
商談だけでは、会えない人にも会える
もちろん、普段の商談でもお客様の声は聞けます。
ただ、商談にはある程度フィルターがかかっています。
ManualForceに興味を持っている。
課題感がある。
導入を検討する可能性がある。
そういう方が多いです。
一方で、展示会では違います。
たまたま通りかかった方。
今はマニュアルに課題を感じていない方。
別の目的で展示会に来た方。
まだ課題を言語化していない方。
そういう方とも話せます。
私は、ここに大きな価値があると思っています。
「必要だと思っていません」
と言われたとき、
なぜ必要だと思っていないのか。
本当に課題がないのか。
別の方法で解決しているのか。
そもそもマニュアルという言葉が合っていないのか。
そこを聞くことで、こちらの理解も深まります。
興味がある人だけに会っていると、プロダクトに都合の良い情報ばかり集まってしまうことがあります。
興味がない人の反応も含めて見る。
展示会には、その価値があります。
展示会で得たものは、営業だけで終わらない
展示会で得た情報は、その後いろいろなところに反映されます。
営業トークを変える。
提案資料を変える。
Webサイトの訴求を変える。
事例の見せ方を変える。
商談で聞く質問を変える。
プロダクトの改善案を考える。
新しい機能の優先順位を考える。
つまり、展示会で聞いた声が、
営業。
マーケティング。
プロダクト。
事業戦略。
全部につながります。
Orange Moonのような小さな会社では、それぞれの距離が近いです。
展示会で聞いた話が、数日後には営業資料に反映される。
商談でよく聞く課題が、プロダクトチームに共有される。
ある業界で反応が良ければ、次のマーケティング施策を考える。
このスピード感は、小さい会社だからこその強みです。
「売る」より先に、「知る」ために出ている
展示会というと、
「何件リードを取れたか」
「何件商談になったか」
「いくら受注したか」
という数字に目が行きます。
もちろん、私たちも見ています。
展示会は投資なので、成果が出なければ続けられません。
ただ、私は展示会の価値を、それだけで考えたくないと思っています。
展示会には、
市場を知る
という大きな役割があります。
どんな会社が困っているのか。
どんな言葉なら伝わるのか。
競合と比較されたときに、何を聞かれるのか。
今まで想定していなかったユースケースはないか。
お客様がManualForceを見て、最初に何を思うのか。
こうした情報を大量に集められる。
スタートアップにとっては、かなり価値のある時間です。
特にManualForceのように、さまざまな業界・部署で使われる可能性があるプロダクトでは、
「誰に一番刺さるのか」
を机の上だけで決めるのは難しい。
だから、会いに行きます。
AI SaaSだからこそ、現場に行く
AIが進化すると、いろいろなことがオンラインで完結するようになります。
メールもAIが書く。
資料もAIが作る。
顧客情報もAIが整理する。
商談内容もAIが要約する。
これから、営業活動もどんどん効率化されていくと思います。
だからこそ逆に、
人に会わないと得られない情報の価値は上がる
とも思っています。
お客様が少し困った顔をした。
説明した瞬間に身を乗り出した。
「実はですね」と、現場の話を教えてくれた。
隣にいた同僚と急に会話が始まった。
そういう情報は、数字だけでは取り切れません。
AIを使って効率化できるところは、どんどん効率化する。
でも、人に会わなければ得られない情報は、自分たちで取りに行く。
この両方が必要だと思っています。
AI SaaS企業だからこそ、全部をオンラインに寄せる必要はない。
むしろ、AIで効率化した時間を、もっと顧客理解に使いたい。
私はそう考えています。
若いメンバーにとっても、展示会は最高の打席になる
展示会には、もう一つ大きな価値があります。
若いメンバーが、一気に顧客理解を深められることです。
ManualForceについて勉強するだけなら、資料を読めばできます。
営業トークを覚えることもできます。
でも、
「実際のお客様が何に困っているのか」
を理解するには、直接話すのが一番早い。
展示会では、数日間で何十人、何百人という方と会話します。
最初はうまく話せなくても、
「この質問をすると会話が広がるな」
「この説明は伝わりづらいな」
「この業界では、この課題が多いな」
ということが少しずつわかってきます。
そして、同じ日の中でも改善できます。
午前中にうまくいかなかった。
昼に振り返る。
午後は言い方を変える。
反応が良くなる。
このサイクルを何度も回せる。
営業の研修を何時間受けるより、濃い学びになることもあります。
私は、展示会は若いメンバーにとってかなり良い成長の場だと思っています。
もちろん、楽ではない
展示会は華やかに見えるかもしれません。
でも、実際にはかなり泥臭いです。
朝から準備する。
何時間も立つ。
何度も同じ説明をする。
断られる。
声をかけても立ち止まってもらえない。
終わった後には、たくさんのリードに連絡する。
正直、楽な仕事ではありません。
ただ、それでも出る。
なぜなら、そこでしか得られないものがあるからです。
お客様の声。
市場の温度感。
自分たちの訴求への反応。
営業の改善点。
新しいユースケース。
そして、事業を前に進めるためのヒント。
社員数名の会社だからこそ、こうした現場から得られる情報を大事にしたいと思っています。
年間20回出るのは、“展示会が好きだから”ではない
もちろん、年間20回出ること自体が目的ではありません。
回数を増やせばいいとも思っていません。
大事なのは、
どれだけ学べるか。どれだけ次に変えられるか。
です。
展示会に出て終わり。
名刺を集めて終わり。
では意味がありません。
どんな人と話したのか。
どんな課題があったのか。
どの言葉が刺さったのか。
どんな質問が多かったのか。
商談化した企業にはどんな共通点があるのか。
そこから何を変えるのか。
展示会の価値は、終わった後にどれだけ事業へ戻せるかで決まると思っています。
最後に
社員数名のAI SaaS企業が、年間20回も展示会に出る。
効率だけを考えれば、少し不思議に見えるかもしれません。
でも、私たちにとって展示会は、
リードを獲得する場所だけではありません。
顧客を知る場所。
市場を知る場所。
訴求を試す場所。
営業を改善する場所。
プロダクトのヒントを得る場所。
そして、若いメンバーが成長する場所でもあります。
スタートアップには、まだ正解がありません。
だから、社内だけで正解を考え続けるのではなく、外に出る。
お客様に会う。
反応を見る。
聞く。
試す。
変える。
また会いに行く。
その繰り返しの中で、ManualForceを少しずつ良いプロダクトにしてきました。
AI SaaSの会社だからこそ、AIだけを見ていたくない。
技術の先にいる、お客様の現場を見続けたい。
年間20回の展示会には、そんな考えがあります。
少しでもこういう事業づくりを面白いと思っていただけた方は、ぜひ一度お話ししましょう。